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給与所得者等再生の再生計画認可要件である「再生計画が再生債権者の一般の利益に反しないこと」とは?

個人再生の画像
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給与所得者等再生の再生計画が認可されるためには、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反するものでないこと」が必要です。ここから、再生計画における弁済率が破産における場合の配当率以上でなければならないとする清算価値保障原則が導かれると解されています。

給与所得者等再生の再生計画認可の要件

民事再生法 第241条

  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第2号 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。

個人再生には、原則型である小規模個人再生と、その特則である給与所得者等再生の2種類の手続が用意されています。

給与所得者等再生においては、再生債権者による再生計画案の決議が設けられていません。

そのため、裁判所は、再生計画認可の要件を満たしていると判断した場合、再生債権者の意向によらずに再生計画認可決定をすることができます。

給与所得者等再生においては、再生債務者は、可処分所得の2年分以上の額を計画弁済総額として弁済しなければならず、しかも、変動の幅の小さいと見込まれる定期的な収入を得ることが要件とされています。

そのため、再生計画案の決議を経なくても、一般的に再生債権者に利益を与えることが想定できるからです。

とはいえ、事案によっては、必ずしも再生債権者に利益を与えるものになるとは限りません。

そこで、給与所得者等再生においては、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」場合、再生計画は不認可となるものとされています(民事再生法241条2項2号)。

再生債権者一般の利益の判断基準

前記のとおり、給与所得者等再生においては、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」場合、再生計画が不認可となるとされています(民事再生法241条2項2号)。

どのような場合に「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」ことになるのかは、個人再生よりも破産手続など別の倒産手続をとった方が再生債権者に利益を与えるものであるかどうかが判断基準となると解されています。

とはいえ、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」かどうかは、単純に判断することはできません。個々の事情によって、弁済額等が異なってくるからです。

そこで、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」かどうかは「債権者が再生計画に同意する見込みの有無によってではなく、想定される弁済率、弁済期及び弁済期間等を総合的に検討して、総債権者の得られる利益の有無によって判断されるべき」であると解されています(名古屋高等裁判所平成26年1月17日決定参照)。

また、問題となるのは、再生債権者個々の利益ではなく、「再生債権者の一般の利益」です。

したがって、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」かどうかは「債権者全体の利益を考慮すべきであって、個々の債権者や特定の債権者集団の利益や意向のみを考慮すべきでは」ないと解されています(前掲名古屋高等裁判所平成26年1月17日決定参照)。

清算価値保障原則

前記のとおり、給与所得者等再生においては、「再生計画が再生債権者の一般の利益に反しないこと」が再生計画認可の要件です。

この「再生計画が再生債権者の一般の利益に反しないこと」から、清算価値保障原則と呼ばれる原則が導かれると解されています。

清算価値保障原則とは、再生計画における弁済率が破産における場合の配当率以上でなければならないとする原則のことをいいます。

例えば、個人再生だと再生債権者は100万円しか弁済を受けることができないものの、破産であったら200万円の配当を受けることができるというのであれば、個人再生よりも破産の方が再生債権者に利益があります。

したがって、この場合は、清算価値保障原則に反することになります。

そして、清算価値保障原則に反するということは、再生計画が再生債権者の一般の利益に反することになりますから、給与所得者等再生の再生計画は不認可となります。

「再生計画が再生債権者の一般の利益に反する」場合とは、もっぱら清算価値保障原則に反する場合であると言ってもよいかもしれません。

この清算価値保障原則は、給与所得者等再生の場合だけでなく、小規模個人再生の場合にも求められます。

ですので、個人再生の申立てを検討する場合には、この清算価値保障原則を充たしているかどうかを吟味しなければなりません。

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