民事においても時効制度があります。この民事時効には,消滅時効と取得時効があります。このうち消滅時効とは,一定期間の経過により,文字どおり権利を消滅させてしまうという制度です。
消滅時効とは?
民事においても,時効制度が設けられています。この民事上の時効制度には,取得時効と消滅時効という2つの制度があります。このうち,消滅時効とは,一定の期間の経過によって権利を消滅させるという時効制度です。
たとえば,借金などの債権も,一定の期間が経過すれば,時効によって消滅します。要するに,借主側から見れば、借金の支払義務がなくなるということです。
消滅時効の制度趣旨
消滅時効という制度が認められたことには,基本的に,3つの理由があると考えられています。
1つは「永続した事実状態の尊重」です。すなわち,長期にわたって権利が行使されていないという事実状態が継続しているのであれば,その事実状態に合った法的効果を認めるべきであるということです。
2つめは,「権利の上に眠る者は保護せず」です。権利があるにもかかわらず,長期間にわたって,何らの権利行使も行わないという者は法的な保護に値しないという考え方です。
もう1つは,「証拠の散逸」です。要するに,時間がたてばたつほど,証拠資料等は次々と散逸していくことになります。こうなると,当事者は,証拠を揃えられなくなってしまいますが,証拠散逸によって不利益を被ることになるというのは酷であるという考え方です。
これらのような理由から,法は,消滅時効という制度を設けていると考えられています。
消滅時効の要件・効果
消滅時効が成立すると,前記のとおり,その対象となった権利は完全に消滅することになります。すなわち,債権者は権利を行使できなくなり,債務者は債務の履行責任を免れるということです。
消滅時効が成立するには,以下の要件を満たしている必要があります。
- 権利を行使できる状態になったこと
- その状態になった時から一定の消滅時効期間が経過したこと
- 時効を主張する者が消滅時効を援用したこと
どの時点で権利を行使できる状態になったといえるかは,それぞれの権利内容によって異なってきます。
例えば,期限の定めがある債権でしたら,その期限(履行期)が到来した時が,権利を行使できる状態になった時点となります。
そして,その権利を行使できる状態になった時から,一定の期間が経過していることが必要です。この消滅時効期間は,権利の内容によって異なります。
例えば、債権の消滅時効期間は,「権利を行使できる時から10年間」または「権利を行使できることを知った時から5年間」のいずれか時期の早い方とされています(民法166条1項)。
ただし,消滅時効期間を経過したとしても,それだけでは消滅時効の効果は確定的に生じないと解されています。消滅時効の効果を確定させるためには,時効を主張する人が消滅時効を「援用」する必要があります。
消滅時効の援用
前記のとおり,消滅時効に確定的な権利消滅の効果を生じさせるためには,時効を主張する者が,消滅時効を援用する必要があります。
援用というと難しく思われますが,要するに,「消滅時効を利用します」ということを主張することです。
この消滅時効の援用の方法について,特別な手続は求められていません。消滅時効の対象となっている権利の権利者に対し,消滅時効を援用する旨を表示すればよいだけです。
ただし,後々に言った言わないの紛争が生ずると厄介です。したがって,消滅時効を援用する場合には,配達証明付きの内容証明郵便でその旨を記載した書面を郵送しておくという方法が一般的でしょう。
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