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自己破産すると家具・家電・家財道具も処分されてしまうのか?

自己破産の画像
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家具・家電・家財道具の多くは、差押禁止財産とされていますから、自己破産しても自由財産となり処分されません。差押禁止でない家財道具も、各裁判所では自由財産として扱うことが多いでしょう。そのため、家具・家電・家財道具は、よほどの高級品でもない限り、処分の対象にならないのが通常です

自己破産における家具・家電・家財道具の取扱いの原則

破産法においては、差押禁止動産は自由財産となり、破産財団に組み入れられることはありません。したがって、差押禁止動産は、自己破産しても破産者が保有し続けることができます(破産法34条3項2号)。

そして,民事執行法第131条第1号によれば,「債務者等の生活に欠くことができない衣服,農具,家具,台所用具,畳及び建具」は差押禁止財産(差押禁止動産)とされています。

したがって,上記の「生活に欠くことができない家具」は自由財産となりますから,これらは自己破産しても破産者が持っておくことができるのです。

ちなみに,どのような家具・家電が差押禁止の対象となる「生活に必要不可欠な家具」といえるかについては,少し古い基準ですが,東京地裁民事第21部(民事執行部)から「差押禁止動産目録」という基準が示されており,これが参考になるでしょう。

差押禁止動産目録記載の家具は,以下のものです(但し,※印の物が数点ある場合には1点のみ差押禁止。2点以上ある場合には,高額な方が差押えの対象となります。)

東京地裁民事21部の差押禁止動産目録
  • 整理タンス
  • 洗濯機(乾燥機付きを含む)※
  • ベッド
  • 洋タンス
  • 調理用具
  • 食器棚
  • 食卓セット
  • 鏡台※
  • 冷蔵庫(容量を問わない)※
  • 電子レンジ(オーブン付きを含む)※
  • 瞬間湯沸し器※
  • ラジオ※
  • テレビ(29インチ以下)※
  • 掃除機※
  • エアコン※
  • 冷暖房器具(エアコンを除く)
  • ビテオデッキ※

この基準に挙げられている財産は,破産手続上も自由財産として扱われることになります。したがって、自己破産しても処分は不要です。もっとも,この基準自体が古いものなので,現在では,異なっていると思われます。

各地方裁判所における家具・家電・家財道具の取扱い

前記のとおり、差押禁止動産に該当する家具・家電・家財道具は、自己破産しても自由財産となり処分しなくて済みます。

東京地方裁判所では、「生活に欠くことができない家具」が自由財産であることを前提としつつ、さらに,個人破産の財産換価基準において「家財道具」について自由財産の拡張を認めています。

家具と家財道具とで何が違うのか,という気がしないでもないのですが,家財道具をあえて自由財産拡張の対象としていることからすれば,ここでいう家財道具は,「生活に欠くことができない家具」を包含したより広い概念であると考えることができます。

つまり,自由財産拡張のなされる家財道具とは,「生活に欠くことができない家具+α」,具体的には,債務者の生活に欠くことができない必要最低限度の家具だけでなく,家庭で利用する物一般をも家財道具として保護しているものであると考えることができます。

もちろん限度はあります。どんな物でも家庭で利用している限り自由財産となるというのは不都合です。やはり,あまりに高価なものは,換価処分の対象となる可能性があります。

アンティークの家具や高級家電などで,売れば何十万円もするようなものは,上記の自由財産となる家財道具とは言えないでしょう。

具体的な金額で言うならば、引継予納金を賄える程度の価値のあるもの、20万円を超える価値のあるような家財道具(複数あればその合計)は,家庭で利用している物であっても,換価処分の対象となると考えられます。

もっとも,今まで家財道具が換価処分されたという話はほとんど聞いたことがありません。

この東京地裁の換価基準は、関東近県の裁判所でも採用されています。また、そうでない裁判所でも、処分見込額が20万円以下の家財道具については、自由財産の拡張を認めているところが多いでしょう。

したがって、差押禁止動産に該当するか否かにかかわらず、家具・家電・家財道具は、自己破産しても処分されないのが通常であると言ってよいでしょう。

家具・家電・家財道具と同時廃止の関係

同時廃止となるのは,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。

したがって,生活に欠くことができない家具以外の家財道具と他の財産を併せても,破産手続費用を支払うのに足りない場合には,同時廃止となります。

さらに,東京地裁など多くの裁判所では,家財道具全般が自由財産として扱われますから,これらは破産財団に組み入れられないことになります。

そのため,家財道具以外の財産で破産手続費用を支払うのに不足する場合には,同時廃止となります。

たとえば,破産手続開始時に処分見込額が15万円の家具以外の家財道具とそれ以外に10万円の財産を持っていたとします(他の財産・免責不許可事由は無いものとします。)。

この場合,破産法の原則でいくと,合計で25万円の財産があることになるので,同時廃止とはなりません。

しかし,東京地裁などの基準でいくと,家財道具は自由財産となり破産財団に組み入れられませんから,破産財団としては10万円しか無いということになります。

したがって,20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので,同時廃止となります。

ただし,これはあくまで「運用」です。場合によっては,財産が25万円あると判断されて,管財手続(個人の自己破産の場合は、通常は少額管財)となるということも無いとは言えませんので確認は必要でしょう。

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