この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生の再生計画が認可されると、借金などの債務は、減額された上で、再生計画認可決定確定日から3年間の分割払いになります。「特別な事情」がある場合には、再生計画認可決定確定日から5年を超えない範囲で弁済期間を延長してもらえる場合もあります。
個人再生における分割払い
個人再生(個人民事再生)の再生計画が認可されると、再生計画の内容にもよりますが、借金などの債務を減額してもらえます。場合によっては、10分の1まで減額されることもあります。
もっとも、個人再生のメリットは、再生計画が認可されることによって借金などの債務を減額できることだけではありません。
減額の上に、さらに、その減額された債務を分割払いにしてもらうことができます。一括で支払う必要がなくなるのです。
分割払いの期間
民事再生法 第229条
- 第2項 再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予については、前項の規定により別段の定めをする場合を除き、次に定めるところによらなければならない。
- 第1号 弁済期が3月に1回以上到来する分割払の方法によること。
- 第2号 最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から3年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から5年を超えない範囲内で、3年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
民事再生法 第244条
- 第221条第3項から第5項まで、第222条から第229条まで、第232条から第235条まで及び第237条第2項の規定は、給与所得者等再生について準用する。
個人再生の再生計画が認可された場合の分割払いの期間は、原則として、再生計画認可決定確定日から3年間とされています(民事再生法229条2項2号、244条)。
ただし、「特別の事情」がある場合には、分割払いの期間を、5年を超えない範囲で3年を超える期間とすることができるとされています。要するに、5年間まで伸ばしてもらえるということです。
この「特別の事情」がある場合とは、3年間の計画では弁済をしていくことが困難である具体的な事情があるということです。
単に3年間では大変なので5年間にしたいというだけでは「特別の事情」があるとはいえません。
収支から考えて弁済が難しい状況である場合や、弁済期間中に子供の進学などで大きな支出があるため3年間では弁済できないというような事情が必要となります。
ただし、この分割払い期間の伸長については、裁判所でも比較的柔軟な対応がとられています。
分割払いの方法・回数
前記のとおり、個人再生においては、3年間から5年間までの分割払いにすることが可能です。
個人再生における分割払いの方法は、「弁済期が3月に1回以上到来する分割払の方法による」とされています(民事再生法229条2項1号、244条)。
したがって、3か月に1回の支払いペース以内であればよいということになります。ただし、実務上は、月に1回か3か月に1回のどちらかにするのが通常でしょう。
3年間の分割払いの場合、月1回の支払いであれば36回払い、3か月に1回であれば12回払いになります。
5年間の分割払いの場合は、月1回の支払いであれば60回払い、3か月に1回であれば20回払いとなります。
一括払いの可否
個人再生の再生計画が認可されると分割払いが可能となると言いましたが、むしろ、個人再生においては、弁済の方法を分割払いにしなくてはならないと解されています。
前記民事再生法229条2項1号も、分割払いの方法によること以外の定めをしていません。減額されているとはいえ一括払いができるような状態であるのであれば、個人再生をする必要性がないはずだからです。
もっとも、一括払いや繰り上げ返済がされることに対して、債権者が「分割払いにしろ」と異議を述べるとは思えません。
そのため、一括弁済の再生計画を策定することは認められないものの、分割払いで策定した再生計画が認可された後に、一括弁済・繰り上げ弁済することは許されると解する見解もあります。
ただし、債権者平等に反する一括弁済は問題があります。したがって、一括弁済をするのであれば、全債権者に対して一括弁済をする必要があるでしょう。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけれど、どの弁護士を選べばいいのか分からない」
という方は少なくないでしょう。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理・個人再生の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
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・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
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・所在地:東京都墨田区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、個人再生をより深く知りたい方のために、参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。