この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生が成功した場合、月々の支払い額がどのくらいになるのかは、債務額はどのくらいか、持っている財産の価値はどのくらいか、小規模個人再生と給与所得者等再生のいずれの手続を選択するのか、分割払いの期間や支払方法をどのように設定するかなどによって異なってきます。
個人再生による月々の支払い額の変更
個人再生を申し立て、裁判所に債務の減額や分割払いを定めた再生計画を認可してもらえると、債務の減額や分割払いへの変更などを実現できます。
そのため、個人再生が成功すれば、借金などの債務の月々の支払い額は、かなり改善されることが多いでしょう。
もっとも、月々の支払い額がどのくらいになるのかは、債務額はどのくらいか、持っている財産の価値はどのくらいか、小規模個人再生と給与所得者等再生のいずれの手続を選択するのか、分割払いの期間や支払方法をどのように設定するかなどによって異なってきます。
そこで、以下では、月々の支払い額の算出について、債務の減額、分割払いの期間、支払い方法の順に説明します。
借金・債務の減額
月々の返済額は、借金・債務がどのくらい減額されるのかによって異なります。
個人再生によってどのくらい借金・債務が減額されるかは、小規模個人再生と給与所得者等再生のいずれを選択するのかによって算出方法が異なります。
小規模個人再生の場合
小規模個人再生の場合、借金・債務は、最低弁済額と清算価値の額のいずれか高額な方の金額にまで減額されます。
最低弁済額
最低弁済額は、以下の基準によって定められます。
- 無異議債権・評価済債権が3000万円以下
- 基準債権額が100万円未満
→最低弁済額は、基準債権額 - 基準債権額が100万円以上500万円未満
→最低弁済額は、100万円 - 基準債権額が500万円以上1500万円未満
→最低弁済額は、基準債権額の5分の1の金額 - 基準債権額が1500万円以上3000万円以下
→最低弁済額は、300万円
- 基準債権額が100万円未満
- 無異議債権等が3000万円超5000万円以下
→最低弁済額は、無異議債権等の10分の1まで減額
無異議債権や基準債権については、とりあえず借金・債務の金額と考えておいてよいでしょう。
例えば、借金が600万円であれば、債権額が500万円以上1500万円未満ですので、600万円の5分の1の額=120万円が最低弁済基準額となります。
清算価値の額
個人再生においては、再生計画における弁済率が破産における場合の配当率以上でなければならないとする清算価値保障原則が適用されます。
清算価値とは、破産したと仮定した場合の配当額、要するに、持っている財産の価額です。
小規模個人再生における減額率
上記の最低弁済基準額と清算価値の額のいずれか高額な方の金額が、小規模個人再生における返済総額となり、その額まで減額できるということになります。
例えば、借金が600万円、財産の総額が100万円であれば、最低弁済基準額は前記のとおり120万円ですので、財産総額(清算価値の額)よりも最低弁済基準額の方が大きいことになります。
したがって、この場合は、借金600万円を120万円にまで減額できることになります。
他方、借金が600万円、財産の総額が300万円であれば、最低弁済基準額120万円よりも財産総額(清算価値の額)の方が大きいため、借金600万円を300万円までしか減額できないことになります。
給与所得者等再生の場合
給与所得者等再生の場合には、借金・債務は、最低弁済基準額・清算価値の額・可処分所得2年分の額のいずれか高額なものの金額にまで減額されます。
最低弁済基準額と清算価値の額は、小規模個人再生と同じですが、給与所得者等再生の場合には、さらに可処分所得の2年分の額という別の要素も加わってきます。
可処分所得とは、再生債務者の1年分の収入合計額から、これに対する所得税・個人の道府県民税または都民税・個人の市町村民税または特別区民税・社会保険料に相当する額および再生債務者とその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した金額のことをいいます。
この可処分所得の過去2年分の金額と、最低弁済額、清算価値の額とを比べ、3つのうちでいずれか高額なものの金額が、給与所得者等再生における返済総額となり、その額まで減額できるということになります。
例えば、借金が600万円、財産の総額が100万円、可処分所得2年分の額が50万円であった場合、最低弁済基準額は前記のとおり120万円ですので、最低弁済額が最も大きいことになります。
したがって、この場合は、借金600万円を120万円にまで減額できることになります。
借金が600万円(最低弁済基準額120万円)、財産の総額が300万円、可処分所得2年分の額が100万円であった場合は、財産総額(清算価値の額)が最も大きいため、借金600万円を300万円にまで減額できることになります。
借金が600万円(最低弁済基準額120万円)、財産の総額が300万円、可処分所得2年分の額が400万円であった場合は、可処分所得2年分の額が最も大きいため、借金600万円を400万円までしか減額できないことになります。
分割払いの期間
月々の返済額は、借金・債務をどのくらいの期間の分割払いにできるのかによっても異なってきます。
個人再生の場合、減額した債務を原則3年間の分割払いにできます(3年間より短い期間にすることはできません。)。
また、収支状況等から3年間では支払いが厳しいといえる特別な事情がある場合には、分割払いの期間を最長で5年間まで伸ばすことが可能です。
浪費をしているから返済分が足りないというような事情では、期間の伸長はもちろん認められませんが、そうでなければ、比較的、期間の伸長をすべき特別の事情があると認められやすいでしょう。
この分割の期間に関しては、小規模個人再生でも給与所得者等再生でも同じです。
分割払いの方法
月々の返済額は、借金・債務をどのくらいのペースで支払っていくのかによっても異なってきます。
分割払いの期間は、前記のとおり、3年間から5年間です。この間に、毎月支払っていくのか、ボーナス月には多く支払うのか、などによっても、月々の支払い額は異なってくるでしょう。
一般的には、ボーナス払いは使わず、毎月定額払い、または、3か月に1度の定額払いが多いかと思います。
この分割払いの方法については、小規模個人再生でも給与所得者等再生でも同じです。
月々の支払い額の算出手順例
例えば、小規模個人再生を選択し、借金が600万円、財産の総額が200万円であったとします。
まずは、返済総額がいくらまで減額されるかを算出します。
借金が600万円の場合、最低弁済基準額は前記のとおり120万円です。他方、財産総額(清算価値の額)は200万円ですから、最低弁済基準額よりも清算価値の額の方が高額です。
したがって、返済総額は、借金600万円から200万円に減額されることになります。
この上で、分割払いの期間を3年間から5年間のどの程度にするか、支払い方法を毎月払いとするかなどを決めて、月々の支払い額を算出します。
上記200万円の返済額を、3年間・毎月定額払いとすると、月々の支払い額は、5万5555円ほど(端数は初回や最終回の支払いで調整)ということになります。
5年間・毎月定額払いであれば、月々の支払い額は、3万3333円ほど(端数は初回や最終回の支払いで調整)ということになります。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけれど、どの弁護士を選べばいいのか分からない」
という方は少なくないでしょう。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理・個人再生の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、個人再生をより深く知りたい方のために、参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。