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小規模個人再生における再生計画案の決議はどのように行われるのか?

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小規模個人再生における再生計画案の決議は、債権者集会を開催することはなく、専ら書面による決議の方法で行われます

再生債務者から再生計画案が提出された後、裁判所は、書面による決議に付する旨の決定をし、その旨を官報に公告するとともに、議決権者である再生債権者に対して再生計画案および再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に書面でその旨を回答すべき旨を記載した書面を送付して通知します。

議決権者は、再生計画案を不同意とする場合、裁判所の定める期間内に、書面で不同意の回答を行います。

小規模個人再生における再生計画案の決議の方法

民事再生法 第230条

  • 第1項 裁判所は、一般異議申述期間(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間を含む。)が経過し、かつ、第125条第1項の報告書の提出がされた後でなければ、再生計画案を決議に付することができない。当該一般異議申述期間内に第226条第1項本文の規定による異議が述べられた場合(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間内に同条第3項の規定による異議が述べられた場合を含む。)には、第227条第1項本文の不変期間を経過するまでの間(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされるまでの間)も、同様とする。
  • 第2項 裁判所は、再生計画案について第174条第二項各号(第3号を除く。住宅資金特別条項を定めた再生計画案については、第202条第2項第1号から第3号まで)又は次条第2項各号のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案を決議に付することができない。
  • 第3項 再生計画案の提出があったときは、裁判所は、前二項の場合を除き、議決権行使の方法としての第169条第2項第2号に掲げる方法及び第172条第2項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めて、再生計画案を決議に付する旨の決定をする。
  • 第4項 前項の決定をした場合には、その旨を公告するとともに、議決権者に対して、同項に規定する期限、再生計画案の内容又はその要旨及び再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に同項の規定により定められた方法によりその旨を回答すべき旨を通知しなければならない。
  • 第5項 第三項の決定があった場合における第172条第2項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同条第2項中「第169条第2項前段」とあるのは、「第230条第3項」とする。
  • 第6項 第4項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。
  • 第7項 再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者のうち第172条第2項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを行使したものがあるときの前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、議決権者総数に一を、再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者の数に2分の1を、それぞれ加算するものとする。
  • 第8項 届出再生債権者は、一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかった届出再生債権(第226条第5項に規定するものを除く。以下「無異議債権」という。)については届出があった再生債権の額又は担保不足見込額に応じて、第227条第7項の規定により裁判所が債権の額又は担保不足見込額を定めた再生債権(以下「評価済債権」という。)についてはその額に応じて、それぞれ議決権を行使することができる。

通常の民事再生手続においては、再生債務者が提出した再生計画案に対し、再生債権者による決議が行われ、法定多数の同意を得られない場合には当該決議は否決となり、再生手続は廃止されます。

通常の民事再生手続の場合、再生債権者の決議は、債権者集会を開催して行うか、書面によって行うか、またはいずれも採用するかを、裁判所が決めることになります。

個人再生手続の場合は、小規模個人再生なのか給与所得者等再生なのかによって異なります。

給与所得者等再生の場合には、そもそも再生債権者による再生計画案の決議が行われません。

他方、小規模個人再生の場合は、再生債権者による再生計画案の決議が行われ、一定数の不同意があったときは、再生手続が廃止されます。

ただし、小規模個人再生における決議は、通常の民事再生の決議と異なり、債権者集会が開催されることはなく、専ら書面による決議の方法によって行われます(民事再生法230条3項)。

書面決議を行う時期

前記のとおり、小規模個人再生においては、再生債権者による決議は書面決議の方法によって行われます。

裁判所は、再生債務者から再生計画案が提出されると、これを書面決議に付する旨の決定をし、同決定に基づいて書面決議が行われます。

例えば、東京地方裁判所の場合、概ね、再生手続開始決定から約14週間後に再生計画案の提出期限が定められ、再生手続開始決定から約18週間後に書面決議に付する旨の決定を行うのが、標準的なスケジュールとされています。

また、東京地方裁判所の場合、全件について個人再生委員が選任される運用となっており、裁判所は、書面決議に付する旨の決定をすべきか否かについての個人再生委員の意見を踏まえて、書面決議に付する旨の決定をするかどうかを判断するものとされています。

なお、清算価値や決議に参加できる議決権者と議決権額が定まっていなければ決議を実施することができません。

そのため、裁判所は、民事再生法125条1項の報告書が提出されるまで、および、債権調査手続が終了するまでは、書面決議に付する旨の決定をすることができないとされています(民事再生法230条1項)。

さらに、再生計画案に不認可事由がある場合も書面決議に付する旨の決定をすることができず(民事再生法230条2項)、この場合には職権で再生手続廃止の決定をしなければなりません(民事再生法191条1号)。

書面決議の手続

民事再生規則 第131条

  • 第1項 法第230条(再生計画案の決議)第4項に規定する裁判所の定める期間は、同条第3項の決定の日から2週間以上3月以下の範囲内で定めなければならない。
  • 第2項 法第230条第4項の規定により通知を受けた議決権者は、同項に規定する再生計画案に同意する場合にはその旨を裁判所に回答することを要せず、当該再生計画案に同意しない場合には、裁判所の定めるところにより、その旨を回答しなければならない。

裁判所は、書面による決議に付する旨の決定をした場合、その旨を官報に公告します。

そして、それとともに、議決権者である再生債権者に対し、再生計画案と再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に書面でその旨を回答すべき旨を記載した書面を送付して通知します(民事再生法230条4項)。

この裁判所の定める期間は2週間以上3か月以下の範囲内で定められます(民事再生規則131条1項)。

東京地方裁判所では、裁判所の定める期間は2週間とされています。

また、再生計画案に同意しない場合、議決権者は、書面で、かつ、裁判所の定めるところによって回答することとされています(民事再生規則131条2項)。

各裁判所では、回答書の書式として不同意回答書が用意されており、前記の通知と一緒に不同意回答書が送付されます。

議決権者である再生債権者は、再生計画案に同意する場合、書面を提出する必要はありません。これに対し、不同意の場合には、回答期間内に、上記不同意回答書を提出します。

書面決議の可決要件

再生計画案の決議は、以下の要件を満たす場合に可決されます(民事再生法230条6項)。

小規模個人再生における再生計画案の決議の可決要件
  • 回答期間内に不同意回答をした議決権者である再生債権者が、議決権者総数の半数に満たない場合
  • 回答期間内に不同意回答をした議決権者の議決権額が、議決権者の議決権額総額の2分の1を超えない場合

逆にいうと、書面により不同意回答をした議決権者の頭数が議決権者総数の半数以上であった場合または書面により不同意回答をした議決権者の議決権の額が、全議決権者の議決権額総額の過半数以上であった場合には、否決されるということです。

再生計画案の決議が否決された場合、小規模個人再生の手続は廃止されることになります。

他方、再生計画案の決議が可決された場合は、裁判所は不認可事由があるか否かを審査し、再生計画の認可または不認可の決定をすることになります。

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