憲法は国家の基本法です。わが国でも日本国憲法が制定されており,国家あるいはわれわれ市民にとって,最も根本的な規範とされています。
この日本国憲法をはじめとする近代憲法には,「自由の基礎法」「制限規範」「最高法規」という3つの特質があると解されています。
近代憲法の特質
憲法とは,国家の基本法です。近代憲法においては,単に国家のシステムを定めるというだけの意味ではなく,市民・国民の自由・権利を保障するという意味を有しています。
この憲法,特に近代以降の憲法には3つの特質があると解されています。その3つの特質とは,「自由の基礎法」「制限規範性」「最高法規性」です。
この3つの特質を備えていない憲法は,近代憲法とはいえません。わが国でも日本国憲法が制定されていますが,日本国憲法は,この3つの特質のいずれも備えていますので,近代憲法の性質を有しているといえます。
自由の基礎法
近代憲法の特質の第一は,「自由の基礎法」であるということです。
前記のとおり,近代憲法の最大の目的は,個人の尊厳を確保して,その自由・権利を保障するということにあります。
自由の基礎法であるというのは,個人の自由を確保することを目的とする最も根本的な法規範であるという意味です。
自由の基礎法であるという特質は,近代憲法における最も重要な特質であり,立憲主義の目的でもある核心的な特質であるということです。
日本国憲法においても,第三章において,個人の尊厳が最高の価値を有するものであることを明らかにした上で,各種の基本的人権が保障されており,自由の基礎法としての特質を備えています。
制限規範性
前記のとおり,近代憲法の最も重要な特質は自由の基礎法であることであり,具体的にいえば,個人の自由・権利を確保するということです。
この個人の自由・権利にとって最大の敵は,言うまでもなく,国家権力です。歴史的にみても,個人の自由・権利の最大の迫害者が国家権力であったことは疑いないでしょう。
したがって,個人の自由・権利を確保して,憲法が自由の基礎法であるためには,国家権力の濫用を抑制しなければなりません。そして,それが憲法の重要な役割といえます。
そのため,近代憲法には,国家権力の濫用を制限する規範であるという特質があります。それが「制限規範性」です。
日本国憲法でも,統治機構において、国家機関の組織を定め,それぞれの国家機関に一定の作用を授権することによって,それを超える国家権力が行使されることを抑制しているといえます。
また,三権分立性を採用し,司法権に違憲法令審査権を与え,地方自治を明らかにし,また憲法改正に厳格な要件を設けるなどして国家権力の集中化による権力濫用抑制を図っています。
したがって,日本国憲法は,制限規範性を有しているといえます。
最高法規性
前記のとおり,近代憲法の最大の特質は,自由の基礎法であるということであり,それを確保するために,制限規範という特質が必要となってきます。
そして,憲法が国家権力を抑制する制限規範として機能するためには,その憲法があらゆる国家権力をも上回る地位にあることが求められてきます。
つまり,国家の法体系のうちで,憲法が最上位の法規範であるということが必要となるのです。
そこで,近代憲法には,「最高法規性」という特質があるとされています。最高法規であるからこそ,国家機関による国家権力の行使を抑制できるのです。
日本国憲法でも,第十章において,日本国権憲法がわが国の法体系における最高法規であることが明言されていますので,「最高法規性」の特質を備えたものであることは明らかです。
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