この記事にはPR広告が含まれています。

自己破産における否認権とは?

自己破産の画像
point

否認権とは,破産手続開始決定前になされた破産者の行為,又はこれと同視される第三者の行為の効力を覆滅する形成権たる破産管財人の権能のことをいいます。否認権には,大別すると,①詐害行為否認,②無償行為否認,③偏頗行為否認があります。

破産管財人により否認権が行使されると,破産手続開始前にされた破産者等の行為の効力が否定され,その行為によって財産が第三者に移転していたとしても,その行為がなかったもの(財産が移転していなかったもの)として扱うことができるようになります。

財産が第三者のもとにある場合には,その財産を破産管財人に返還するよう請求することもできます。

否認権とは

自己破産の手続では,破産手続開始決定時に債務者破産者)が有していた財産は,自由財産を除き,破産管財人によって換価処分され,破産債権者に配当されることになります。

したがって,破産手続開始決定の時点で破産者が有していない財産(新得財産)は,換価処分の対象とならないのが原則です。

もっとも、破産手続開始決定前に処分してしまい決定時にはすでに破産者の有する財産ではなくなっていた財産だとしても、その処分が、財産の換価処分を免れるためにあえて行われたような場合などもあります。

そのような債権者間の公平を害するような場合にまで換価処分の対象としないということになると、債権者間に不公平を生じさせたり損害を与えたりするおそれがあります。

そこで,破産法は,破産手続開始決定時点で債務者の有するものとはいえなくなっている財産であっても,通常であれば,破産債権者に配当されたであろう財産については,破産財団に組み入れさせることができるものとしています。

つまり,破産手続開始決定時点で債務者の有するものとはいえなくなっている財産であっても,破産管財人による換価処分の対象となる財産にできるということです。

それが,破産管財人による「否認権」という制度です。

否認権とは、破産手続開始決定前になされた破産者の行為またはこれと同視される第三者の行為の効力を覆滅する形成権たる破産管財人の権能です。

簡単に言うと,本来破産財団に組み入れられて債権者に配当されるはずであったにもかかわらず,債務者の手元から離れてしまった財産を,破産管財人が取り戻すという権能のことをいうのです。

否認権行使の具体例

例えば,Aさんには,100万円相当の財産がありました。ところが,Aさんは,すでに支払不能であったにもかかわらず,Bさんにこの財産をあげてしまいました。本来,この財産は債権者に配当されるべきものだったはずです。

しかし,Aさんが,Bさんに対して財産をあげてしまったため,その財産は債権者に配当されなくなってしまいます。これは,債権者にとってみれば,非常に不利益です。

そこで,この財産は,あるべきところ,つまり,破産財団に戻さなければなりません。この財産を取り戻す破産管財人の権能が「否認権」なのです。

否認権行使の効果

否認権は,破産管財人の権能です。

破産管財人によって否認権が行使されると,破産手続開始決定時点で破産者の有するものとはいえない財産にであっても,その財産は,破産財団に組み入れられ,債権者に対する配当のための換価処分の対象となります。

例えば,破産者が,破産手続開始決定前に,第三者にある財産を贈与してしまったとしても,破産管財人の否認権行使により,その贈与はなかったものとされます。

それにより,破産手続開始決定時点においてその財産を破産者が有していたのと同様に扱うことができる(つまり,換価処分できる)ようになるのです。

否認権の類型

否認権には,以下の類型があります。

否認権の類型
  • 詐害行為否認(詐害否認)
  • 無償行為否認(無償否認)
  • 偏頗行為否認(偏頗否認)

詐害行為否認

詐害行為否認とは,破産者がした破産債権者を害する行為を否認する破産管財人の権能のことをいいます(破産法160条)。例えば,換価処分を避けるため,財産を低価格で第三者に売買してしまったような場合がこれに当たります。

この詐害行為否認には,以下の種類があります。

詐害行為否認の類型
  • 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為の否認(破産法160条1項1号)
  • 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立てがあった後にした破産債権者を害する行為の否認(破産法160条1項2号)
  • 詐害的債務消滅行為の否認(破産法160条2項)
  • 相当対価を得てした財産の処分行為の否認(破産法161条)

無償行為否認

無償行為否認とは,文字どおり,破産者がした財産の無償行為を否認する破産管財人の権能のことを言います。例えば,財産をあげてしまった場合などがこれに当たります。

この無償行為否認は,危機時期前後の無償行為等自体に責任財産を減少させるという詐害性があるため,詐害行為否認の一種として扱われています。

偏頗行為否認

偏頗行為否認とは,既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為(偏頗行為)を否認する破産管財人の権能のことをいいます(破産法162条)。例えば,両親や友人にだけ,優先的に借金の返済(偏頗弁済)をしてしまったような場合がこれに当たります。

この偏頗行為否認には,以下の種類があります。

偏頗行為否認の類型
  • 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした偏頗行為の否認(破産法162条1項1号)
  • 破産者が支払不能になる前30日以内にした非義務的偏頗行為の否認 (破産法162条1項2号)
タイトルとURLをコピーしました