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運行供用者責任における立証責任の転換とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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運行供用者責任においては、被害者保護の立証責任を軽減措するための措置として、立証責任の転換がはかられています。

具体的に言うと、被害者には加害者の故意または過失の立証が求められず、運行供用者が免責事由があることを立証しなければならないとされています。

一般不法行為の要件

民法 第709条

  • 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:e-Gov法令検索

交通事故に遭った場合、被害者は加害者などに対して損害賠償を請求できます。この損害賠償請求は、法的に言うと、不法行為に基づく損害賠償請求です(民法709条、710条)。

加害者に不法行為責任(損害賠償責任)が成立するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

不法行為に基づく損害賠償請求の要件
  • 被害者の権利または法律上保護される利益を侵害したこと(交通事故を起こしたこと)
  • 侵害行為が故意または過失に基づくものであること
  • 被害者に損害が発生したこと
  • 侵害行為と損害発生との間に因果関係があること

実際に損害賠償を請求する場合には、これらの要件に該当する具体的な事実(要件事実)を証拠によって証明(立証)する必要があります

一般不法行為責任の要件事実の立証責任

一般不法行為責任の要件事実は、被害者が立証しなければいけません。仮に、これらの立証に失敗した場合、被害者の損害賠償請求は認められないことになります。

このように、当事者の一方がある事実について立証できなければ敗訴等の不利益を負うことになる立証の負担のことを「立証責任」と呼んでいます。

不法行為に基づく損害賠償請求の場合には、被害者が全面的に立証責任を負担するのです。

しかし、上記4つの要件に該当する事実をすべて立証するのは、容易ではありません。特に、過失を立証するのは非常に難しい場合があります。

そのような場合に、過失などを立証できないからといって、被害者からの損害賠償請求はまったく認められないとするのは、被害者保護に反します。

そこで、被害者保護のために、運行供用者責任においては、被害者の立証責任を軽減するための措置として、立証責任の転換が図られています

運行供用者責任の要件

自動車損害賠償保障法 第3条

  • 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索

運行供用者責任が成立するためには、以下の要件を満たしている必要があります(自動車損害賠償保障法3条)。

運行供用者責任の成立要件

上記のとおり、運行供用者責任の成立要件には、過失の要件が含まれていません。被害者が過失を立証しなくてもよいのです。その代わりに、運行供用者側に免責事由がないことが要件とされています

運行供用者責任の要件事実の立証責任

運行供用者に免責事由の立証責任は、被害者にはありません。

運行供用者が、「自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」「被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと」「自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと」の3つの免責事由があることを立証しなければならないとされています。

この免責要件を3つとも立証できれば、運行供用者は損害賠償責任を免れることができます。運行供用者に免責要件の立証責任が課されているのです。

運行供用者責任においては、被害者が「過失があること」を立証しなくてよいとしつつ、運行供用者に「免責要件があること」を立証しなければならないことにして、立証責任の負担を被害者から加害者(運行供用者)に転換させているのです。

立証責任の転換と相対的無過失責任

前記のとおり、運行供用者責任においては、立証責任の転換がはかられています。被害者は、過失を立証せずに済むので、その立証責任の負担は大幅に軽減されることになります。

その意味で、運行供用者責任は、過失がなくても加害者が責任を負担する無過失責任に近いものがあります

もっとも、運行供用者責任は、一定の免責要件を立証できれば、加害者も運行供用者責任を免れることができますから、無過失責任そのものとはいえないでしょう(ただし、免責事由すべてを立証するのはかなり難しいでしょう。)。

そのため、運行供用者責任は、相対的無過失責任と呼ばれることがあります。

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