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マルフクからCFJへの過払い金返還債務の承継は認められるか?

過払い金の画像
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過払い金返還債務の承継が問題となった事例の1つに、マルフクからCFJへの資産譲渡契約の問題があります。

いずれの業者もすでに貸金業登録を解除しているような業者であるため、現在、この事例が問題となることはほとんどないと思われますが、参考として説明します。

マルフクからCFJへの資産譲渡契約

かつて、「株式会社マルフク」という貸金業者がありました。もっとも、現在では、すでに貸金業登録はなされておらず、会社の実態もほとんどないというような状態になっているようです。また、「CFJ合同会社」も、現在ではすでに貸金業登録は解除されています。

したがって、本件と同様の事例が、今後問題となることはほとんどないと思われますが、参考として、以下説明します。

このマルフクは、経営悪化などの理由からか、平成14年に、その有する資産をディックファイナンス株式会社(現在の「CFJ合同会社」)に売却しました。

この売却資産のうちには、顧客に対する貸金債権も含まれていました。

このマルフクも、やはり利息制限法違反の約定利率で取引をしていたため、同社に対し、過払い金が発生している場合があります。

したがって、マルフクに対して過払い金返還請求をするのが原則ということにはなるでしょう。

しかし、上記のとおり、マルフクはすでに廃業状態で、同社に対して過払い金返還を請求しても、回収が著しく困難または不可能であるというのが現状です。

そこで、マルフクから貸金債権も含めて資産を譲り受けたCFJに対して、上記マルフクの過払い金返還を請求できないか、すなわち、マルフクの過払い金返還債務をCFJが過払金返還債務を承継したものとして扱うことができないかということが問題となっていたのです。

補足

なお、現在、CFJもすでに貸金業登録を解除しているため、CFJに対して過払い金返還請求ができたとしても、実効性には疑問があります。あくまで、過去の時点で、CFJに対して過払い金返還請求した方がマルフクに請求するよりも実効性があったということが前提となっています。

消費者側の主張

マルフクは、CFJに対して、平成14年に貸金債権を含む資産を売却しています。

貸金債権といっても、引き直し計算がなされていないものも含まれています。仮に、引き直し計算をすれば過払いとなっているようなものも含めて、貸金債権として資産譲渡の対象とされていたのです。

しかし、本当であれば過払いとなっているようなものは、法律上残高があるとはいえないのですから、貸金債権どころか過払い金返還債務です。

そこで、消費者側は、本来は過払いとなるはずの貸金債権をCFJは引き受けているのであるから、過払い金返還債務も引き受けるべきであるという主張をすることになります。

つまり、貸金の残高が残るのか、それとも、過払いとなるのかは、同じ取引に基づくもので表裏一体のものであるから、分けて考えるべきではなく、貸金債権(という形で)の譲渡を受けた以上、後に引き直し計算の結果、それが実は過払いであったとしても、その譲受会社は、過払い金返還債務の承継すると考えるべきであるという主張をするということです。

最高裁判所の判断

前記マルフクからCFJへの過払金返還債務の承継の可否について、最高裁判所から平成23年7月に2つの判例が出されました。2つの判例とは、以下の2判例です。

これらの判決の内容は、タイヘイからCFJへの過払金返還債務の承継が問題となった最高裁判所第三小法廷平成23年3月22日判決(最三小判平成23年3月22日)を踏襲するものとなっています。

これら3つの判例は、どれも同様の判断をしています。具体的には、以下のとおり判示しています。

「貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において、譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは、上記合意の内容いかんによるというべきであり、それが営業譲渡の性質を有するときであっても、借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転する、あるいは、譲受業者が上記金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務を上記譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない。

引用元:裁判所サイト

つまり、簡単に言えば、マルフク(またはタイヘイ)との取引で過払金が発生していたとしても、CFJがその過払金返還債務まで承継するものではないということです。

3月22日判決はタイヘイからの承継であり、マルフクからの承継の事案である7月7日判決や7月8日判決とは事案が異なります。

しかし、いずれも譲受会社がCFJです。また、タイヘイとCFJとの間の譲渡契約とマルフクとCFJとの間の譲渡契約とがほとんど同じものでした。

その上で、最高裁判所の第一小法廷から第三小法廷まですべての小法廷において同じ判断がなされていることからすると、マルフク・タイヘイからCFJへの過払金債務の承継は、最高裁によって、原則として、否定されたとみることができるでしょう。

ただし、上記各判例は、あくまで「合意の内容いかんによる」とし、過払金返還債務が「貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない」と判示しているにすぎません。

したがって、これらの判例は、マルフク・タイヘイからCFJへの承継とは別の事案にそのまま当てはめることによって一般的に過払金返還債務の承継は認められないとするものではありません。

また、貸金債務と一体のものであるから承継するという理由づけ以外の理由で過払金返還債務の承継が認められる場合もあるということを示唆しています。

もっとも、その後、CFJが過払い金返還債務の承継を拒否するのは権利の濫用であるなどの主張もなされましたが、最高裁は、上記と同様の判断基準をもってその主張を排斥しています。

そうすると、やはり、マルフクからCFJへの過払金返還債務の承継が認められるのは困難であるという点は間違いないでしょう。

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