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過払金が発生した時に過払金の利息も発生するとした最高裁判所第二小法廷平成21年9月4日判決とは?

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過払い金の利息の発生時期の問題について判断をした判例として,最高裁判所第二小法廷平成21年9月4日判決があります。

同判決では,過払金返還請求権の消滅時効の起算点である「権利を行使できる時」を取引終了時であるとしつつも,過払金の利息は,個々の返済により過払金が生じた時から発生すると判示しています。

過払い金の利息の発生時期

過払い金返還請求権も,法的には不当利得返還請求権ですから,貸金業者が悪意の受益者に当たる場合には,過払い金に利息を付して返還するように請求できます民法703条、704条)。

もっとも,貸金業者が悪意の受益者に当たるとして,この過払金の利息どの時点から発生するのかというのは,また別の問題になってきます。

この問題については,個々の支払いによって過払い金が発生する都度,その時から過払い金に対する利息も発生するという考え方と,取引が終了した時から,その時点において発生した過払い金全体に対して利息も発生するという考え方があります。

この点,最高裁判所第一小法廷平成21年1月22日判決は,過払い金充当合意を含む基本契約に基づく取引における過払い金返還請求権の消滅時効の起算点である「権利を行使することができる時」とは,取引終了時であるという判断しました。

つまり,一連充当計算できる取引の場合,個々の支払いにより過払い金が発生する都度,個別に消滅時効が進行するというのではなく,取引が終了した時から,その時点において発生していた過払い金全体の消滅時効が進行するという判断をしたのです。

これに対しては,貸金業者から反論がなされました。どのような反論かというと,過払い金の消滅時効の起算点を取引終了時とするなら,過払い金の利息の発生時期も取引終了時からとすべきであるというものです。

つまり,過払い金の利息の発生時期と過払い金の消滅時効の起算点の整合性を問題とするという反論です。

最高裁判所第二小法廷平成21年9月4日判決(集民231号477頁。最二小判平成21年9月4日)は,この貸金業者側からの反論に対して答えています。

※なお,民法改正(令和2年4月1日施行)により,権利を行使することができる時から10年間だけでなく,権利を行使できることを知った時から5年間という期間が設けられ,いずれか早い方が消滅時効期間となるものとされました(民法166条1項)。

最二小判平成21年9月4日の解説

最高裁判所第二小法廷平成21年9月4日判決(集民231号477頁)は,以下のとおり判示しています(一部抜粋)。

金銭消費貸借の借主が利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息の支払を継続し,その制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生した場合において,貸主が悪意の受益者であるときは,貸主は,民法704条前段の規定に基づき,過払金発生の時から同条前段所定の利息を支払わなければならない(大審院昭和2年(オ)第195号同年12月26日判決・法律新聞2806号15頁参照)。このことは,金銭消費貸借が,貸主と借主との間で継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返される旨の基本契約に基づくものであって,当該基本契約が過払金が発生した当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであった場合でも,異なるところはないと解するのが相当である。

引用元:裁判所サイト

最二小判平成21年9月4日は,かなり古い判例ですが大審院昭和2年12月26日判決を引用し,利息制限法所定の制限利率を超える利息を支払い続けた結果,過払い金が発生した場合には,その過払い金発生時から利息を支払わなければならないと判示しました

つまり、過払い金の利息の発生時期について、貸金業者が主張するような取引終了時とするのではなく、個々の返済によって過払い金が発生した時に利息も発生することを明らかにしたのです。

そして,その上で,過払い金充当合意が認められる継続的な金銭消費貸借取引,つまり,一連充当計算のできる取引の場合であっても,過払い金発生時から利息を支払わなければならないことに変わりはないという判断を示しました。

過払い金の消滅時効は、取引終了時からと解した方が、消滅する過払い金が少なくなります。これに対して、過払い金発生時から個別に発生すると解した方が,期間が長くなり利息も大きくなるので,消費者に有利です。

つまり,最高裁判所は,前記最一小判平成21年1月22日では消滅時効の起算点は取引終了時としつうつも,この最二小判平成21年9月4日では過払い金の利息の発生時期は個々の過払い金発生時とすることで,いずれの場合にも,消費者側に有利な判断をしているということがいえます。

ただし、この前提となる、過払い金充当合意があるかどうかについては、最二小判平成20年1月18日などのように、消費者に不利な判断もしているので、消費者に明らかに有利といえるような判断ばかりをしているわけではありません。

実務に与えた影響

この最二小判平成21年9月4日によって、個々の返済によって過払金が発生するたびに、過払金の利息も発生することが確定しました。現在では、この点について争いは無いと言ってよいでしょう。

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