
破産手続の開始によって破産管財人が管理処分権を有することになる破産者の財産の総体のことを「破産財団」といいます。破産財団に組み入れられた財産は、換価処分されます。
破産財団の意味
破産法 第2条
- 第12号 この法律において「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。
- 第13号は省略
- 第14号 この法律において「破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。
自己破産の手続は,破産者の財産を換価処分して,それによって得た金銭を債権者に弁済・配当するという手続です。
破産者が免責されると,債権者は(原則として)その債権を回収することができなくなりますから,債権者の利益を最大限かするためにも,いかに確実に,破産者の財産を確保・管理・換価処分するのかということが,非常に重要となってきます。
特に破産者による隠匿や消費等を防ぐことが重要となってきます。
また,債権者の平等も図る必要があります。そのためには,特定の債権者が先走って財産を奪ってしまわないようにもする必要があります。
そこで,債権者に配当されるべき破産者の財産は,破産者や債権者が勝手に処分できないように,破産管財人によって管理・処分されることになります。
この破産管財人に管理・処分される破産者の財産の総体を「破産財団」と呼んでいます。
財団というと,何らかの組織のようなものを想像してしまいがちですが,そういう意味ではなく,あくまで,破産財団とは,換価処分すべき財産の総体を指す言葉です。
なお,一般的な破産手続は,破産者の財産を換価処分しますが,特殊な破産手続として相続財産破産や信託財産破産といった制度があります。
これらの場合には,それぞれ,処分されるものが破産者の財産ではなく,相続財産や信託財産となるので,これらが破産財団を構成することになります。
破産財団に組み入れられる財産
破産法 第34条
- 第1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
- 第2項 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
- 第3項 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
- 第1号 民事執行法(昭和54年法律第四号)第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭
- 第2号 差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第3号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第132条第1項(同法第192条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
- 第4項 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後1月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
- 第5項 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
- 第6項 第4項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
- 第7項 第4項の決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
個人の自己破産において破産財団に組み入れられる財産は、原則として、「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産」です(破産法34条1項)。財産的価値があるものであれば、物や債権などの権利だけでなく、ノウハウなどの情報も破産財団に含まれます。
また、退職金請求権など、現時点では債権として成立していなくても、将来発生する債権は、「将来の請求権」として破産財団に含まれます(破産法34条2項)。
ただし、例外はあります。個人の自己破産の場合、すべての財産を処分してしまうと、免責が許可されても、破産者が生活をしていくことができません。そうなると、破産者の経済的更生を図るという破産法の目的も果たせなくなります。
そこで、生活に必要とされる最低限度の財産は、破産財団に組み入れられないとされています。つまり、処分しなくてもよいということです。これを「自由財産」といいます。
したがって、個人の自己破産において破産財団に組み入れられる財産とは、以下の要件を満たす財産ということになります。
この要件を満たす財産が、自己破産において換価処分されることになります。
破産財団に属する財産の管理・処分
破産法 第78条
- 第1項 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
破産財団に属する財産を管理および処分する権利は、破産手続が開始されると、債務者(破産者)本人から剥奪され、破産管財人に専属することになります(破産法78条1項)。
したがって、自己破産の手続が開始された以降は、債務者本人であっても、破産財団に属する財産を勝手に売却したり処分したりすることはできなくなります。
破産財団に属する財産を勝手に処分してしまうと、財産の不利益処分として免責不許可事由となったり、最悪の場合は破産犯罪として刑罰を科されることもあります。