現在ではすでに撤廃されていますが、旧貸金業規制法(現在は貸金業法)にはみなし弁済という消費者に大きな不利益を与える制度がありました。
みなし弁済の記事一覧
みなし弁済の記事一覧は、以下のとおりです。
- みなし弁済とは?
- みなし弁済がグレーゾーン金利に及ぼした影響とは?
- みなし弁済における支払いの任意性について判断した最二小判平成2年1月22日とは?
- 旧貸金業規制法における18条書面の交付がないとしてみなし弁済の成立を否定した最二小判平成16年2月20日(平成14年(受)第912号)とは?
- みなし弁済の成立を否定した最二小判平成16年2月20日(平成15年(オ)第386号)とは?
- リボルビング方式貸付におけるみなし弁済の成立を否定した最一小判平成17年12月15日とは?
- みなし弁済の成立を全面的に否定した最二小判平成18年1月13日とは?
- 日賦貸金業者にみなし弁済は適用されないとした最高裁判所第三小法廷平成18年1月24日(平成15年(受)第1653号)とは?
なお、その他債務整理に関する記事は、以下のページをご覧ください。
みなし弁済の概要
前記のとおり、現在ではすでに撤廃されていますが、旧貸金業規制法(現在は貸金業法)にはみなし弁済という消費者に大きな不利益を与える制度がありました。
みなし弁済とは、貸金業者が利息制限法所定の制限利率を超える利息を受領したとしても、旧貸金業規制法43条所定の要件を満たす場合には、有効な利息の弁済があったものとみなすという制度です。
このみなし弁済によって、消費者保護を図ろうとする利息制限法の規定が無意味になってしまい、いわゆるグレーゾーン金利を助長することになっていました。それにより、借金問題(クレサラ問題)が社会問題となるほどに大きな問題となっていました。
みなし弁済の要件は、債務者の制限超過利息の支払いに任意性があること、旧貸金業規制法17条に定める書面(17条書面)を債務者に交付したこと、同法18条に定める書面(18条書面)を債務者に交付したことです。
最二小判平成2年1月22日は、支払いの任意性について緩やかに解し、支払った金銭が利息制限法に違反することを知らなくても,自分の意思で支払ってしまった以上は,みなし弁済の要件である「任意に支払った」とあたると判断しており、貸金業者側に有利な判決と言われています。
他方、最二小判平成16年2月20日(平成14年(受)912号)は、18条書面は返済後ただちに交付されなければならないとして、厳格な解釈を採用し、みなし弁済の成立を否定しました。
また、最二小判平成16年2月20日(平成15年(オ)386号)も、利息の天引きにはみなし弁済の適用がないことや、17条書面、18条書面の交付は厳格に解釈すべきであると判断し、みなし弁済の成立を否定しています。
最一小判平成17年12月15日は、リボルビング方式貸付の場合でも、17条書面には法定時効に準ずる記載をしなければならないという厳格な解釈をとって、みなし弁済の成立を否定しました。
そして、みなし弁済の適用を実質的に否定したと言われるのが、最高裁判所第二小法廷平成18年1月13日判決です。この判決によって、みなし弁済はほとんど適用が認められることがなくなり、後の貸金業規制法改正、みなし弁済撤廃へとつながっていきます。
最三小判平成18年1月24日は、17条書面の複数の記載事項について厳格な解釈をとり、さらに、日賦貸金業者については、実際の貸付けのときにも要件を守っていたといえる場合でなければ,みなし弁済は適用されないとして、みなし弁済の成立を否定しました。
弁護士の探し方
「債務整理や過払金返還請求をしたいけれど、どの弁護士を選べばいいのか分からない」
という方は少なくないでしょう。
現在では、多くの法律事務所が債務整理・過払金返還請求を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、過払金返還請求を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理・過払金返還請求の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人の債務整理や過払金返還請求の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
参考書籍
本サイトでも過払金返還請求について解説していますが、より深く知りたい方のために、過払金返還請求の参考書籍を紹介します。
編著・出版:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会
東京の3弁護士会による債務整理・クレサラ事件処理全般についての実務書。債務整理全般を1冊でまとめている実務書は意外と少ないので、債務整理を知るにはちょうど良い本です。
編集:名古屋消費者信用問題研究会 出版:民事法研究会
過払金返還請求の教科書のような本。やや古いので判例や論点のアップデートは必要ですが、過払金返還請求を知るためには、よい本です。
監修:名古屋消費者信用問題研究会 出版:民事法研究会
タイトルどおり、過払金返還請求に関するほとんどの論点を網羅している実務の解説書。ただし、最新の判例などのアップデートは必要です。
著者:輿石武裕 出版:日本加除出版
簡易裁判所裁判官による過払金返還請求の裁判例解説書。最高裁判例だけでなく下級審裁判例も多く掲載。ただし、こちらも古い本なのでアップデートが必要です。
編集:岡口基一 出版:ぎょうせい
岡口元裁判官による実務家に人気の要件事実の解説書。第4巻には、過払金返還請求の要件事実についても解説されています。