この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

特定調停の申立書には、財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料および関係権利者一覧表などの書類を添付する必要があります。
特定調停申立書の添付書類・資料
特定調停を申し立てるには、管轄の裁判所に対して、特定調停の申立書を提出する必要があります。もっとも、申立書だけを提出するだけでよいわけではありません。この申立書に各種の書類や資料を添付して提出する必要があります。
具体的に言うと、以下の書類・資料の添付が必要となります。
- 財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料
- 関係権利者の一覧表
- 住民票の写しなど
- 債権者の資格証明書(現在事項証明書書など)
- 紛争の要点に関する証拠資料など
もっとも、上記の書類だけでなく、事案によっては、収入証明・資産に関する資料などの提出を求められることがあります。
以下では、特定調停申立書に添付する書類・資料について説明します。
財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料
特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律 第3条
- 第1項 特定債務者は、特定債務等の調整に係る調停の申立てをするときは、特定調停手続により調停を行うことを求めることができる。
- 第2項 特定調停手続により調停を行うことを求める旨の申述は、調停の申立ての際にしなければならない。
- 第3項 前項の申述をする申立人は、申立てと同時に(やむを得ない理由がある場合にあっては、申立ての後遅滞なく)、財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料及び関係権利者の一覧表を提出しなければならない。
特定調停の申立てにおいては、「財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料」の提出が必要です(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律3条3項。以下「特定調停法」と言います。)。
特定調停は誰でも利用できるわけではなく、特定債務者でなければ利用できません(特定調停法2条3項)。そのため、特定債務者であることを明らかにする資料の提出が求められるのです。
この特定債務者であることを明らかにする資料は、やむを得ない理由がある場合を除いて、申立書に添付して申立てと同時に提出するのが原則です。
特定債務者であることを明らかにする資料には、特定調停手続規則2条1項に定める事項の記載が必要とされています。
もっとも、各簡易裁判所には、特定債務者であることを明らかにする資料のひな形・書式が用意されているので、一から作成する必要はありません。書式に従って作成するだけです。
関係権利者の一覧表
特定調停の申立てにおいては、「関係権利者の一覧表」の提出が必要です(特定債務法3条3項)。
関係権利者とは、要するに、債権者のことです。債権者を一覧にしたものが、関係権利者一覧表です。
この関係権利者一覧表には、特定調停手続規則2条2項で定める事項の記載が必要です。また、申立てをしていない債権者も含めて、すべての債権者を記載しなければなりません。
なお、関係権利者一覧表も、各簡易裁判所にひな形・書式が用意されているので、一から作成する必要はありません。書式に従って作成するだけです。
住民票の写し・身分証明書・印鑑など
当たり前のことですが、申立人の身元を明らかにする書類を添付する必要があります。具体的には、特定調停の申立書に住民票の写しを添付することになります。できる限り最新のものがよいでしょう。
なお、調停当日は本人確認が行われる場合がありますので、本人確認ができる証明書、具体的には免許証やマイナンバーカードなど写真付きの証明書を持参してください。また、印鑑が必要な場合もありますから、印鑑も忘れずに持参しましょう。
債権者の資格証明書
特定調停申立ての相手方である債権者が法人(会社)の場合、その債権者の資格証明書を申立書に添付する必要があります。
資格証明書とは、法人の登記事項証明書です。登記事項証明書のうちの現在事項証明書または代表者事項証明書を資格証明書として添付します。履歴事項証明書でもかまいませんが、履歴事項まで取寄せる必要はありません。
この登記事項証明書は、法務局で取得できます。どこの法務局でも大丈夫です。最寄りの法務局で取得しましょう。1通600円(オンライン請求の場合は490円~520円)です。
その他の書類・資料
裁判所によっては、上記までに挙げてきたもの以外の書類や資料の添付が必要となることもあります。そのため、特定調停を申し立てる場合、あらかじめ申立てをする予定の裁判所に問い合わせて、必要な書類を確認しておく必要があります。
なお、簡易裁判所では、特定調停などの裁判手続に関する手続案内や説明会などを行っているところが多いです。手続案内などを利用して確認しておきましょう。
以下では、添付を求められることの多い書類・資料の具体例を紹介します。
紛争の要点に関する証拠書類
民事調停規則 第3条
- 法第4条の2第1項の申立書には、申立ての趣旨及び紛争の要点並びに第24条において準用する非訟事件手続規則(平成24年最高裁判所規則第7号)第1条第1項各号に掲げる事項を記載するほか、紛争の要点に関する証拠書類があるときは、その写しを添付しなければならない。
特定調停を含む民事調停の申立書には、紛争の要点の記載が必要です。そして、紛争の要点に関する証拠書類があるときは、その写しを添付しなければならないとされています(民事調停規則3条)。
この紛争の要点には、債務の種類や契約状況などを記載することになっていますので、これらに関する証拠書類があるときは、その写しの提出が求められることがあります。
具体的に言うと、債権者との間の契約書、領収書、請求書などです。資料がない場合には、相手方との間で取引をした銀行等の通帳の写しなどを提出することもあります。
なお、相手方が貸金業者やクレジットカード会社などの金融機関であれば、調停開始後、裁判所からの要求によって相手方の方から取引の履歴を提出してきますから、申立ての時点で何も資料が残っていないとしても、それほど問題とはなりません。
収入・資産に関する書類・資料
裁判所によっては、収入や資産に関する書類・資料の添付を求められることもあります。
収入に関する書類としては、源泉徴収票、課税証明書、給与明細書などがあります。課税証明書は、市町村役場で取得できます。個人事業をしている場合には、確定申告書の写しが必要となる場合もあります。
資産に関する書類は、持っている資産によって異なります。例えば、以下のものがあります。
- 不動産を持っている場合:不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書
- 自動車を持っている場合:自動車検査証、査定書
- 預金がある場合:預金通帳、取引履歴
- 民間保険に加入している場合:保険証券、解約返戻金証明書、保険約款
これらがすべて必要となるわけではありません。どのような書類が必要となるかは、裁判所に確認しておいた方がよいでしょう。
陳述書
裁判所によっては、陳述書の提出を求められることもあります。
陳述書とは、借金をした原因や借金が増えた経緯などを文章にしたものです。感想文ではないので、時系列で具体的な事実を記載します。
収入印紙・郵券
添付書類・資料ではありませんが、特定調停の申立てにおいては、手数料の支払いと郵便切手の納付が必要です。
手数料は、相手方債権者1社につき500円です。この手数料は、収入印紙で支払います。割印せずに、そのまま提出しましょう。
郵便切手は裁判所によって異なります。あらかじめ裁判所に確認しておく必要があります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
債務整理と特定調停で悩んでいる場合
特定調停は、弁護士などに依頼せずに行うことが可能です。特に、債務がそれほど大きくない場合には、特定調停を選択することも考えられます。
他方、債務が高額な場合には、自己破産や個人再生なども考えておかなければいけません。自己破産や個人再生の場合には、弁護士に相談・依頼する必要があります。
まずは、債務整理について相談をしてみた上で、特定調停にするのか債務整理にするのかを選択した方がよいでしょう。
今どきは、ほとんどの法律事務所で債務整理の相談は無料相談です。むしろ有料のところを探す方が難しいくらいです。無料ですので、とりあえず相談してみてから考えるのが得策です。
弁護士法人東京ロータス法律事務所
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参考書籍
本サイトでも特定調停について解説していますが、より深く知りたい方のために、債務整理や特定調停の参考書籍を紹介します。
特定調停法逐条的概説
編集:濱田芳貴 出版:民事法研究会
特定調停法の逐条解説。かなり詳細に書かれているため、実務家向けです。個人の債務整理だけでなく、事業再生にも対応しています。
クレジット・サラ金処理の手引き(6訂版)
編著・出版:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会
東京の三弁護士会による債務整理・クレサラ事件処理全般についての実務書。債務整理全般を1冊でまとめている実務書は意外と少ないので、債務整理を知るにはちょうど良い本です。
中小企業再生のための特定調停手続の新運用の実務
編集:日弁連中小企業法律支援センター 出版:商事法務
記事本文の内容と異なりますが一応紹介。特定調停の手続は、個人の債務整理だけでなく、中小企業の事業再生・私的整理の一環として利用されることも増えています。