債務不履行の類型とは?

債務不履行の画像

債務者が債務の本旨に従った履行しなかった場合または債務の履行が不能である場合,法律上,債務不履行責任という法的責任を負うことになります。

この債務不履行には,履行遅滞履行不能不完全履行という3つの類型があると解されています。

債務不履行の分類(3分類説)

債務者は,単に債務を履行していないまたは履行が不能であるというだけで,法的な意味での債務不履行責任を負うことになるというわけではありません。

債務を履行しなかったことまたは履行が不能であることに加えて,一定の事由がある場合にはじめて,債務不履行責任を負うことになります。

どのような事由が生ずると債務不履行について法的責任を負わなければならなくなるのかということは,民法に定められています。

判例・通説においては,債務不履行責任が生ずる場合は,履行遅滞不完全履行履行不能3類型に分類されると解されています。

※なお,学説上は,上記債務不履行を3つに分類する見解(3分類説)とは異なる有力説も存在します。ただし,現在の実務上は,この3分類説によっていると考えて問題ないでしょう。

履行遅滞

債務不履行の類型の1つに「履行遅滞」があります。履行遅滞とは,履行期に履行が可能であったにもかかわらず,履行期を渡過しても債務を履行しなかったという債務不履行のことをいいます。

履行遅滞による債務不履行責任が生ずる要件は,以下のとおりです。

  • 履行期に履行が可能であったこと
  • 履行期を経過したこと
  • 債務の履行がされなかったこと
  • 履行がされなかったことについて債務者に帰責事由があること
  • 履行がされなかったことが違法であること

まず,履行遅滞は,債務の履行が可能であったことが前提です。そもそも履行が不可能である場合には,後述する別の債務不履行類型である履行不能となるからです。

また,履行遅滞というくらいですから,債務を履行すべき時期を経過しても履行がなされなかったことが要件となります。

さらに,単に債務の履行が遅滞しただけでは債務不履行責任が生ずるわけではありません。場合によっては,履行が遅れたことについて,債務者にやむを得ない事情や何らかの正当な理由があったかもしれないからです。

そこで,履行遅滞といえるためには,その債務の履行が遅れていることについて,債務者の責に帰すべき事由(帰責事由)があること,および,違法であることが求められます。

帰責事由とは,履行が遅れていることについて,債務者に故意や過失があること,またはそれと同視できるような事情があることを意味します。

また,違法であるというのは,犯罪に該当するなどというような意味ではなく,履行をしないことについて法律上正当な理由がないという程度の意味です。

不完全履行

債務不履行の類型の1つに「不完全履行」があります。不完全履行とは,履行期に完全な債務の履行ができなかったという債務不履行のことをいいます。

不完全履行による債務不履行責任が生ずる要件は,以下のとおりです。

  • 履行期に完全な債務の履行が可能であったこと
  • 債務の履行が不完全であったこと
  • 完全な履行がされなかったことについて債務者に帰責事由があること
  • 履行がされなかったことが違法であること

まず,不完全履行においては,完全な債務の履行が可能であったこと,一応の債務の履行がなされたことが前提となります。

そもそも完全な履行が不能であったならば,前記の履行不能ですし,履行期に債務の履行がなされていないのであれば,履行遅滞となるからです。

また,前記履行遅滞や履行不能と同様,履行不能によって履行ができなくなったとしても,債務者側にもやむを得ない事情や正当な理由があることもあり得るため,債務者の帰責事由や違法性も求められます。

履行不能

債務不履行の類型の1つに「履行不能」があります。履行不能とは,債務を履行することが不可能となってしまったために履行をしなかったという債務不履行のことをいいます。

履行不能による債務不履行責任が生ずる要件は,以下のとおりです。

  • 履行が不能となったこと
  • 履行がされなかったことについて債務者に帰責事由があること
  • 履行がされなかったことが違法であること

まず,履行不能というくらいですから,当然,その要件は,履行が不能となったことです。

履行が不能になるとは,物理的に不能となってしまった場合だけでなく,法律的にまたは事実上履行が不能となってしまったような場合も含まれます。

ただし,金銭債務については,この世の中から金銭というものがなくなるということは通常考えられないため,履行不能は生じないと考えられています。

また,前記履行遅滞と同様,履行不能によって履行ができなくなったとしても,債務者側にもやむを得ない事情や正当な理由があることもあり得るため,債務者の帰責事由や違法性も求められます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました