
自己破産における復権とは,破産手続開始によって破産者に課せられた権利の制限(資格制限)を消滅させ,破産者の本来の法的地位を回復させる制度のことをいいます。この復権には,当然復権と申立てによる復権とがあります。
復権とは?
破産手続が開始されると,破産者はいくつかの法的な制限を受けることになります。具体的には,居住制限や通信の秘密の制限(郵便物の転送),そして資格制限などです。
資格制限とは、破産手続の開始によって、一定の公的資格等を利用することが制限されることを言います。例えば、よくある例として、警備員、保険外交員、宅建資格などがあります。
居住制限や通信の秘密の制限は,破産手続の間だけの制限です。破産手続が終了すれば当然に終了します。したがって,これらについては,制限を解くということは考える必要がないわけです。
ところが,資格制限だけは破産手続が終了しても,当然に消滅するわけではないものとされています。そのため,資格制限については,この制限を解く制度が必要となってきます。
その資格制限を解除するための制度が「復権」という制度です。
すなわち,復権とは,破産手続開始によって破産者に課せられた権利の制限を消滅させ,破産者の本来の法的地位を回復させる制度のことをいいます。
復権の類型
自己破産における復権には,「当然復権」と「申立てによる復権」とがあります。
当然復権
破産法 第255条
- 第1項 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第1項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
- 第1号 免責許可の決定が確定したとき。
- 第2号 第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
- 第3号 再生計画認可の決定が確定したとき。
- 第4号 破産者が、破産手続開始の決定後、第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。
- 第2項 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
- 第3項 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第1項第1号又は第3号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。
当然復権とは,法定の事由が発生した場合,当然に復権が認められる場合のことをいいます。当然復権が認められる法定の事由としては,以下のものがあります(破産法255条1項)。
- 免責許可決定の確定
- 破産手続同意廃止決定の確定
- 再生計画認可決定の確定
- 破産手続開始決定後に詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年を経過した場合
要するに,免責許可決定等が確定するなどすれば,特別な手続を行わなくても,当然に復権できるということです。
申立てよる復権
破産法 第256条
- 破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。
前記当然復権が認められない場合でも,破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは,破産者の復権の申立てにより復権が認められる場合があります(破産法256条1項)。
復権の効果
復権の効果は「人の資格に関する法令の定めるところによる」ことになります(破産法255条2項)。
復権の効果は「人の資格に関する法令の定めるところによる」ため,復権によって具体的にどのような効果が生じるのかは各資格の制限を定める法令ごとに異なります。
しかし,いずれにしても,復権によって,破産による資格制限がなくなることに違いはありません。
資格制限がなくなれば,当然のことですが,再び資格を使った仕事をすることができるようになります。