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過払い金の利息の発生時期はどの時点?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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過払金の利息は,個々の返済によって過払金が生じた時から発生すると解されています(最二小判平成21年9月4日・平成21年(受)1192号)。

過払い金(過払金)の利息の発生

貸金業者が,利息制限法の制限利率に違反する高利で貸付を行っていた場合,支払った利息の制限超過部分は元本に充当されます(最大判昭和39年11月18日)。

計算上元本が完済となった後もなお返済が継続されたときは,借主は,貸金業者に対して,その払い過ぎた金銭を「過払金」として返還請求することができます。

この過払金の返還を求める権利は,法的に言うと「不当利得返還請求権」です(民法703条)。

貸金業者は,利息制限法に違反する本来であれば受け取れないはずの制限超過利息を受け取っていたのですから,不当な利得であることは疑いありません。

この不当利得がある場合,損失を受けた側の人(損失者)は,利得した受益者に対して,不当利得のうち現存するものだけしか返還請求できないのが原則です。

しかし,利得者が「悪意の受益者」である場合には,不当利得の全額に加えて,利息も付けて返還するように請求できます(民法704条)。

したがって,貸金業者が「悪意の受益者」である場合,過払い金に利息を付けて返還するように請求できます。

貸金業者が悪意の受益者でないと判断されるケースはあまりありません。そのため、過払い金が発生している場合、利息も一緒に請求できると考えておいて問題ないでしょう。

過払い金の利息の発生時期に関する考え方

前記のとおり,貸金業者が「悪意の受益者」である場合、過払い金に利息を付けて返還するよう請求できます。

そして,不当利得返還請求においては、悪意の受益者が利得した場合、その利得した時点から利息が発生します。

そのため、貸金業者が「悪意の受益者」に該当する場合、過払い金の利息も、貸金業者が制限超過利息を受け取った時に発生すると考えられます。

もっとも,貸金業者との取引は,継続的な金銭消費貸借取引であるという特殊性から,この過払金の利息の発生時期について,個々の返済によって過払いが生じた時からとするのか,それともすべての取引が終了した時からとするのかという議論があります。

個々の返済時からとする見解

不当利得の利息は、利得者が悪意の受益者となった時から発生します。したがって,過払い金の利息も、貸金業者が悪意の受益者となった時からと考えるのが原則です。

そして,貸金業者の場合、特段の事情のない限り悪意の受益者に該当するため、個々の返済金を受領して過払い金が発生した時に利息も発生するとの考え方があります。

個々の返済の時から利息が発生することになると、当然、過払い金の利息の額は大きくなります。過払金利息も過払金元本と同様、順次借金に充当されるので、それだけ借金の減りも早くなり、ひいては過払い金元本の金額も大きくなるのです。

したがって、過払金利息の発生時期を個々の返済時と考える説は、消費者・借主側に有利といえるでしょう。

取引終了時からとする見解

他方,貸金業者側からは,取引終了時から利息が発生すると考えるべきと主張されていました。

過払金返還請求権の消滅時効の起算点である「権利を行使することができる時」が取引終了時であると解されていることとの整合性を理由としています。

※なお,民法改正(令和2年4月1日施行)により,消滅時効は「権利を行使することができる時から10年間」または「権利を行使することができることを知った時から5年間」のいずれか早い方で完成するものとされました。

過払い金の利息の発生時期に関する実務

前記のとおり、過払い金の利息の発生時期については2つの考え方がありました。

この点について、最高裁判所第二小法廷平成21年9月4日判決(平成21年(受)1192号・ 集民第231号477頁)は、個々の返済によって過払い金が発生するごとに利息も発生するとの判断を示しました。

過払金返還請求権の消滅時効との整合性についても、消滅時効の起算点と利息の発生時期は別の問題であるから,利息の発生時期を取引終了時としないからといって整合性が取れなくなるわけではないと判断されています。

したがって,過払い金の利息の発生時期は,個々の返済によって過払い金が発生した時であり、過払金が発生する都度,利息も発生すると考えておいて問題ありません。

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