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自己破産における無償行為否認とは?

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自己破産における破産管財人の否認権の類型の1つに無償行為否認があります(破産法160条3項)。

無償行為とは,破産者が相当対価を得ないで財産を減少させ,または債務を負担する行為をいいます。この無償行為または無償行為と同視できるような有償行為は破産管財人による否認権行使の対象となる場合があります。

無償行為否認とは?

破産法 第160条

  • 第3項 破産者が支払の停止等があった後又はその前6月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。

否認権の類型の1つに「無償行為否認」と呼ばれる類型があります。これは,文字どおり,「無償行為」を否認するというものです(破産法160条3項)。

債務を負っている以上,財産があるならば,まず債務の弁済に充てるべきです。

支払いができなくなりそうな状態であるにもかかわらず,無償で財産を処分されてしまっては,債権者としてはたまりません。ただであげるくらいなら自分に支払ってくれと言いたいところでしょう。

このように,支払停止になる前後の無償行為というものは債権者を害する程度の大きい行為であるといえます。

また,相手方はそもそもただで財産をもらっています。ですから,仮に後に否認されてその財産を取り戻されたとしても,大きな不利益は受けません。

したがって,悪意でなければ否認できないとするほどの必要もないといえます。

そのため,無償行為の場合には,詐害意思や受益者の悪意などの要件が必要とされず,通常の詐害行為否認や偏頗行為否認に比べて,非常に緩やかな要件で否認が認められているのです。

この無償行為否認は,上記のとおり,危機時期前後の無償行為自体が詐害性の強いものであるために認められるものであることから,詐害行為否認の一種とされており,条文の位置も,詐害行為否認と同じ破産法160条に定められています。

この詐害行為否認の対象となる要件は,以下のとおりです。

無償行為否認の要件
  • 破産者の行為であること
  • 無償行為またはこれと同視すべき有償行為であること
  • 支払停止またはその前6月以内にしたものであること

破産者の行為であること

無償行為否認の対象とされる行為は,破産者の行為に限られます。第三者の行為では,無償行為否認の対象になりません。

無償行為及びこれと同視すべき有償行為をしたこと

「無償行為」とは,破産者が相当対価を得ないで財産を減少させ,または債務を負担する行為をいいます。要するに,ただで財産をあげてしまったり,ただで借金を肩代わりしてあげてしまったりするということです。

「有償行為」とは,無償行為とは反対に,相当対価を得て財産を減少させ,債務を負担する行為のことをいいます。

そして,この有償行為のうちでも,無償行為と同視できるような場合には無償行為否認の対象となります。

無償行為と同視すべき有償行為とは,要するに,ただ同然で財産を処分してしまったと言える場合のことです。

支払の停止等があった後又はその前6月以内であること

前記の無償行為等があれば,ただちに無償行為否認の対象となるというわけではありません。時期的な制限があります。

それが「支払の停止等があった後又はその前6月以内」です。つまり,その期間内になされた無償行為等のみが,無償行為否認の対象となるわけです。

支払停止の具体例としては、例えば、2回目の手形不渡りによる銀行取引停止処分を受けた場合や、弁護士等が債権者に受任通知を送付して支払いを停止した場合などがあります。

この支払停止等をした後または支払停止等をする前の6か月間以内の間に無償行為等をした場合に、無償行為否認の対象となります。

もっとも,それ以外の時期の無償行為であっても,詐害意思があり,相手方が悪意である場合には,他の類型の詐害行為否認の対象となることはあります。

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