この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生の申立ては、管轄の裁判所に対して、個人再生(再生手続開始)の申立書という書面を提出する方法によって行う必要があります。
個人再生の申立書に何を記載するのかについては、民事再生法および民事再生規則で定められています。ただし、各裁判所で個人再生申立書の書式を準備しているため、それに従って記載すれば、それほど難しいことはありません。
個人再生申立て(申請)の方式
個人再生の手続を開始してもらうためには、裁判所によって再生手続開始決定を出してもらう必要があります。そして、この再生手続開始決定を出してもらうためには、個人再生の申立てをしなければなりません。
個人再生の申立ては、個人再生の申請などと言われることもありますが、裁判所に裁判を求める請求ですので「申立て」というのが正しいでしょう。民事再生法の条文でも「申立て」と規定されています。
また、もっと正確にいうと、「再生手続開始の申立て」という手続です。
再生手続開始の申立ては、民事再生法で書面によらなければならないと明示されているわけではありません。しかし、実務上は、再生手続開始の申立書という書面を裁判所に提出する方法によって行われます(民事再生規則2条1項)。
したがって、個人再生をしようという場合には、まずは、この再生手続開始の申立書を作成しておかなければなりません。
民事再生全般に共通する申立書の必要的記載事項
前記のとおり、個人再生をするためには、まず再生手続開始の申立書を作成し、それを管轄の裁判所に提出する方法によって、個人再生手続開始を申し立てることになります。
この個人再生申立書には、最低限、記載しておかなければならない事項があります。個人再生を含む民事再生手続全般の申立書の記載事項は、以下のとおりです(民事再生規則12条1項)。
- 申立人の氏名・住所(法定代理人の氏名・住所)
- 再生債務者の氏名・住所(法定代理人の氏名・住所)
- 申立ての趣旨
- 再生手続開始原因となる事実
- 再生計画案作成方針についての申立人の意見
上記共通の記載事項のほか、個人再生に固有の記載事項があります。この個人再生固有の記載事項は、選択する手続が小規模個人再生手続なのか給与所得者等再生手続なのかによって異なります。
小規模個人再生に固有の申立書記載事項
小規模個人再生の申立書には、前記民事再生共通の記載事項のほか、以下の事項の記載も必要となります(民事再生規則112条2項)。
- 小規模個人再生を行うことを求める旨の申述
- 小規模個人再生の再生手続開始要件に該当しないことが明らかになった場合に、通常の民事再生手続開始を求める意思があるか無いか
- 再生債務者の職業・収入その他の生活の状況
- 再生債権の総額
給与所得者等再生に固有の申立書記載事項
給与所得者等再生の申立書には、前記民事再生共通の記載事項のほか、以下の事項の記載も必要となります(民事再生規則136条2項)。
- 給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述
- 給与所得者等再生の開始要件に該当しないことが明らかになった場合に、通常の民事再生手続開始を求める意思があるか無いか
- 給与所得者等再生の開始要件に該当しないことが明らかになった場合に、小規模個人再生手続開始を求める意思があるか無いか
- 再生債務者の職業・収入・家族関係その他の生活の状況
- 再生債権の総額
- 過去に給与所得者等再生の再生計画を遂行したことがある場合には、当該再生計画認可決定確定の日から7年以内に上記給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述がなされたものではないこと
- 過去に個人再生のハードシップ免責決定がされたことがある場合には、当該免責決定に係る再生計画認可決定確定の日から7年以内に上記給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述がなされたものではないこと
- 過去に破産手続の免責許可決定がされたことがある場合には、当該決定確定の日から7年以内に上記給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述がなされたものではないこと
個人再生申立書の書き方
前記のとおり、個人再生の申立書には、民事再生規則に定める各種の記載事項があります。これを記載しておかなければ、裁判所の審査に通らず、個人再生の開始決定すらしてもうことができません。
もっとも、各地の裁判所では、個人再生の申立書の書式をすでに用意してくれています。
したがって、実際には、その書式に従って記載をすれば、民事再生規則の定める記載事項を満たした申立書が作成できるようになっています。
個人再生の申立書の書式は、裁判所のサイトや各地の弁護士会のサイトなどからダウンロードすることが可能です。
また、書籍などにも付録として添付されていることもありますので、入手はそれほど難しくはありません。
なお、通常の申立書書式は、前記の記載事項のすべてを記載するものとはされておらず、一定の記載事項は、申立書に添付する書類または別紙に記載し、申立書と一体のものとして提出するという形になっていることが多いでしょう。
そのため、ただ申立書だけを1枚提出すればよいという形にはなっていません。
申立書と一緒に各種の添付書類や資料を提出してはじめて、申立てとして適法なものとして扱われることになっていますので、注意が必要です。
どのような添付書類・資料が必要となるのかについても、申立書同様、裁判所や弁護士会のサイトなどに説明がされていることがありますので、確認しておくべきでしょう。
各裁判所ごとの個人再生申立書書式
前記のとおり、各裁判所ごとに個人再生申立書の書式が用意されています。
全国の裁判所における個人再生の申立書の書式について調査してみました。あくまで公表されている情報のみから作成したものですので、不明点もあります。
詳細を知りたい場合は、裁判所に問い合わせるか、または、各地の弁護士等に相談されることをお勧めします(各地の弁護士等であれば、非公表の書式も入手可能です。)。
北海道地方(札幌高等裁判所管内)
札幌地方裁判所 | 申立書・添付書類の書式(弁護士代理人がいる場合)(裁判所サイト) |
函館地方裁判所 | 非公表 |
旭川地方裁判所 | 非公表 |
釧路地方裁判所 | 非公表 |
東北地方(仙台高等裁判所管内)
仙台地方裁判所 | 非公表 |
福島地方裁判所 | 非公表 |
山形地方裁判所 | 非公表 |
盛岡地方裁判所 | 非公表 |
秋田地方裁判所 | 非公表 |
青森地方裁判所 | 申立書の書式は非公表 必要書類一覧あり(裁判所サイト) |
関東・東海・甲信地方(東京高等裁判所管内)
東京地方裁判所 | 申立書・添付書類の書式(日弁連サイト) ※最新のものではないので、注意 |
東京地方裁判所立川支部 | 申立書・添付書類の書式(東京三弁護士会多摩支部サイト) |
横浜地方裁判所 | 申立書・添付書類の書式(神奈川県弁護士会サイト) |
さいたま地方裁判所 | 非公表 |
千葉地方裁判所 | 申立書・添付書類の書式(裁判所サイト) |
水戸地方裁判所 | 非公表 |
宇都宮地方裁判所 | 非公表 |
前橋地方裁判所 | 非公表 |
静岡地方裁判所 | 非公表 |
甲府地方裁判所 | 非公表 |
長野地方裁判所 | 非公表 |
新潟地方裁判所 | 非公表 |
中部地方(名古屋高等裁判所管内)
名古屋地方裁判所 | 非公表 |
津地方裁判所 | 非公表 |
岐阜地方裁判所 | 非公表 |
福井地方裁判所 | 非公表 |
金沢地方裁判所 | 非公表 |
富山地方裁判所 | 非公表 |
近畿地方(大阪高等裁判所管内)
大阪地方裁判所 | 非公表 |
京都地方裁判所 | 非公表 |
神戸地方裁判所 | 非公表 |
奈良地方裁判所 | 非公表 |
大津地方裁判所 | 非公表 |
和歌山地方裁判所 | 非公表 |
中国地方(広島高等裁判所管内)
広島地方裁判所 | 非公表 |
山口地方裁判所 | 非公表 |
岡山地方裁判所 | 非公表 |
鳥取地方裁判所 | 非公表 |
松江地方裁判所 | 申立書・添付資料の書式(裁判所サイト) |
四国地方(高松高等裁判所管内)
高松地方裁判所 | 非公表 |
徳島地方裁判所 | 非公表 |
高知地方裁判所 | 非公表 |
松山地方裁判所 | 非公表 |
九州・沖縄地方(福岡高等裁判所管内)
福岡地方裁判所 | 非公表 |
佐賀地方裁判所 | 非公表 |
長崎地方裁判所 | 非公表 |
大分地方裁判所 | 非公表 |
熊本地方裁判所 | 非公表 |
鹿児島地方裁判所 | 申立書・添付書類の書式(裁判所サイト) ※最新のものではないので、注意 |
宮崎地方裁判所 | 非公表 |
那覇地方裁判所 | 非公表 |
弁護士の探し方
上記のとおり、個人再生申立書の書式はあまり公開されていません。もっとも、弁護士に依頼すれば、書式も準備して申立てをしてくれます。
とは言え、「個人再生をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
他方、通常再生の場合は、対応できる事務所が限られてきます。小規模の事務所の場合には、対応が難しいこともあり得ます。その点からも、個人の債務整理では、通常再生ではなく、個人再生を選択した方がよいのです。
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。