
さまざまな法的な行為をするのも,されるのも,法律上の「人」です。法律上の「人」は、個人である自然人と法人に分けられます。いずれも、権利義務の主体となり得る資格(権利能力)が与えられています。
法律上の「人」とは?
一般に「人」というと,人間を思い浮かべると思います。間違いというわけではないのですが,法律上「人」という場合には,人間だけでなく,会社などの法人も含まれています。
法律の上では,個人である人間のことを「自然人」といい,法人と区別しています。いずれの「人」も,法的な権利義務の主体となります。
以下では、自然人である「人」について説明します。
自然人たる「人」の始期
民法 第3条
第1項 私権の享有は、出生に始まる。
第2項 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
法律上,人間が,自然人たる「人」として扱われるのはいつからかというと,出生の時です(民法3条1項)。
したがって,母親の胎内にいる胎児は,いまだ出生していないので,法律上の「人」ではありません。出生して初めて法律上の「人」になるということです。
では,どの段階で出生したといえるのか,いいかえれば,「人」の始期,胎児と「人」との区別をする時点はいつなのかという点が問題となってきます。
この点については,母体から胎児の身体の一部でも露出すれば足りるとする一部露出説や,母体から胎児の身体の全部が露出しなければ出生とはいえないとする全部露出説があります。
刑法上は一部露出説が通説ですが,民法上では全部露出説が通説です。したがって,民法上は,母体から胎児の身体が全部出てきた時に,法律上の「人」となるということになります。
ただし,以下の場合は、例外的に、胎児もすでに生まれたものとみなされ、「人」として権利義務の主体になれるとされています。
自然人たる「人」の終期
自然人たる「人」の終期は,死亡の時です。
死亡は,基本的に,心臓停止・呼吸停止・瞳孔拡大の3徴候によって判断されると解されていますが,脳死の場合には別の判断が必要となってくるでしょう。
「臓器の移植に関する法律」によれば,「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたもの」を脳死としています。
相続の開始においても,このように判定された人について臓器摘出がなされた場合には,脳死時点で死亡したものと扱われると解されています。