この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生においては、再生債務者が提出して再生計画案について、再生債権者が不同意を述べまたは意見を述べるための手続が設けられています。
小規模個人再生の場合、再生計画案に同意するか否かについて再生債権者による決議が行われます。この決議において否決されると、再生手続は廃止されて打ち切られてしまいます。
他方、給与所得者等再生の場合には、再生債権者による決議は行われません。ただし、意見を聴取する手続は行われます。
個人再生における債権者の意向
個人再生の手続では、再生債務者は財産を維持したままで債務を大幅に減額できたり、長期の分割払いにしてもらえることがあります。債務者にとっては大きなメリットです。
しかし、債務者に大きなメリットがあるということは、その分、債権者にとっては大きな不利益となります。
不利益を受ける債権者を無視してしまうような制度であっては、個人再生という制度自体に対する理解を得られないでしょう。そのため、個人再生においては、債権者の意思もある程度尊重される必要があります。
そこで、個人再生手続においては、不利益を被ることになる再生債権者は、再生債務者の作成した再生計画案に対して意見を述べることができる機会が手続に組み込まれています。
特に個人再生のうちでも小規模個人再生の場合には、減額率が大きく債権者に与える不利益が給与所得者等再生よりも大きくなる可能性が高いことから、再生債権者の意向が直接、再生計画の認可・不認可に関わってくるものとされています。
小規模個人再生における再生債権者の決議
前記のとおり、小規模個人再生の場合、給与所得者等再生の場合よりも大きな減額がされる可能性が高いですから、再生債権者に与える不利益も大きいということになります。
そのため、小規模個人再生においては、給与所得者等再生の場合よりも、債権者の意思が強く手続に影響する場合があります。
具体的に言うと、小規模個人再生の場合には、再生計画案は再生債権者による決議に付され、そこにおいて、不同意を述べた再生債権者が、議決権を有する再生債権者の総数の半数に満たず、かつ、その議決権を有する再生債権者の再生債権の額が総額の2分の1を超えないときに限り、再生計画案の可決があったものとみなすものとされています(民事再生法230条6項)。
逆にいえば、(議決権を有する)再生債権者の頭数の半数以上が異議(不同意)を出した場合や、異議を出した再生債権者の再生債権の合計額が全ての再生債権の合計額の過半数であった場合には、再生計画案は否決の扱いになるということです。
※なお、自認債権や民事再生法87条が定める一定の債権などの再生債権者は議決権が認められていませんが、基本的には、再生債権者には議決権があると考えておいてよいでしょう。
そして、再生計画案が可決されなかった場合は、小規模個人再生の手続は廃止、つまり認可されることなく終了となります。
つまり、再生債権者の同意の有無によっては、小規模個人再生がそれだけで失敗に終わってしまうことがあるということなのです。
再生計画案の決議の手続
小規模個人再生の場合、再生債務者から再生計画案が提出された場合、裁判所は、再生計画案を書面による決議に付する旨の決定(付議決定)をします(民事再生法230条3項)。
例えば、東京地裁本庁の場合は、再生計画案を個人再生委員にも提出し、提出を受けた個人再生委員が内容をチェックした上で、裁判所に対して付議決定をするのが妥当かどうかの意見書を提出して、その付議決定相当意見に基づいて、裁判所が付議決定をすることになっています。
この書面による決議に付する旨の決定がされたことは、再生計画案とともに議決権を有する各再生債権者に通知され、また官報公告されます。
再生債権者は、指定の期限までに、裁判所に対して不同意回答書を提出する方法によって不同意意見を述べます。同意の場合には、何も提出されません。
そして、前記のとおり、不同意回答書の提出が、再生債権者の頭数の半数以上または提出した再生債権者の再生債権の合計額が全ての再生債権の合計額の過半数であった場合には、再生計画は可決されなかったことになり、手続は廃止となります。
他方、不同意回答書の提出が、再生債権者の総数の半数に満たず、かつ、提出した再生債権者の再生債権の額が総額の2分の1を超えない場合は、再生計画案は可決されたものとみなされます。
再生計画案が可決されると、裁判所は、再生計画不認可事由がないかどうかを審査し、それがないと判断した場合には、再生計画認可決定をすることになります。
給与所得者等再生における債権者の意見聴取
給与所得者等再生の場合、その返済額は必ず小規模個人再生における場合よりも高額になるのが通常です。その上、可処分所得の2年分以上の返済総額でなければなりません。
しかし、給与所得者等再生は、返済額が小規模個人再生よりも高額である反面、再生債権者の不同意によって手続が廃止されることはありません。
そのため、給与所得者等再生においては、再生債権者による決議はなされず、意見を聴取するだけにとどまっています。
つまり、再生債権者の同意の有無だけで、給与所得者等再生の手続の帰趨が定まってしまうということはないのです。
ただし、再生債権者から不認可事由に該当する事実の申告等によって不認可事由があることが判明した場合には、再生計画が不認可となるということはあり得るでしょう。
意見聴取の手続
給与所得者等再生の場合、再生債務者から再生計画案が提出された場合、裁判所は、再生計画案を認可すべきかどうかについて債権届出をした届出債権者に意見を聴く旨の決定(付意見決定)をします(民事再生法240条1項)。
例えば、東京地裁本庁の場合は、前記のとおり、再生計画案を個人再生委員にも提出するため、提出を受けた個人再生委員が内容をチェックした上で、裁判所に対して付意見決定をするのが妥当かどうかの意見書を提出して、その付議決定相当意見に基づいて、裁判所が付意見決定をすることになっています。
この不意見決定がされたことは、再生計画案とともに各届出再生債権者に通知され、官報公告されます。
各届出債権者は、裁判所に対して不認可事由に該当する事実があること等を意見として述べることになります。
ただし、裁判所は、再生債権者の意見を参考とはしますが、それに関わらず、不認可事由を検討して、不認可事由がないと判断をすれば、再生計画認可決定をすることができます。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
他方、通常再生の場合は、対応できる事務所が限られてきます。小規模の事務所の場合には、対応が難しいこともあり得ます。その点からも、個人の債務整理では、通常再生ではなく、個人再生を選択した方がよいのです。
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。