この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

憲法原理において最も重要なことは,言うまでもなく基本的人権の保障です。日本国憲法でも,「人権カタログ」と呼ばれる日本国憲法第三章において,さまざまな基本的人権を保障しています。
日本国憲法における基本的人権の保障
憲法原理において最も重要な事項は、基本的人権を保障することです。人権保障規定・権利章典のない近代憲法はあり得ません。
日本国憲法でも最も重要な原理は基本的人権の保障であり、実際、日本国憲法第三章において詳細な人権のカタログを規定しています。
日本国憲法にもまだ規定が不足していると言われる部分はありますが、しかしそれでも、近代憲法の基本とされる人権はほぼ全て網羅しており、人権保障条項は非常に充実しています。
自由権
そもそも人権というものは,国家権力からの自由を求めて生み出された概念です。そのため,人権のうちで最も根本的なものは,国家権力による制約を受けずに自由に思想し行動できる権利,すなわち「自由権」です。
この自由権には,精神的自由権,経済的自由権,人身の自由があります。
精神的自由権
精神的自由権とは,個人の内心における精神的活動やその精神的活動の外部的表徴行為の自由を保障する人権です。最も重要な人権と言ってよいでしょう。日本国憲法においても,以下の精神的自由権が保障されています。
- 思想・良心の自由(19条)
- 信教の自由(20条)
- 表現の自由,集会・結社の自由(21条1項)
- 通信の秘密(21条2項)
経済的自由権
経済的自由権とは,私人の経済活動の自由を保障する人権です。日本国憲法においても,以下の経済的自由権が保障されています。
- 職業選択の自由,居住移転の自由(22条1項)
- 外国移住の自由,国籍離脱の自由(22条2項)
- 財産権(29条)
人身の自由
人身の自由とは,正当な理由なく個人の身体を拘束されないことを保障する人権です。日本国憲法においても,以下の人身の自由が保障されています。
- 奴隷的拘束・苦役からの自由(18条)
- 適正手続を受ける権利(31条)
- 不法な身体拘束からの自由(33条)
- 理由の告知・弁護人依頼権を与えられなければ抑留・拘禁されない権利,正当な理由なく拘留されない権利(34条)
- 令状がなければ住居侵入・捜索・押収されない権利(35条)
- 拷問・残虐な刑を受けない権利(36条)
- 公平な裁判所の迅速な公開の刑事裁判を受ける権利,刑事被告人の証人審問権,弁護人依頼権(37条)
- 自己に不利益な供述を強制されない権利(38条)
- 刑罰を遡及されない権利,二重の危険を受けない権利(39条)
参政権
日本国憲法は、国家権力への自由を認め、民主主義を採用し、国民主権を基本原理としています。参政権は、民主主義の根幹をなす人権です。すなわち、参政権とは国政に参加する権利のことをいいます。
日本国憲法においても、以下の参政権が保障されています。
- 選挙権・被選挙権(15条1項)
- 最高裁判所裁判官の国民審査権(79条2項)
- 地方自治特別法の住民投票権(95条)
- 憲法改正の国民投票権(96条1項)
社会権
現代福祉国家においては,国家による自由が保障されなければなりません。国家による自由を保障したものが社会権です。すなわち,社会権とは,社会において人間が人間らしく生きるための権利のことです。
日本国憲法においても,以下の社会権が保障されています。
- 生存権(25条1項)
- 教育を受ける権利(26条1項)
- 勤労の権利(27条1項)
- 労働基本権(28条)
受益権
受益権とは,国民が国家に対して一定の給付または行為を要求する権利です。日本国憲法においても,以下の受益権が保障されています。
- 請願権(16条)
- 国家賠償請求権(17条)
- 裁判を受ける権利(32条)
- 刑事補償請求権(40条)
法の下の平等・平等権
自由を真に保障するためには,平等が保障されていなけれなりません。そこで,日本国憲法では,14条において「法の下の平等」が保障されています。同条は,権利としての「平等権」も保障していると解されています。
包括的基本権・新しい人権
前記のとおり,日本国憲法ではさまざまな人権が保障されています。しかし,時代の変化によって,それまでは人権として保障する必要がなかったものでも,新たに人権として保障すべき必要性が生じる場合もあります。
そこで,日本国憲法13条後段において規定されている幸福追求権を「包括的基本権」を含む権利として捉え,明文のない権利を「新しい人権」として保障するための根拠規定にすることができると解されています。
最高裁判例においても,以下のような権利が,新しい人権として保障されていると解されています。
- プライバシー権
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
憲法と資格試験
憲法は、国家の基本法です。そのため、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、公務員試験などの試験科目になっています。
憲法は「入口は広いが、出口は狭い」と言われることがあります。抽象的な議論が多いため、比較的取っつきやすい反面、学習が進むほどイメージをつかみづらく難解に感じるようになるということです。
独学では「本当にこの解釈で正しいのか?」と不安になることもあるかもしれません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
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参考書籍
憲法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、憲法の参考書籍を紹介します。
憲法(第八版)
著者:芦部信喜 出版:岩波書店
憲法を勉強する人は全員読んでいるのではないかというくらい定番中の定番。著者が亡くなられてからも、改訂され続けています。不足する知識は他の本などで補えばよいだけなので、資格試験受験の基本書としても十分。憲法を勉強するなら読んでおかなければいけない本です。
日本国憲法論(第2版)
著者:佐藤幸治 出版:成文堂
憲法学の第一人者による概説書。レベルは高いです。初学者向きではありません。しかし、通説的見解とは異なる視点から論考されており、憲法の理解を深めることができます。
憲法(第五版)
編集:樋口陽一 出版:勁草書房
こちらも憲法学(特に比較憲法学)の第一人者による概説書。あまり受験向きではないかもしれませんが、より深く憲法を理解したいのであれば、読んでおくべき本です。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
憲法I(第2版)基本権
著者:渡辺康行ほか 出版:日本評論社
2分冊の体系書。共著ですが、内容に矛盾は感じません。ただし、初学者向きではありません。知識量は十分なので、辞書代わりに使えます。
憲法(第4版)伊藤真試験対策講座5
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、分かりやすくまとまっています。知識量も十分です。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。
憲法(第4版)伊藤真試験対策講座5
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、分かりやすくまとまっています。知識量も十分です。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。