
令和2年(2020年)3月31日以前に発生した過払金利息の利率は,年5パーセントです(改正民法附則15条1項,改正前民法404条)。他方,令和2年(2020年)4月1日以降に発生した過払金利息の利率は,年3パーセントです。
過払い金の利息の利率
貸金業者が「悪意の受益者」に該当する場合、その貸金業者に対し、過払い金の全額だけでなく,それに利息をつけて返還するように請求できます(民法703条、704条)。
利息は元本に対する一定の割合(利率)という形で金額が算出されることになりますが,過払い金の利息の場合には利率を何パーセントと考えるべきかが問題となってきます。
過払い金の返還を請求する権利(過払金返還請求権)は,法的にいうと不当利得返還請求権です。
この不当利得返還請求権の利息は,法律上当然に発生する利息(法定利息)であり,契約に基づいて発生する債権ではありません。
したがって,あらかじめ利率をどのくらいにしておくかということ(約定利率)を定めておくことができないので,法定利率が適用されることになります。
民法改正により,現在の法定利率は,元金に対する年3パーセントの割合となりました(民法404条2項)。
もっとも,改正民法施行日(令和2年4月1日)よりも前に発生した利息については,改正前の法定利率が適用されます(改正民法附則15条1項)。
令和2年(2020年)3月31日以前に発生した過払金利息の利率
前記のとおり,令和2年(2020年)4月1日よりも前に発生していた過払金の利息については,民法改正前の法定利率が適用されます。
民法改正前には,民法で定める法定利率(民事法定利率)以外に,商法でも,商行為によって生じた債権について用いられる特別の法定利率(商事法定利率)が設けられていました。
民事法定利率は,元本に対する年5分(5パーセント)の割合でしたが,商事法定利率は元本に対する年6分(6パーセント)の割合とされていました。
消費者側からすれば商事法定利率を適用した方が有利ですし,他方,貸金業者側からすれば民事法定利率を適用した方が有利なります。そのため,どちらを過払金利息の利率とするのかは争点の1つになっていました。
この点については,最高裁判所第三小法廷平成19年2月13日判決(最三小判平成19年2月13日)で,過払金の利息の利率には民事法定利率年を適用するという判断がなされています。
商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分と解するのが相当である。なぜなら,商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ,上記過払金についての不当利得返還請求権は,高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないので,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである。
引用元:裁判所サイト
実務では,過払金の利息の利率は民事法定利率年5パーセントを適用するということで定着していたといってよいでしょう。
したがって,令和2年(2020年)4月1日より前に発生していた過払い金の利息の利率は,年5パーセントとして計算することになります。
令和2年(2020年)4月1日以降に発生する過払金利息の利率
前記のとおり,民法改正により,令和2年(2020年)4月1日以降に発生する利息の法定利率は,年3パーセントの割合になりました。
したがって、最初に過払い金が発生したのが令和2年(2020年)4月1日以降であれば、過払金利息の利率は年3パーセントとなります。
問題となるのは、令和2年3月31日以前から取引をしていて、令和2年4月1日より前の時点ですでに過払金が発生しており、その後も返済を続けていたため、令和2年4月1日以降にも過払金が発生し続けている場合です。
この場合、令和2年4月1日より前に発生した過払い金の利息の利率は5パーセントです。しかし、同日以降に発生した過払い金の利息の利率は、そのまま年5パーセントのままでよいのか、それとも年3パーセントに変更すべきなのかが問題となってきます。
過払金の利息は,個々の返済により過払金が生じた時に発生すると解されていますから(最二小判平成21年9月4日)、素直に考えると、令和2年4月1日以降にした返済によって発生する過払金利息の利率は、年3パーセントの割合ということになりそうです。
もっとも,過払金は,過払金充当合意を含む基本契約に基づいて取引を一連のものとして充当計算することにより算定されるものです。
したがって、令和2年4月1日よりも前の時点で一度でも過払金利息が発生した場合には、それと一連の取引である限り、それ以降に発生する利息の利率はすべて年5パーセントの割合になると考えることも可能ではあります。
いずれにしても,今後は,令和2年4月1日をはさんで過払金が発生し続けている場合に、同日以降に発生する利息の法定利率を年5パーセントから3パーセントに変更すべきなのかという点が新しい争点になってきます。この点については、まだ最高裁判例はありません。
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参考書籍
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Q&A過払金返還請求の手引: サラ金からの簡易・迅速な回収をめざして(第5版)
編集:名古屋消費者信用問題研究会 出版:民事法研究会
過払金返還請求の教科書のような本。やや古いので判例や論点のアップデートは必要ですが、過払金返還請求を知るためには、よい本です。
過払金返還請求・全論点網羅(2017)
監修:名古屋消費者信用問題研究会 出版:民事法研究会
タイトルどおり、過払金返還請求に関するほとんどの論点を網羅している実務の解説書。ただし、最新の判例などのアップデートは必要です。
実務裁判例 過払金返還請求訴訟
著者:輿石武裕 出版:日本加除出版
簡易裁判所裁判官による過払金返還請求の裁判例解説書。最高裁判例だけでなく下級審裁判例も多く掲載。ただし、こちらも古い本なのでアップデートが必要です。
要件事実マニュアル第4巻(第7版) 消費者保護・過払金・行政・労働
編集:岡口基一 出版:ぎょうせい
岡口元裁判官による実務家に人気の要件事実の解説書。第4巻には、過払金返還請求の要件事実についても解説されています。