この記事にはPR広告が含まれています。

日本国憲法とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

憲法イメージ
point

国家権力による人権侵害を制限して国民の基本的人権を保障するために,あらゆる法形式のうちで最高法規とされている「法」が「憲法」です。

わが国でも,「日本国憲法」が制定されています。日本国憲法は,「個人の尊厳の確保」に最大の価値を置き,そこから派生する基本的人権の保障,国民主権,平和主義の3つが基本原理・原則とされています。

憲法とは

憲法は、国家の基本法です。

国家権力は、市民・個人の自由を抑圧してきた歴史があります。しかし、フランス大革命を契機として、国家権力によっても侵されることのない市民・個人の「人権」が認識されることになりました。

この市民・個人の「人権」を保障するために、国家権力による人権侵害を制限する「法」が憲法なです。

つまり、憲法の目的は「国家権力を制限すること」であり、国民を拘束するものではないのが原則なのです。国民は憲法を順守しなければならないと考えられていますが,そのようなことはありません(例外はあります。)。

憲法は,国民の基本的人権を保障することが目的です。したがって、国家権力を抑制することこそが憲法の基本理念であり、国民を拘束するものではないのです。

このように、憲法は、あくまで,国民の人権を保障するために国家権力を制限するものであるということは忘れてはならないでしょう。憲法は、国民を束縛する法ではないのが原則なのです。

憲法の特質

近代憲法には,3つの重要な特質があります。それは、「自由の基礎法」「制限規範」「最高法規」であるということです。

自由の基礎法とは、憲法が、市民・国民の自由・権利を保障する最も基本的な法であるという特質です。

この市民・国民の自由・権利にとって最大の敵は国家権力です。自由や権利を保障するためには、国家権力の濫用を防止しなければなりません。憲法は、国家権力を制限する制限規範としての特質を有しています。

そして、憲法が国家権力を制限するだけの力を持っているためには、憲法こそが国家の法体系において最上位に置かれていることが必要になります。つまり、憲法は最高法規であるという特質がなければならないのです。

近代憲法の特質
  • 自由の基礎法
  • 制限規範性
  • 最高法規性

日本国憲法とは

前記のとおり、憲法は、国民の基本的人権を保障するために、人権の最大の敵である国家権力を抑制することを目的としています。

日本においても、これまで、国家権力によって個人の人権が侵害されてきたという歴史は変わりません。そこで制定されたのが日本の憲法「日本国憲法」です。

この日本国憲法は、近代憲法の特質をすべて備える憲法であり、自由の基礎法として「個人の尊厳」の確保を最大の目的としています。

そして、この個人の尊厳を確保するために、3つの基本原理があるとされています。その3つの基本原理とは、基本的人権の保障・国民主権・平和主義の3つです。

いうまでもなく,これら3つの基本原理のうちで最も重要なものは,個人の尊厳の確保に直結する基本的人権の保障です。

この人権保障のために、国民自らが主権者となる国民主権や、人権侵害を生み出す戦争を放棄する平和主義がとられているのです。

日本国憲法の3原則

日本国憲法の構成

日本国憲法は全部で103条の条文があります。「前文」から始まり、天皇、戦争の放棄、国民の権利及び義務、国会、内閣、司法、財政、地方自治、改正、最高法規について定めています。これらはすべて人権保障・個人の尊厳の確保を達成するために設けられているのです。

※日本国憲法の条文については、以下のページ(衆議院サイト)をご覧ください。

前文

日本国憲法では、まず前記3原理を明らかにする「前文」から始まります。この前文も、日本国憲法の一部です。国民主権や平和主義などの根拠規定とされています。

天皇(1条~8条)

第1章は「天皇」です。わが国が天皇制をとっていること、主権が国民にあることを明らかにしています。

主権はあくまで国民にあるため、ここでいう天皇制とは、天皇が政治的権力を有しない象徴天皇制を意味しています。

戦争の放棄(9条)

第2章は「戦争の放棄」です。日本国憲法が平和主義を採用していることを明らかにしています。自衛隊の存在との関係で、現在、最も議論のある条文です。

国民の権利及び義務(10条~40条)

第3章は「国民の権利及び義務」です。各種の基本的人権の保障を定めています。自由の基礎法である日本国憲法の中核部分です。

なお、第3章に個別に規定されていない権利であっても、包括的規定である13条によって、新しい人権として認められる場合があります。

統治機構

第4章以下では、各国家機関の規律を定めています。この国家機関の規律を定める条文を「統治機構」と言います。国家機関を憲法によって規律することで、国家権力の濫用を抑制する制限規範の特質を具体化した規定です。

日本国憲法では、国家権力を立法・行政・司法に区分する「三権分立」を採用しており、第4章は立法権を有する「国会」について,第5章は行政権を有する「内閣」について,第6章は「司法」についてそれぞれ規律しています。

国会(41条~64条)

第4章「国会」では、立法権を担当する国会を規律しています。日本国憲法における国会は、国権の最高機関唯一の立法機関・全国民の代表機関とされています。

この国会は、衆議院と参議院の2院によって構成され、国民の選挙によって選ばれた国会議員が組織します。国民の代表である国会議員によって組織される国会が立法を担当するものとして、立法権に対する民主的なコントロールを及ぼしています。

内閣(65条~75条)

第5章「内閣」では、行政権を担当する内閣を規律しています。内閣は、首長である内閣総理大臣とその他の国務大臣によって構成されます。

日本国憲法では、国会の議決によって国会議員の中から内閣総理大臣が選ばれ、国務大臣の過半数も国会議員でなければならず、内閣は、行政権の行使について国会に対して連帯責任を負うとする議院内閣制を採用しています。

司法(76条~82条)

第6章「司法」では、司法権を担当する最高裁判所と法律に基づき設置される下級裁判所を規律しています。

司法権には、憲法に違反する法令を審査する違憲立法審査権が与えられており、国民の人権を侵害する法令を違憲無効とすることによって人権保障を図る役割が求められることから、他の国家機関による干渉を防ぐため、司法権の独立が憲法上保障されています。

財政(83条~91条)

第7章「財政」では、国の財政は国民の民意を反映したものなければならないことが明記されています。

具体的には、国の財政処理などは国会の議決に基づかなければならないとされ、財政に対する国民の民主的コントロールが及ぶように規律されています(財政民主主義)。

地方自治(92条~95条)

第8章は「地方自治」について定めています。国家権力を地方にも分散することによって権力の集中化を防ぐ権力分立の原則のあらわれと言えます。

地方公共団体の長や議院などは、住民の選挙によって選ばれます。地方公共団体は、それぞれ一定の行政権が認められ、法律の範囲内で条例を立法することも可能とされています。

改正(96条)

第9章は「改正」です。すなわち,日本国憲法を改正するための要件・手続について定めています。

憲法は人権保障のために国家権力を制限するものである以上、容易に改正されるべきではないことから、その改正の要件は非常に厳格なものとされています。日本国憲法のように改正に厳格な要件を要する憲法を硬性憲法といいます。

最高法規(97条~99条)

第10章は「最高法規」です。日本国憲法が,あらゆる我が国の法体系のうちで最高法規であることを明らかにしています。また,公務員には,憲法尊重擁護義務があることも明らかにしています。

補則(100条~103条)

第11条は「補則」です。日本国憲法施行に伴う経過措置などについて規定している部分です。憲法規範として重要性を持つものではありません。

日本国憲法と法律

日本国憲法は「法律」であると思われている人もいるかもしれませんが、日本国憲法は、法律ではありません。

法律は、国会が制定する一般的抽象的法規範です。しかし、憲法は国会が制定したものではありません。

むしろ、最高法規である日本国憲法によって国会が設置され、規律されています。憲法が上位であり、国会が下位なのです。したがって、その国会が制定する法律も、憲法に劣後する地位に置かれます。

日本国憲法は、法律よりも上位の「法(規範)」であって、「法律」ではないのです。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

憲法と資格試験

憲法は、国家の基本法です。そのため、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、公務員試験などの試験科目になっています。

憲法は「入口は広いが、出口は狭い」と言われることがあります。抽象的な議論が多いため、比較的取っつきやすい反面、学習が進むほどイメージをつかみづらく難解に感じるようになるということです。

独学では「本当にこの解釈で正しいのか?」と不安になることもあるかもしれません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

憲法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、憲法の参考書籍を紹介します。

憲法(第八版)
著者:芦部信喜 出版:岩波書店
憲法を勉強する人は全員読んでいるのではないかというくらい定番中の定番。著者が亡くなられてからも、改訂され続けています。不足する知識は他の本などで補えばよいだけなので、資格試験受験の基本書としても十分。憲法を勉強するなら読んでおかなければいけない本です。

日本国憲法論(第2版)
著者:佐藤幸治 出版:成文堂
憲法学の第一人者による概説書。レベルは高いです。初学者向きではありません。しかし、通説的見解とは異なる視点から論考されており、憲法の理解を深めることができます。

憲法(第五版)
編集:樋口陽一 出版:勁草書房
こちらも憲法学(特に比較憲法学)の第一人者による概説書。あまり受験向きではないかもしれませんが、より深く憲法を理解したいのであれば、読んでおくべき本です。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

基本憲法Ⅱ 総論・統治
著者:木下智史ほか 出版:日本評論社
初学者からでも使えるテキスト。資格試験受験生向けに書かれているため、非常に読みやすい本です。司法試験以外でも使えると思えます。

憲法Ⅱ 総論・統治(第2版)
著者:渡辺康行ほか 出版:日本評論社
2分冊の体系書。共著ですが、内容に矛盾は感じません。ただし、初学者向きではありません。知識量は十分なので、辞書代わりに使えます。

憲法(第4版)伊藤真試験対策講座5
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、分かりやすくまとまっています。知識量も十分です。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました