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過払い金の利息はどの時点から発生するのか(発生時期)?

過払い金の画像
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過払金の利息は,個々の返済によって過払金が生じた時から発生すると解されています(最二小判平成21年9月4日)。

過払い金(過払金)の利息の発生

貸金業者等が,利息制限法の制限利率に違反する高利で貸付を行っていた場合,その制限超過部分はまず元本等に充当され,計算上元本が完済となった後もなおが返済が継続されたときは,借主は,貸金業者に対して,その払い過ぎた金銭を「過払金」として返還請求することができます。

この過払金の返還を求める権利は,法的に言うと「不当利得返還請求権」です。

貸金業者は,利息制限法に違反する本来であれば受け取れないはずの制限超過利息を受け取っていたというのですから,不当な利得であることは疑いありません。

この不当利得がある場合,損失を受けた側の人(損失者)は,利得者に対して,不当利得のうち現存するものだけしか返還請求できないのが原則です。

しかし,利得者が「悪意の受益者」である場合には,不当利得の全額に加えて,利息も付けて返還するように請求できます。

したがって,貸金業者が「悪意の受益者」であるといえる場合には,過払い金に利息を付けて返還するように請求できます

貸金業者が「善意」であるといえる場合とすると,みなし弁済(制度自体はすでに廃止)が有効に成立していた場合程度しか考えられません。

しかし、実際にみなし弁済が成立することはほとんどありえません(最二小判平成18年1月13日)。したがって、貸金業者が「善意」、すなわち「悪意の受益者」に当たらないということは,ほとんどないでしょう。

したがって,基本的に,過払い金が発生している場合には,利息も一緒に請求できると考えておいて間違いはないでしょう。

過払い金の利息の発生時期に関する考え方

前記のとおり,貸金業者が「悪意の受益者」である場合には,過払い金に利息を付けて返還するよう請求できます。

そして,不当利得返還請求においては,利得者が「悪意の受益者」として利得した場合,その時点から利息が発生することになります。

基本的に,貸金業者は「悪意の受益者」に当たると考えられますから,過払い金の利息も,貸金業者が制限超過利息を受け取った時に発生すると考えることができます。

もっとも,貸金業者との取引は,継続的な金銭消費貸借取引であるという特殊性から,この過払金の利息の発生時期について,個々の返済によって過払いが生じた時からとするのか,それともすべての取引が終了した時からとするのか,という議論があります。

個々の返済時からとする見解

不当利得の利息は,利得者が悪意の受益者となった時から発生します。したがって,過払い金の利息の場合も,貸金業者が悪意の受益者となった時からとするのが原則です。

そして,貸金業者は基本的に悪意の受益者といえるので,個々の返済金を受領して過払い金が発生した時に利息も発生するというのが,この考え方です。

個々の返済の時から利息が発生するということになると、当然、過払い金の利息の額は大きくなります。また、過払金利息も過払金元本と同様、順次借金に充当できますので、それだけ借金の減りも早くなり、ひいては過払い金元本の金額も大きくなります。

したがって、過払金利息の発生時期を個々の返済時と考える説は、消費者・借主側に有利といえるでしょう。

取引終了時からとする見解

他方,貸金業者側からは,取引終了時から利息が発生すると考えるべきとの主張がなされていました。

過払金返還請求権の消滅時効の起算点である「権利を行使することができる時」が取引終了時であると解されていることとの整合性を理由としています。

※なお,民法改正(令和2年4月1日施行)により,消滅時効は「権利を行使することができる時から10年間」または「権利を行使することができることを知った時から5年間」のいずれか早い方で完成するものとされました。

過払い金の利息の発生時期に関する実務

この過払い金の利息の発生時期については,前記のとおり,2つの考え方がありました。

この点について、最高裁判所第二小法廷平成21年9月4日判決(平成21(受)1192号・ 集民第231号477頁)は、個々の返済によって過払い金が発生するごとに利息も発生するとの判断を示しました。

過払金返還請求権の消滅時効との整合性についても,上記判例によって,消滅時効の起算点と利息の発生時期は別の問題であるから,利息の発生時期を取引終了時としないからといって整合性が取れなくなるわけではないという判断がなされています。

したがって,過払い金の利息の発生時期は,個々の返済によって過払い金が発生した時であり、過払金が発生する都度,利息も発生すると考えておいて問題ないでしょう。

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