
再生手続の廃止とは、再生手続開始後に、再生手続が目的を達成することなく、裁判所の決定により、再生手続を将来に向かって終了させることです。個人再生の場合も、一定の事由がある場合には再生手続が廃止となることがあります。
個人再生手続が廃止されると、再生計画認可に至る前に、再生手続は終了します。
個人再生手続の廃止
個人再生を行う目的は、裁判所から再生計画認可決定を出してもらうことによって、債務を減縮・分割払いなどにするところにあります。
再生計画認可決定が確定すると、個人再生の手続は終了し、その後、再生計画に沿った弁済を行っていくことになります。
もっとも、個人再生を申し立てれば必ず再生計画が認可されるわけではありません。再生計画認可に至らずに個人再生手続が終了することもあります。
個人再生の終了事由の1つに手続の「廃止」があります。
再生手続の廃止とは、再生手続開始後に、再生手続が目的を達成することなく、裁判所の決定により、再生手続を将来に向かって終了させることです。
個人再生も、一定の事由がある場合には、再生計画が認可される前に、廃止によって個人再生手続が終了することがあります。
小規模個人再生手続の廃止事由
小規模個人再生の場合、以下の事由があるときに廃止になります。
- 決議に付するに足りる再生計画案の作成の見込みがないことが明らかな場合(民事再生法191条1号)
- 再生計画案提出期間またはその伸長期間内に再生計画案の提出がない場合、あるいは期間内に提出されたものの再生計画案が決議に付するに足りない場合(同条2号)
- 債権届出期間後再生計画認可の決定の確定前に再生手続開始事由の不存在が明らかになった場合(民事再生法192条1項)
- 再生債務者が、裁判所による再生債務者の業務および財産に関する保全命令に反した場合、裁判所の許可を得ずに民事再生法41条1項各号及び同法42条1項各号に定める行為をした場合(同法193条1項)
- 再生計画案の決議において、不同意回答をした議決権を有する再生債権者が、議決権者総数の頭数の半数以上である場合または議決権額が議決権総額の2分の1を超える場合(民事再生法237条1項)
- 再生債務者が財産目録に記載すべき財産を記載しなかった場合または不正の記載をした場合(民事再生法237条1項)
給与所得者等再生手続の廃止事由
給与所得者等再生の場合、以下の事由があるときに廃止になります。
- 債権届出期間後再生計画認可の決定の確定前に再生手続開始事由の不存在が明らかになった場合(民事再生法192条1項)
- 再生債務者が、裁判所による再生債務者の業務および財産に関する保全命令に反した場合、裁判所の許可を得ずに民事再生法41条1項各号及び同法42条1項各号に定める行為をした場合(同法193条1項)
- 再生債務者が財産目録に記載すべき財産を記載しなかった場合または不正の記載をした場合(民事再生法244条、237条1項)
- 不認可事由のいずれにも該当しない再生計画案の作成の見込みがない場合(民事再生法243条1号)
- 再生計画案提出期間内に再生計画案の提出がない場合、または期間内に提出されたものの再生計画案に不認可事由がある場合(民事再生法243条2号)
個人再生手続の廃止の効力
個人再生において再生手続廃止決定がなされ、その廃止決定が確定すると、個人再生手続は終了となります。要するに、手続が打ち切られてしまうということです。
なお、個人再生の場合、通常の民事再生と異なり再生計画認可決定の確定によって再生手続は当然に終了となるため、再生計画認可決定後に手続が廃止されるという事態は生じません。
また、個人再生において再生手続廃止決定が確定し、かつ、再生債務者に破産手続開始原因があると認められる場合、裁判所は、職権で、その再生債務者に対して破産手続開始の決定をすることができるとされています(民事再生法250条1項。これを「牽連破産」といいます。)。
つまり、個人再生手続が廃止されると、裁判所の判断によっては、自動的に破産に移行することが有り得るということです。
もっとも、実務では、債務者の再生意欲に対して萎縮的効果を与えるおそれがあるなどの理由から、原則として、個人再生手続が廃止されたとしても牽連破産にはしない運用がとられています。
したがって、個人再生手続が廃止になったら当然に破産にされてしまうという心配をする必要はないでしょう。