この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

日本国憲法は,統治機構において,三権分立の一翼を担う国家機関として,国会を設置しています。国会には「国権の最高機関」「国民の代表機関」「唯一の立法機関」という地位が与えられています。。
日本国憲法における国会の地位
日本国憲法 第41条
- 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
日本国憲法 第42条
- 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
日本国憲法 第43条
- 第1項 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
- 第2項 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
憲法は,国家権力を制限する制限規範です。国家権力の根拠は憲法に存在しなければなりません。そのため,日本国憲法でも統治機構を規定して国家機関を規定し,さらに,三権分立の原理を採用しています。
その三権の1つを担う国家機関が「国会」です。
日本国憲法上,国会は,国権の最高機関であり,唯一の立法機関であるとされ(日本国憲法41条),全国民の代表機関であるという地位を与えられています。
これらの国会の地位のことを「国権の最高機関性」「唯一の立法機関性」「全国民の代表機関性」と呼ぶことがあります。
- 国権の最高機関
- 唯一の立法機関
- 全国民の代表機関
国権の最高機関性
前記のとおり,国会は,日本国憲法によって「国権の最高機関」たる地位を与えられています(日本国憲法41条)。
国権とは,国家の統治権または国家権力という意味です。そうすると,その最高機関であるということは,国会が最上の国家機関であるという地位を与えられているように思えます。
しかし,国会を最上位と考えると,国民を主権者とする国民主権の原理や国家権力相互間による抑制・均衡を図る権力分立の原理と矛盾するおそれがあります。
そのため,この国権の最高機関とは,国民代表機関である国会に対する政治的な美称にすぎないと考えるのが通説です。
ただし,行政権の肥大化による人権侵害の防止が現代の最大の課題であることに鑑みて,国権の最高機関性に,国会による他の国家機関(特に行政権)に対する抑制の解釈根拠としての意義を持たせるべきであるとする見解もあります。
唯一の立法機関性
前記のとおり,国会は,日本国憲法によって「唯一の立法機関」たる地位を与えられています(日本国憲法41条)。
ここでいう「唯一」には,2つの意味があります。
ひとつは,国会のみが立法権を独占するという国会中心立法の原則です。ただし,憲法上に例外が規定されている場合は除かれます。
例外としては,たとえば,各議院による規則制定権や最高裁判所の規則制定権があります。
もうひとつは,国会は他の機関の関与なく単独で立法できるという国会単独立法の原則です。ただし,これにも,憲法上,地方自治体による地方自治特別法の住民投票という例外が設けられています。
また,「立法」とは,実質的意味の法律を制定する国家作用を意味すると解されています。この実質的意味の法律とは,不特定多数の人・事件に適用される一般的・抽象的法規範のことをいいます。
全国民の代表機関性
前記のとおり,国会は,日本国憲法によって「全国民の代表機関」たる地位を与えられています(日本国憲法43条)。
国会は,衆議院と参議院という2つの議院で構成されています(日本国憲法42条)が,この各議院はいずれも,全国民によって選挙された全国民の代表たる国会議員によって組織されています(日本国憲法43条)。
立法は,われわれ国民の生活に直接影響を与える最重要事項ですから,立法権は,全国民の代表である国会に与えられているのです。
ただし,国会議員はあくまで全国民の代表であり,特定の選挙民の代表ではありません。
そのため,国会議員は,選挙民の命令を受けるものではなく,選挙民から独立して自由に活動ができると解されています。この国会議員と選挙民の関係性は自由委任の関係と呼ばれています。
そして,このような自由委任の関係であるため,「代表」とは,国民は代表機関を通じて行動し,代表機関は国民意思を反映するものとみなされるという政治的な意味の代表であると考えられています。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
憲法と資格試験
憲法は、国家の基本法です。そのため、司法試験(本試験)、司法試験予備試験、司法書士試験、公務員試験などの試験科目になっています。
憲法は「入口は広いが、出口は狭い」と言われることがあります。抽象的な議論が多いため、比較的取っつきやすい反面、学習が進むほどイメージをつかみづらく難解に感じるようになるということです。
独学では「本当にこの解釈で正しいのか?」と不安になることもあるかもしれません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。
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参考書籍
憲法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、憲法の参考書籍を紹介します。
憲法(第八版)
著者:芦部信喜 出版:岩波書店
憲法を勉強する人は全員読んでいるのではないかというくらい定番中の定番。著者が亡くなられてからも、改訂され続けています。不足する知識は他の本などで補えばよいだけなので、資格試験受験の基本書としても十分。憲法を勉強するなら読んでおかなければいけない本です。
日本国憲法論(第2版)
著者:佐藤幸治 出版:成文堂
憲法学の第一人者による概説書。レベルは高いです。初学者向きではありません。しかし、通説的見解とは異なる視点から論考されており、憲法の理解を深めることができます。
憲法(第五版)
編集:樋口陽一 出版:勁草書房
こちらも憲法学(特に比較憲法学)の第一人者による概説書。あまり受験向きではないかもしれませんが、より深く憲法を理解したいのであれば、読んでおくべき本です。
司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。
基本憲法Ⅱ 総論・統治
著者:木下智史ほか 出版:日本評論社
初学者からでも使えるテキスト。資格試験受験生向けに書かれているため、非常に読みやすい本です。司法試験以外でも使えると思えます。
憲法Ⅱ 総論・統治(第2版)
著者:渡辺康行ほか 出版:日本評論社
2分冊の体系書。共著ですが、内容に矛盾は感じません。ただし、初学者向きではありません。知識量は十分なので、辞書代わりに使えます。
憲法(第4版)伊藤真試験対策講座5
著者:伊藤真 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、分かりやすくまとまっています。知識量も十分です。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。