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破産法53条1項に基づく双方未履行双務契約の解除とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産管財人は、双方未履行双務契約がある場合、その契約を解除するのか、または、破産者の債務を履行して、相手方に対して履行の請求を求めるのかを選択できます(破産法53条1項)。

破産管財人が契約解除を選択する場合、裁判所の許可は不要です。また、相手方に対する事前の催告も不要と解されています。

ただし、「契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合」には、解除権が制限されると解されています(最三小判平成12年2月29日)。

破産手続における双方未履行双務契約の処理

破産法 第53条

  • 第1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
  • 第2項 前項の場合には、相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなす。
  • 第3項 前項の規定は、相手方又は破産管財人が民法第631条前段の規定により解約の申入れをすることができる場合又は同法第642条第1項前段の規定により契約の解除をすることができる場合について準用する。

破産手続開始時において、破産者も破産者の契約の相手方も、ともに契約に基づく債務を履行していない双務契約のことを「双方未履行双務契約」と呼んでいます。

双方未履行双務契約は、当事者の一方について破産手続が開始されたからといって当然に終了するものではないのが通常です。そのため、破産管財人は、契約関係を清算しなければなりません。

具体的には、この双方未履行双務契約がある場合、破産管財人は、その契約を解除するのか、または、破産者の債務を履行して、相手方に対して履行の請求を求めるのかを選択できます(破産法53条1項)。

契約解除と履行請求のいずれを選択するのかは、破産管財人の裁量に任されています。

破産財団の増殖または減少の程度や手続の迅速性などを考慮して、履行請求をするよりも契約を解除する方がメリットがあるという場合には、契約解除を選択することになるでしょう。

破産法53条1項に基づく破産管財人の解除権の法的性質

前記のとおり、破産管財人は、破産法53条1項に基づき、双方未履行双務契約を解除することができます。

この破産法53条1項に基づく破産管財人の契約解除権は、債務不履行に基づく解除などとは異なる破産法が認めた特別の解除権です。

そのため、破産管財人は、契約解除をするに際して、相手方に対して事前に催告をする必要はないと解されています。

また、破産法53条1項に基づく履行請求をする場合には、裁判所の許可を要しますが(破産法78条2項9号)、破産法53条1項に基づく解除をする場合には裁判所の許可は不要とされています。

破産管財人の解除権が制限される場合

破産管財人には解除するか否かの裁量が与えられてますが、常に破産管財人による解除が認められるわけではありません。

判例によれば、「契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合には、破産管財人は同項に基づく解除権を行使することができない」と解されています(最三小判平成12年2月29日)。

そして、上記判例によれば、「相手方に著しく不公平な状況が生じるかどうかは、解除によって契約当事者双方が原状回復等としてすべきことになる給付内容が均衡しているかどうか、(旧)破産法60条(現行破産法54条)等の規定により相手方の不利益がどの程度回復されるか、破産者の側の未履行債務が双務契約において本質的・中核的なものかそれとも付随的なものにすぎないかなどの諸般の事情を総合的に考慮して決すべきである。」とされています。

破産管財人が契約を解除した場合の法律関係

破産法 第54条

  • 第1項 前条第1項又は第2項の規定により契約の解除があった場合には、相手方は、損害の賠償について破産債権者としてその権利を行使することができる。
  • 第2項 前項に規定する場合において、相手方は、破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存するときは、その返還を請求することができ、現存しないときは、その価額について財団債権者としてその権利を行使することができる。

破産管財人が、破産法53条1項に基づき、双方未履行双務契約を解除すると、その契約関係は消滅するので、原状に回復させる必要があります。

破産者が契約上の義務の一部をすでに履行していた場合、破産管財人は、相手方に対して、その履行されたものの返還を求め、返還を受けた金銭や物などを破産財団に組み入れます。

他方、相手方が契約上の義務の一部をすでに履行していた場合は、相手方は、履行した反対給付の返還を求める請求権を有することになります。

そして、破産者が受けた反対給付が破産財団に現存している場合、相手方は、取戻権を行使して、その給付の返還を求めることができます(破産法54条2項前段)。

反対給付が破産財団に現存していない場合は、その価額を財団債権として請求することができます(破産法54条2項後段)。

例えば、破産者が買主である双方未履行の売買契約において、すでに引き渡されている売買目的物が破産財団に現存していれば、売主はそれを返還するよう破産管財人に請求できます。

すでに目的物が転売や滅失等によって破産財団中に現存していない場合でも、その売買目的物の価額相当額を財団債権として請求することが可能です。

また、相手方は、破産管財人の契約解除によって損害を被った場合には、損害賠償を請求できます。この損害賠償請求権は、破産債権として扱われます(破産法54条1項)。

まとめると、以下のとおりです。

破産法53条1項により解除された場合の法律関係
  • 破産者が債務の一部を履行していた場合:破産管財人が、相手方に対して給付した金銭・物の返還を請求し、回収したものを破産財団に組み入れる
  • 相手方が債務の一部を履行していた場合
    • 反対給付が破産財団に現存している場合:相手方が、破産管財人に対して取戻権を行使して反対給付の返還を請求
    • 反対給付が破産財団に現存していない場合:相手方が、破産管財人に対して反対給付の価額を請求する(請求権は財団債権)
  • 契約解除により相手方が損害を被った場合:相手方が、破産管財人に対して損害賠償を請求する(請求権は破産債権)

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