認定死亡は失踪宣告と何が違うのか?

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実際に死亡が未確認であっても死亡したものとして扱われる制度として「認定死亡」があります。同じく死亡したものとして扱う制度として失踪宣告がありますが、認定死亡と失踪宣告にはさまざまな点で違いがあります。

認定死亡とは?

戸籍法上の制度として,「認定死亡」という制度があります。

死亡したことは確実であるものの,災害や事故などのため遺体を発見できないという場合があります。

遺体を発見できない以上,死亡診断書等を作成できないので,通常であれば戸籍に死亡の記載をすることができないのですが,死亡したことが確実であるのに,戸籍に反映できないとなると不都合を生じるおそれがあります。

そこで,そのように死亡したことが確実であるが遺体を発見できないという場合に,官公庁による死亡の報告によって,その人を死亡したものとして戸籍上も取り扱うことができるという慣行を法的に認めた制度が,認定死亡という制度です。

認定死亡は慣行を法的に認めた制度ですが、法令上の根拠は戸籍法89条とされています。

戸籍法 第89条
水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。

認定死亡がなされれば,相続も開始することになります。

認定死亡と失踪宣告の違い

実際に死亡したかどうかが未確認であっても,死亡したものとして取り扱う法制度として,認定死亡のほかに,失踪宣告という制度もあります。

認定死亡も失踪宣告も,実際に死亡したかどうかを確実に証明することができないために,死亡した蓋然性があるという,いってみれば推論を根拠として,ある人を死亡したものとして取扱い,法的な安定性を確保しようとする制度であるという点では共通性があります。

もっとも,認定死亡と失踪宣告には,以下のような違いもあります。

死亡の確実性の程度

認定死亡は死亡したことが確実といえる場合に用いられますが,他方,失踪宣告の場合は,生死が不明であるという場合にも利用することができます(ただし,実際には死亡が確実と言える場合に利用されることが多いでしょう。)。

認定機関

認定死亡の場合は官公庁が死亡を認定して戸籍事務を取り扱う市町村長に報告することによって戸籍上死亡として取り扱われることになりますが,失踪宣告の場合には家庭裁判所が裁判で決定するものであるという違いもあります。

法的効果

法的な効果の面でも違いがあります。認定死亡も失踪宣告も死亡として取り扱うという点では同じですが,認定死亡の場合には死亡を「推定する」ものであるのに対し,失踪宣告の場合には死亡したものと「みなす」ことになります。

どういう違いかというと,「推定する」という場合には,反対の証拠を挙げれば推定を覆すことができるのに対し,「みなす」という場合には,反対の証拠を挙げただけでは覆すことができないということです。

具体的にいうと,死亡として取り扱われた人が実は生きていたという場合,認定死亡の場合にはその人が生きていたことを証明すれば,認定死亡は取り消されます。つまり,戸籍の死亡の記載は訂正されるということです。

これに対し,失踪宣告の場合には,その人が生きていたことを証明したとしても,それだけで失踪宣告が取り消されることはありません。極端にいうと,生きていた人本人が取り消してほしいといっても取り消されないということです。

失踪宣告を取り消してもらうためには,再度裁判(失踪宣告取消しの審判)をしないといけないのです。

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