
当然復権とは、破産法255条1項各号に規定する事由が発生した場合に当然に復権の効果が認められることを言います。当然復権が成立すれば、自己破産の資格制限は解除されます。
当然復権とは?
破産手続が開始されると,破産者は,一定の資格を利用することができなくなります。これを「資格制限」と呼んでいます。
この資格制限は,破産手続が終結しても解除されません。別途,「復権」が認められなければ,資格制限は解除されないのです。
すなわち,自己破産における復権とは,破産手続開始によって破産者に課せられた権利の制限を消滅させ,破産者の本来の法的地位を回復させる制度のことをいいます。
この復権には「当然復権」と「申立てによる復権」があります。
このうち当然復権とは,破産法255条1項各号に規定する事由が発生した場合に,法律上当然に(特別な手続を経るまでもなく)復権の効果が認められることをいいます。
当然復権が認められる場合
破産法 第255条
- 第1項 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第1項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
- 第1号 免責許可の決定が確定したとき。
- 第2号 第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
- 第3号 再生計画認可の決定が確定したとき。
- 第4号 破産者が,破産手続開始の決定後、第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。
- 第2項 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
- 第3項 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第1項第1号又は第3号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。
前記のとおり,当然復権が認められると,何か特別な手続をとらなくても資格制限が解除されます。
当然復権が認められる法定の事由としては,破産法255条1項各号のとおり,以下のものがあります。
- 免責許可決定の確定
- 破産手続同意廃止決定の確定
- 再生計画認可決定の確定
- 破産手続開始決定後に詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年を経過した場合
免責許可決定の確定
当然復権となる事由のうちで最も典型的なものは,破産法255条1項1号の「免責許可決定が確定したとき」です。単に免責許可決定されただけではなく、決定が確定した時に当然復権となります。
免責許可決定は、決定後、官報に公告されます。債権者の不服申し立てのないまま官報公告から2週間を経過すると、免責許可決定は確定します。
なお、免責不許可の場合には当然復権の効果は発生しません。
破産手続同意廃止決定の確定
当然復権事由の1つに、破産法218条1項の規定による破産手続廃止の決定の確定があります。
破産法218条1項の規定による破産手続廃止の決定とは、同意破産手続廃止(同意廃止)のことです。この同意破産手続廃止の決定が確定した場合も、当然復権事由となります。
同意廃止とは、破産債権届を提出した破産債権者全員の同意を得ている場合などに、破産者の申立てによって破産手続が廃止(打ち切り)になることを言います。
この同意廃止決定が確定するのも、官報公告後2週間が経過した場合です。
再生計画認可決定の確定
破産手続の途中で民事再生手続が開始され,その民事再生手続において「再生計画認可決定が確定したとき」も,当然復権事由となります。
再生計画認可決定も、官報公告後2週間が経過すると確定します。
破産手続開始決定から詐欺破産罪で有罪確定判決確定を受けることなく10年間を経過した場合
前記の免責許可決定の確定、同意廃止決定の確定、再生計画認可決定の確定がなかった場合でも、破産手続開始決定から10年間、破産法265条の詐欺破産罪で有罪判決の確定を受けることなく過ごすことができれば、当然復権となります。