物権とは?

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民法第二編は「物権」です。「物権」とは,物を直接に支配して利益を受けることができる排他的な権利のことをいいます。

物権とは

私法の基本法は民法です。この民法には,財産に関する規定(財産法)と家族に関する規定(家族法)が設けられています。

財産法には,民法第二編の「物権」と民法第三編の「債権」が規定されています。

このうちの物権とは,を直接に支配して利益を受けることができる排他的な権利のことをいいます。

物権と債権の違い

物の支配権である物権と異なり,債権とは,特定人に対して一定の給付または行為をするように請求する権利のことをいいます。すなわち,債権とは,ある特定の人に対して主張することができる権利です。

物権には,債権と比べると以下のような違いがあります。

他者の行為の要否

上記のとおり,債権は特定人に対する請求権です。したがって,債権の場合には,権利を実現するには相手方の行為が必要となってきます。

これに対し,物権は,人に対する権利ではなく,物の直接的な支配権です。したがって,特に他人の行為がなくても,直接権限を実行すれば権利を実現できることになります。

一物一権主義

債権は,同一内容の債権が複数成立することがあります。例えば,ある物の売買契約が複数成立しているということもあり得るわけです。

しかし,物権は排他的な支配権ですから,1つの物の上に1つの物権が存在する場合,その物の上にそれと同一内容の物権が成立することはありません。これを「物権の排他性」または「一物一権主義」などといいます。

したがって,例えば,ある不動産にAの(単独)所有権があるという場合,その不動産にBの(単独)所有権が成立するということはあり得ないということです。

ただし,物権の効力を第三者に対抗するためには,対抗要件が必要となります。例えば、不動産の場合ですと,対抗要件として登記を具備していることが必要です。

物権法定主義

上記のとおり,物権は排他性を備えており,1つの物の上に2つ以上の物権が成立してしまうと,矛盾が生じます。

債権の場合であれば,同じ内容の債権があったとしても,債務不履行などの契約責任の問題として処理できます。したがって,どのような内容の債権とするのかについては,当事者が基本的に自由に定めることが可能です。

しかし,物権の場合には,物は1つしかないため,それだけでは解決できない不都合が生じるおそれがあります。

そこで,何が物権として効力を有する権利となるのかは,法律で決められており,当事者で自由に新しい物権を創設することはできないのが原則とされています。このことを「物権法定主義」といいます。

物権の効力

前記のとおり,物権の効力は,物を直接・排他的に支配できるということです。

物権相互間の優先的効力

物権には排他的な効力があります。排他的効力とは,一物一権主義により,内容が競合する物権の相互間では,先に成立した物権が後に成立した物権よりも優先されるということです。これを優先的効力と呼ぶことがあります。

ただし,前記のとおり,物権を対抗するためには対抗要件(不動産であれば登記)が必要です。したがって,先に成立した物権であっても,対抗要件を備えていなければ,後に成立した物権に対して優先的効力を対抗できません。

逆に,後に成立した物権の方が先に対抗要件を備えれば,後に成立した物権が,対抗要件のない先に成立した物権に対して優先的効力を対抗できることになります。

債権に対する優先的効力

物権は,債権に対して,原則として優先的効力を持っています。債権に対しては,対抗要件を備えなくても,優先的効力を主張できます。

したがって,仮に,債権の方が先に成立していたとしても,後から成立した物権の方が優先されることになります。

例えば,AさんがBさんからある不動産を賃借し,その後に,その不動産をBさんからCさんが買い取ったとすると,Aさんは賃借権をCさんに対抗できなくなる場合があります。

そのため,物権の債権に対する優先的効力を示すものとして,「売買は賃貸借を破る」という言葉があります。

もっとも,不動産の賃借権は,賃借人保護のために,物権に近い効力が与えられています(これを賃借権の物権化といいます。)。

したがって,不動産賃借権の場合には,必ずしも「売買は賃貸借を破る」ことにはならず,不動産賃借権と物権とが,物権相互間の場合と同様に,対抗要件(登記など)の具備の先後で優劣が決まることになります。

物権的請求権

物権の排他的効力を具体化するものとして,物権には,物権的請求権が認められています。

物権的請求権とは,物権が何らかの事情で妨げられている場合に,その妨害者に対して,その妨害を除去して物権の完全な実現を可能とするために行為を請求する権利のことをいいます。

例えば,Aさんが所有する不動産をBさんが勝手に占拠しているというような場合,AさんはBさんに対し,その不動産から出て行くように請求できます。

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