
債権とは,特定人に対して何らかの行為や給付を請求する法的権利のことをいい,逆に,債務とは,特定人に対して何らかの行為や給付を提供しなければならない法的義務のことをいいます。
債権・債務とは
民事事件で紛争の対象となるのは,基本的に,物権と債権です。いずれも法律で認められた権利のことですが,物権が物に対する権利であるのに対し,債権は人に対する権利であるという点で違いがあります。
すなわち,債権とは,特定人に対してある一定の行為・給付を提供するように請求する法的権利のことをいいます。この債権を有する権利者のことを「債権者」といいます。
他方,債務とは,債権の請求をされる側,すなわち,特定人に対してある一定の行為や給付を提供しなければならない法的義務のことをいいます。この債務を負う義務者のことを「債務者」といいます。
典型的な民事事件では,債権者が債務者に対して債務の履行を求めたり,債務が履行されなかった場合の責任を問うということになります。
債権債務は,契約によって生じますが,それだけでなく,例えば,不当利得があった場合や不法行為があった場合などにも,債権債務関係が生ずることになります。
金銭債権・金銭債務
債権とは行為を求めるものですから,金銭を請求するものばかりとは限りません。
例えば,雇用契約に基づいて労働をするよう求める請求権,委任契約に基づいて事務処理をするように求める請求権など,行為を求める請求権も債権です。
もっとも,民事紛争で最も多いものは,やはり金銭を請求する紛争でしょう。
金銭は,もちろん「物」ですが,他の物と異なり,所有と占有が一致していたり,紙幣やコインといった物そのものではなくその価値が問題となっていたり,通常の物とは異なる特殊性があります。
そのため,通常の物の給付を求める債権や行為を求める債権と区別され,金銭の給付を求める債権のことを特に「金銭債権」といい,他方,金銭の給付をしなければならない債務のことを「金銭債務」といいます。
この金銭債権・債務は,単に特別な名称で呼ばれるだけでなく,他の債権とは異なる特殊性があります。具体的には、以下のような特殊性があります。
- 市場に通貨が流通している以上金銭債務の履行不能が観念できないこと
- 債務者は不可抗力であることを理由に債務不履行責任を免れることができないこと
- 遅延損害金を請求する場合に債権者は履行遅滞によって損害が発生していることを証明する必要がないこと
債権・債務の具体例
例えば,金銭消費貸借契約の場合ですと,お金を貸す方が債権者で,お金を借りる方が債務者になります。
これに対し,売買契約などのように当事者の双方が債務を負う場合には,どちらか一方だけが債権者・債務者になるわけではありません。
売買契約の場合ですと,売主は,売買代金の支払いについては,支払ってもらう方ですので債権者ですが,目的物の引渡しについては,目的物を買主に引渡す義務がありますので債務者ということになります。
他方,買主は,売買代金の支払いについては債務者,目的物の引渡しについては債権者となります。
このように,債権者であるのか,債務者であるのかは,それぞれの債権・債務ごとに考えることになるのです。