
個人再生の手続において個人再生委員が選任された場合、その個人再生委員と面談(打合せ)を行うのが通常です。個人再生委員との面談は、個人再生を申し立てた後の近い時期に行われます。
個人再生委員に選任されるのは弁護士ですので、面談の場所は、その個人再生委員弁護士の法律事務所で行われることが多いでしょう。
この面談においては、個人再生委員から、申立人債務者に対して、債務、財産の状況など、個人再生申立書の記載だけでは分からない詳細について質問がされます。場合によっては、資料の追加を求められることもあります。
個人再生委員の選任
個人再生の手続は、基本的に、再生債務者自身で手続を進めていかなければならない手続です(もちろん代理人弁護士がいる場合には、その代理人弁護士が進めていくことにはなります。)。
もっとも、個人再生は、通常民事再生よりも簡素化されているとはいえ、複雑な面はあります。そのため、個人再生手続では、裁判所によって、個人再生委員が選任されることがあります。
個人再生委員が選任されると、その個人再生委員が、再生債務者の手続の進行を指導・監督することになります。
そして、裁判所に対して、再生手続開始についての意見や、再生計画認可についての意見などを提出することになります。
個人再生委員自身が、破産手続における破産管財人のように手続を遂行していくというわけではありません。あくまで指導・監督です。
しかし、個人再生委員の意見は、裁判所の判断に対しても非常に重大な影響力を持っています。
特別な場合しか個人再生委員を選任しないのが通常ですが、東京地方裁判所本庁および立川支部では、全件について個人再生委員が選任される運用になっています。
個人再生委員との面談の時期
個人再生委員が選任される事件では、個人再生の申立てが裁判所に受理されるとすぐに、個人再生委員選任の決定がされます。
そして、その後、申立人は、個人再生委員との面談(打ち合わせ・面接とも呼ばれています。)を行うことになります。
東京地方裁判所本庁・立川支部では、全件について個人再生委員が選任されますから、当然、全件について個人再生委員との面談が実施されます。
面談の時期は、申立て後個人再生委員選任がなされてから、できる限りすみやかに行うものとされています。
東京地方裁判所本庁・立川支部では、一般的スケジュールとして、個人再生委員は、申立て日から3週間以内に再生手続開始に関する意見書を裁判所に提出するものとされています。
そのため、再生手続を開始してよいかどうかを判断するためにも、面談は、申立て日から1~2週間の間に行われるのが通常です。
個人再生委員との面談は、通常1回ですが、事案によっては、複数回面談がなされるということもあり得るでしょう(ただし、かなり稀ではあります。)。
なお、代理人弁護士が付いている場合、もちろん、面談に代理人弁護士も同席することになります。
個人再生委員との面談の場所
個人再生委員に選任されるのは、個人再生の申立てを受理した裁判所の管轄内に所在する法律事務所所属の弁護士であるのが通例です。
例えば、東京地方裁判所の個人再生事件であれば、23区内に所在する法律事務所所属の弁護士が、個人再生委員に選任されることになります。
そのため、個人再生委員との面談の場所は、個人再生委員に選任された弁護士が所属する法律事務所で行われるのが一般的でしょう。
個人再生委員との面談の内容
前記のとおり、個人再生委員による面談の趣旨は、個人再生の手続を開始してよいかどうか、つまり、個人再生の開始要件を満たしているのかどうかを判断するために行われるものです。
したがって、個人再生委員との面談では、個人再生の手続開始要件に関する事項を聴取されることになります。
個人再生委員が選任された際、裁判所から申立人(または代理人)に個人再生委員が誰になったのか等についての連絡がされます。
そして、すみやかに、個人再生委員宛てに個人再生申立書等一式の副本を送付します(なお、裁判所によって方法は異なります。裁判所に副本を提出して、裁判所から個人再生委員宛てに送ってもらう方法を採用している裁判所もあります。)。
そのため、面談の時までには、個人再生委員も申立書を呼んでいますので、聴取される内容は、申立書だけでは分からないこと、添付資料・通帳履歴の不明点などを中心に聴取されます。
具体的には、やはり収入・支出の状況が中心でしょう。申立書記載の収入を維持していけるのか、再生計画に基づく弁済期間中に支出が増大することはないか、などです。
また、個人再生の弁済額は、清算価値保障原則により、持っている財産の価額に左右される場合がありますので、申立書記載の財産のほかに何か財産を持っていないかなども聴取されます。
債権者が他にいないかなども聞かれることがあります。
個人再生委員との面談では、その他に、新たな資料の提出が求められることもあります。また、収支を管理するため、再生手続終了まで、最新の通帳履歴や家計簿等の提出を継続するよう求められることもあります。
いずれにしろ、個人再生委員との面談では、聞かれたことに対して誠実に答える必要があります。不審に思われる事項が多くあるという方が、不利益な結果を生じさせるおそれがあるからです。