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債権者名簿(債権者一覧表)に記載しなかった請求権は自己破産しても免責されないのか?

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免責されない非免責債権の1つに「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」があります。意図的に債権者名簿または債権者一覧表に記載しなかった請求権は、自己破産しても免責されません。

破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権

破産法 第253条

  • 第1項 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
  • 第6号 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)

個人(自然人)の自己破産の目的は,免責の許可を受けることです。免責とは,借金など債務の支払い義務を免除してもらうことをいいます。

もっとも,免責の許可を受けたかどうかにかかわらず,そもそも免責許可によっても,支払い義務を免れることができない債権というものがあります。そのような債権のことを非免責債権といいます。

この非免責債権の1つに「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」があります(破産法253条1項ただし書き6号)。

債権者名簿に記載しなかった請求権

免責許可の申立ての際には,どの債権者からどのような債権を請求されているのかについて記載した「債権者名簿」を提出しなければいけません。

この債権者名簿に従って,そこに記載された債権について免責を許可するのかどうかが決定されることになります。

なお,破産手続開始の申立ての際に「債権者一覧表」を提出すれば,債権者名簿をさらに提出する必要はありません。

個人の自己破産の場合,破産手続開始の申立てと免責許可の申立ては同時に行われ、債権者一覧表だけを提出するのが通常です。

したがって、個人の自己破産の場合、破産法253条1項ただし書き6号で問題となるのは、「債権者名簿」ではなく「債権者一覧表」となります。

そして,この債権者名簿または債権者一覧表に記載をしなかった債権(請求権)が、非免責債権の対象となります。

破産者に故意があること

非免責債権とされるのは,「債権者名簿に記載しなかった請求権」ですが,単に記載がなかったというだけではなく,その不記載を「破産者が知りながら」したものである場合に非免責債権となります。

つまり,故意に特定の債権者を債権者名簿または債権者一覧表に記載しなかった場合に限って,その債権者からの請求権については免責されないということです。

逆に言うと、過失によって、簡単に言えばうっかりしていて債権者名簿または債権者一覧表に記載しなかった場合には,非免責債権にはならないということです。

債権者名簿に記載されている債権者であれば,裁判所からその債権者に通知されるので,破産手続に参加することができ,異議を出したり意見を述べたりする機会が与えられます。

手続参加の機会を十分に与えられることを,「手続保障」と言うことがあります。

ところが,債権者名簿または債権者一覧表に記載されていない債権者は,この手続保障を与えられないことになってしまいます。

破産者自身が債務を負っていることを知らなかった債権者を記載しなかった場合にまで非免責債権とするのは酷ですが、債務を負っていることを知っていたのにあえて記載しなかった場合にまで免責させるのは、債権者の手続保障を害します。

そのため,破産者が知りながら名簿に記載しなかった場合に限り,非免責債権とされるのです。

例えば,Aさんは,Bさんから100万円を,Cさんから50万円を,Dさんから30万円をそれぞれ借りていましたが,支払うことができなくなり,破産することになりました。

ところが,Aさんは,債権者一覧表を提出する際,BさんとCさんからの借金については一覧表にちゃんと記載したのですが,Dさんだけには隠れて返済したいと考えて、Dさんだけ一覧表に記載しませんでした。

この場合,免責許可決定が下されたとしても,Dさんからの借金だけは免責されないことになります。

よくあるのは、上記の事例におけるDさんが家族や勤務先や友人であるという場合です。

こういう場合,人情的に迷惑をかけたくないという理由等から,あえて非免責債権とするために,Dさんだけ債権者名簿に載せないようにして欲しいというような事例が実際にあります。

しかし、非免責債権にするために意図的に債権者名簿に記載しなかった場合、非免責債権になるどころか、虚偽の債権者名簿等を提出したものであるとして、免責不許可事由となります。

したがって、このようないわゆる「債権者隠し」は絶対にしないようにしましょう。

債権者が破産手続開始を知っていた場合

前記のとおり,わざと特定の債権者を債権者名簿または債権者一覧表に記載しなかった場合,その債権者からの請求権については免責されないことになります。

もっとも、債権者一覧表等に記載しなかった請求権が非免責債権となるのは、債権者の手続保障を害するからです。

そうすると、債権者一覧表等に記載されなかった債権者が、破産手続に参加することができるのであれば、手続保障を害さないので、非免責債権とする必要は無いということになります。

そのため,債権者名簿に記載されなかった債権者が,破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた場合には,たとえ破産者が知りながら名簿に記載しなかった場合でも,非免責債権とならないとされています(破産法253条1項ただし書き6号括弧書き)。

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