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旧貸金業規制法における18条書面の交付がないとしてみなし弁済の成立を否定した最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日判決(平成14年(受)第912号)とは?

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18条書面の交付がないとしてみなし弁済(現在ではすでに廃止)の適用を否定した判例として、最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日判決(平成14年(受)第912号・ 民集第58巻2号380頁)があります。

みなし弁済における18条書面

かつての貸金業の規制に関する法律(貸金業規制法。現在は貸金業法)には、みなし弁済という制度が設けられていました。この制度はすでに廃止されていますが、利息制限法違反の利息であっても有効なものとみなしてしまうという制度でした。

このみなし弁済が成立するためには,旧貸金業規制法18条所定の事項を記載した書面(18条書面)を交付することが要件とされていました。

この法律で定められた18条書面の交付がなされていないとして,みなし弁済の適用を否定した判例に,最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日(平成14年(受)第912号・民集58巻2号380頁)があります。

※なお、同日に同じ第二小法廷から、上記判例とは別に、みなし弁済に関する判例(最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日判決・平成15年(オ)第386号・民集第58巻2号475頁)が出されています。

最二小判平成16年2月20日(平成14年(受)第912号)の解説

最二小判平成16年2月20日(平成14年(受)第912号)は,以下のとおり判示しています(以下の引用は抜粋。)。

法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払った金銭の額が、利息の制限額を超え、利息制限法上、その超過部分につき、その契約が無効とされる場合において、貸金業者が、貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには、利息制限法1条1項の規定にかかわらず、その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として、貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨、目的(法1条)と、上記業務規制に違反した場合の罰則(平成15年法律第136号による改正前の法49条3号)が設けられていること等にかんがみると、法43条1項の規定の適用要件については、これを厳格に解釈すべきものである。

また、利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても、特段の事情のない限り、法18条1項の規定に従い、貸金業者は、この払込みを受けたことを確認した都度、直ちに、18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁参照)。そして、18条書面は、弁済を受けた都度、直ちに交付することが義務付けられていることに照らすと、貸金業者が弁済を受ける前にその弁済があった場合の法18条1項所定の事項が記載されている書面を債務者に交付したとしても、これをもって法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできない。したがって、本件各請求書のように、その返済期日の弁済があった場合の法18条1項所定の事項が記載されている書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものが返済期日前に債務者に交付され、債務者がこの書面を利用して貸金業者の銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をしたとしても、法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があって法43条1項の規定の適用要件を満たすものということはできないし、同項の適用を肯定すべき特段の事情があるということもできない。

そうすると、これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

引用元:裁判所サイト

みなし弁済の成立要件の1つとして,旧貸金業法18条所定の書面を借主に交付することという要件(18条書面の交付)があります。

上記最二小判平成16年2月20日(平成14年(受)第912号事件)は,この18条書面の交付の要件について判断した判例です。

この判例の事案では,弁済の前の段階で,貸金業者から債務者に対して,書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものが返済期日前に債務者に交付され,債務者がこの書面を利用して貸金業者の銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払いをしていたという事案です。

確かに,18条書面と同様の書面が交付されていたのであれば,それが弁済の前であろうとなかろうと,18条書面交付の要件は満たしているようにも思えます。

しかし,最二小判平成16年2月20日(平成14年(受)第912号)は,それでも,やはり18条書面の交付の要件を満たさず,みなし弁済は成立しないという判断を下しました。

上記判例は,まず,貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める旧貸金業規制法の趣旨,目的(法1条)と,業務規制に違反した場合の罰則が設けられていること等にかんがみると,みなし弁済の適用要件は厳格に解釈すべきであるという基本原則を打ち立てています。

そして,最一小判平成11年1月21日を引用して,利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,法18条1項の規定に従い,貸金業者は,この払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきであるとしました。

その上で,18条書面は,弁済を受けた都度,直ちに交付することが義務付けられていることに照らすと,たとえ,貸金業者が弁済を受ける前にその弁済があった場合の法18条1項所定の事項が記載されている書面を債務者に交付したとしても,これをもって法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできないと判断したのです。

すなわち,みなし弁済の適用は厳格に行われなければならず,どのような理由であれ,18条書面は,弁済前の交付ではなく,弁済後ただちに交付されなければならないというように判断しているのです。

この判例によって,18条書面は,必ず,弁済の後ただちに交付されなければならないということが確立されたといえるでしょう。

実務への影響

前記のとおり、この判例によって、旧貸金業規制法の18条書面は、弁済の後ただちに交付されなければならないとされました。実際、この判例以降は、各貸金業者も、弁済後ただちに18条書面を交付するようになりました。

この旧貸金業規制法の18条書面交付義務は、現在の貸金業法にも受け継がれています。貸金業法の18条書面も、弁済を受け取った後ただちに債務者に交付しなければならないとされています。

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