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任意整理と過払い金はどのような関係にあるのか?

任意整理の画像
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任意整理は,弁護士等が債務者の方に代わって貸金業者等の債権者と返済条件について交渉をするという手続です。これに対し,過払い金返還請求は,貸金業者等に対して,支払い過ぎた利息の返還を請求するという手続です。

これらは,まったく真逆の手続ですが,こと貸金業者を相手方とする場合には,実際には,表裏一体の関係にあるといえる部分があります。

利息制限法と引き直し計算

任意整理過払い金の関係について理解するためには,まず利息制限法引き直し計算(利息計算・元本充当計算)というものについて知っておく必要があります。

利息制限法の効果

利息制限法とは,暴利から借主を保護するために,金銭消費貸借契約における利息利率を一定割合にまで制限する法律です。要するに,借金の利息の利率を制限する法律ということです。

この利息制限法の制限利率を超える利率の利息契約をしたり,あるいは,そのような契約をして現実に制限利率を超える利息を受け取ったりしても,利息制限法に違反しているため,そのような約束や金銭の受領は無効となります。

それでは,すでに利息制限法の制限超過利息を支払ってしまっていた場合(貸金業者側からみれば,制限超過利息をすでに受け取ってしまっていた場合)に,実際にはどうように扱うのかということが問題となってきます。

この点については,最高裁判所の判例(最大判昭和39年11月18日)により,貸金業者等が利息制限法の制限超過利息を受領していた場合には,その受領は無効であるから,その受領した制限超過利息は借金の元本に充当される(元本に支払ったことにされる)ことになっています。

引き直し計算(元本充当計算・利息計算)

最高裁判所判例に従って,制限超過利息が発生した場合には,その制限超過利息を次々と元本に支払ったものとして貸金業者等との間の取引を計算し直していく計算手法のことを「引き直し計算」と呼んでいます。利息計算とか,元本充当計算などと呼ばれることもあります。

この引き直し計算は,実際に1回1回の借入れや返済を計算していくと非常に大変ですが,現在では,エクセルのソフトなどで,借入れ・返済の日付や金額等を入れるだけで簡単に計算できるものがあります。それらを利用すれば誰にでも簡単にできるようになっています。

過払い金の仕組みと誤解

前記のとおり,利息制限法に違反する利率の利息は,借金の元本に充当されていくことになります。そして,次々と利息制限法の制限超過利息を元本に充当する引き直し計算をしていくと,ある時に借金の元本が計算上完済となる場合があります。

そして,それを超えてさらに上記元本充当計算をしていくと,今度は,借金の元本を超えて支払いをしていくという状態になっていきます。要するに,計算上は借金がないのに金銭を支払っているという状態が生ずるというわけです。

この計算上元本が完済となった後に支払われた制限超過利息は,それを受領した貸金業者等に対してその返還を請求できます。これがいわゆる「過払い金」です。

このように,過払い金とは,あくまで,まずは制限超過利息を元本に充当していくのが先です。そして,元本充当をしていった結果,その元本すらなくなった(借金がなくなった)後にさらに支払いを続けていった場合にはじめて発生するものです。

したがって,借金の元本が残っているうちに過払い金だけが発生するということはあり得ないのです。

引き直し計算をしても借金の元本が残っているにもかかわらず、これまで支払った制限超過利息だけ過払い金として返還を請求したいと思っても、それはできないということです。

あくまで、計算上、借金の元本もなくなったといえる場合にのみ、過払い金返還ができるということは注意が必要です。

任意整理と過払い金の関係

前記のとおり,過払い金が発生するのは,引き直し計算の結果,借金がなくなったといえる場合です。

したがって,任意整理として借金の残額について交渉をするのか,それとも,過払い金返還を請求するのかというのは,この引き直し計算によって,はたして残額があるのか否かということにかかってくるということになります。

引き直し計算の結果,残高があるのであれば任意整理をし,残高はなく過払いとなっているというのであれば,過払い金の返還を請求することになるのです。

したがって,任意整理と過払い金返還請求は,裏表の関係にあるといえますが,両立するものではないのです。

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