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クオークローン(クラヴィス)からプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)への過払い金返還債務の承継は認められるか?

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過払い金返還債務の承継が問題となった事例の1つに、クラヴィス(クオークローン・タンポート・ぷらっと)からプロミス(現SMBCコンシューマーファイナンス)への資産譲渡契約の問題があります。

クラヴィスからプロミスへの資産譲渡契約

かつて、消費者金融プロミス(現在の「SMBCコンシューマーファイナンス株式会社」)には、シンコウ、リッチ、東和商事という3つの子会社(いずれも貸金業)がありました。

これらの3社は、後に、「ぷらっと」として1つの会社に合併され、さらにその後、商号を「クオークローン」に変更し、親会社であるプロミスと同じく消費者金融業を行っていました。

平成19年、このクオークローンは貸金業を廃業します。その際、クオークローンは、親会社であるプロミスとの間でグループ再建の基本合意を取り交わし、有していた貸金債権をプロミスに移行させました。

この貸金債権移行の方法として、契約の切替と債権譲渡の2つの方法がとられています。基本的には契約の切替を顧客に勧め、これに応じなかった顧客の債権については、債権譲渡の方式を用いたようです。

このクオークローンは「タンポート」と商号を変更し、平成21年にプロミスからネオライングループに売却されて商号を「クラヴィス」に変更しました。その後、さらに経営が悪化し、平成24年7月5日に破産手続を開始しています。

クラヴィスも、やはり利息制限法違反の約定利率で取引をしていたため、同社に対し、過払い金が発生している場合があります。

したがって、その過払いは、クラヴィスに対して過払い金返還請求をするのが原則ということにはなるでしょう。

しかし、上記のとおり、クラヴィスはすでに破産しており、同社に対して過払い金返還を請求しても、回収はほとんど不可能であるというのが現状です。

そこで、クラヴィス(クオークローン)から貸金債権の移行を受けたプロミスに対して、クラヴィス(クオークローン)の過払い金返還債務をプロミスが承継したものとして、過払い金返還を請求できないかが問題となってきます。

切替事案

前記のとおり、クオークローンからプロミスへの貸金債権の移行の方法の1つに、契約の切替という方法があります。これを一般に「切替事案」と呼んでいます。

契約の切替とは、まず、クオークローンが、顧客(債務者)に対し、プロミスへの契約の切替を勧めます。

顧客は、その勧誘に従い、プロミスからクオークローンに対する約定残高と同額を借入れ、それをそのままクオークローンに返済する形にします。そして、顧客は、以降、プロミスに返済していくことになります。

これによって、貸金債権をクオークローンからプロミスへと移行させるのが、契約の切替方式です。

この切替事案の場合、形式的にみると、プロミスから新規借入れをしていることになりますから、クラヴィスとの取引とプロミスとの取引は別物のように見えます。

しかし、実際には、クラヴィスとの取引がプロミスにそのまま移行したというものにすぎません。したがって、その取引で過払いが発生するのであれば、プロミスも責任を負担するのが道理でしょう。

この点について判断をしたのが、最高裁判所第二小法廷平成23年9月30日判決です。

同判決は、この切替契約について、以下のような判断をしています。

  • 形式上はプロミスからの借入金でクラヴィスに完済し、以降はプロミスに対してその借入金を返済する新たな取引ではある。
  • しかし、クラヴィスとプロミスとの間の業務提携契約の内容や切替契約の申込みの勧誘の態様などからすれば、プロミスがクラヴィスの過払金返還債務を承継または引きうけたとみるのが合理的である。
  • 顧客もそのように解釈して切替に応じている。
  • 切替の手続もプロミスとクラヴィスとの間の会計処理によってなされた形式的なものにすぎず、プロミスが過払金返還債務を承継することを合意していたと言える。
  • 顧客がこれに応じたことで、第三者のためにする契約における受益の意思表示をしたものといえるから、その後にクラヴィス・プロミス間で債務承継はしない旨の変更合意をしたとしても、その変更は効力を生じない。
  • クラヴィス・プロミスの取引は一連一体の取引として扱われるので、プロミスはその一連計算によって算定される過払金の返還債務を負う。

結論的には、切替契約の場合には、クラヴィスとプロミスとの取引を一連計算して、それによって算出した過払金をプロミスに返還請求することができるとしました。

したがって、クオークローンからプロミスへの切替事案については、過払い金返還債務の承継が認められたということです。

債権譲渡事案

前記のとおり、クオークローンからプロミスへの貸金債権の移行については、契約切替のほかに、債権譲渡によって移行された場合があります。これを一般に「債権譲渡事案」と呼んでいます。

こちらは、単純に、クオークローンからプロミスに対して貸金債権を譲渡するという方法です。上記切替に応じなかった顧客に対する貸金債権については、この債権譲渡が用いられたようです。

債権譲渡事案も、切替契約と同様、実質的にみれば、クオークローンの取引をそのままプロミスが引き受けたものにすぎず、やはり、プロミスもその取引によって発生した過払い金返還の責任を負担すべきと考えるのが妥当です。

しかし、最高裁判所は、債権譲渡事案については、プロミスへの過払い金返還債務の承継を認めませんでした。それが、最高裁判所第二小法廷平成24年6月29日判決です。

同判決は、債権譲渡の場合、切替と異なり、顧客の意思にかかわらずクオークローンとプロミスとの間で債権譲渡がなされただけであるから、切替事案と同様に考えることはできないとしました。

そして、貸金債権が譲渡されたからといって過払い金返還債務も当然に承継されたとはいえないとし、また、顧客も、単に弁済をしただけで、切替事案と異なり切替に応ずるなどの受益の意思表示をしていないから、やはり、過払い金返還債務の承継は認められないという判示をしました。

むしろ、顧客に何の意思表示等の機会も与えられない債権譲渡事案こそ、何らかの救済策が検討されるべきとも思えますが、最高裁は、債権譲渡という形式を重視して、過払い金返還債務の承継を否定しています。

したがって、クオークローンからプロミスへの債権譲渡事案については、過払い金返還債務の承継が認められることは難しくなったといえるでしょう。

まとめ

前記のとおり、クオークローンからプロミスへの貸金債権移行の形態には、切替の場合と債権譲渡の場合とがあります。そして、この切替事案と債権譲渡事案では、承継の可否が異なっています。

前記各判例のとおり、切替事案においては過払い金返還債務の承継が認められ、他方、債権常時案では過払い金返還債務の承継が否定されています。

したがって、クオークローンからプロミスへの過払い金返還債務の承継を争う場合には、各自の移行の態様が、切替の場合に当たるのか、それとも債権譲渡の場合に当たるのかを調べておく必要があるでしょう。

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