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小規模個人再生における再生計画案の決議とは?

個人再生の画像
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小規模個人再生においては、再生債権者による再生計画案の決議が行われます。この決議において再生計画案が可決されないと、再生手続は廃止されてしまいます。小規模個人再生における再生計画案の決議は、もっぱら書面によって行われます。

小規模個人再生における再生計画案の決議

民事再生手続においては、再生債務者自身で再生計画案を作成して裁判所に提出しなければなりません。そして、この再生計画案は再生債権者の決議にかけられます。

決議にかけられるというのは、要するに、再生債権者に対し、その再生計画案を了承できるのかどうかを問うということです。

民事再生手続の個人版である個人再生のうち小規模個人再生においても、再生債権者による再生計画案の決議が行われます(給与所得者等再生においては再生債権者による再生計画案の決議は行われません。)。

この再生計画案の決議において、再生債権者から一定数以上の不同意意見が提出された場合、小規模個人再生の手続は廃止されてしまいます。つまり、認可に至る前に終了させられてしまうのです。

したがって、この再生債権者による再生計画案の決議手続は、小規模個人再生において、再生計画の認可を得るために非常に重要な意味を持っている手続であるといえます。

決議に参加できる者(議決権者)

小規模個人再生における再生債権者による再生計画案の決議に参加して議決権を行使できるのは、無異議債権または評価済債権を有する届出再生債権者です。

再生債権とは、再生債務者に対して再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権のことをいいます。この債権を有している権利者が再生債権者です。

裁判費用の請求権などの共益債権の債権者や、先取特権を有する一般優先債権の債権者、住宅資金特別条項を利用する場合の住宅資金貸付債権者は含まれません。

この再生債権者のうち、再生計画案の議決権を持っているのは、無異議債権および評価済債権を有する再生債権者で、かつ、債権の届出をした再生債権者です。

債権の届出をしている再生債権者であること

再生手続においては、各再生債権者は債権の届出をすることができます。この債権の届出をしていない債権者は、再生計画案の決議に参加することができません。

無異議債権または評価済債権の再生債権者であること

また、届出をしていたとしても、再生債権が無異議債権または評価済債権である必要もあります。

個人再生の手続においては、再生債務者は、再生債権者から提出された債権届出の内容や金額を認めるか、または、異議を述べることができます。これを再生債権の認否といいます。

無異議債権とは、この再生債権の認否において異議が述べられなかった再生債権のことをいいます。

再生債権の届出に対して異議が述べられた場合、再生債権者は裁判所に対して、その債権について評価してもらうよう申立てをすることができます。

債権の評価について申立てがあった場合、裁判所において評価手続が行われ、その債権の存否や金額等が決められます。

評価済債権とは、再生債権評価手続によってすでに評価が定められている再生債権のことをいいます。

これら無異議債権および評価済債権の届出再生債権者が、再生計画案の決議権者となります。

議決権の額

なお、後述するように、再生計画案の決議においては、各再生債権の金額も可決か否決かにおいて重要な意味を持っています。

議決権の額は、無異議債権の場合、当該届出再生債権の額(または担保不足見込額)となります。評価済債権の場合は、評価手続で定められた再生債権額(または担保不足見込額)です。

決議を行う時期

再生計画案の決議は、再生債務者によって再生計画案が提出された後、裁判所によって再生計画案を書面による決議に付する旨の決定がなされてから行われます。

ただし、決議権者や議決金額が確定しないと決議をすることができないため、債権調査手続が終了し、民事再生法125条1項の報告書が提出され後でなければ、書面決議に付する旨の決定はできないとされています。

例えば、東京地方裁判所では、標準スケジュールとして、再生手続開始の申立てから概ね20週間後に再生計画案を書面に付する旨の決定がなされるものとされています。

また、東京地裁では全件について個人再生委員を選任することになっています。そのため、書面に付する旨の決定をする前に、決議をするのが相当かについて個人再生委員が意見を述べることになっています。

決議の方法・手続

小規模個人再生の決議は、通常の民事再生の場合と異なり、債権者集会は開催されません。もっぱら書面によって決議が行われます(民事再生法230条3項)。

裁判所が書面による決議に付する旨の決定をした場合、その決定をしたことが官報公告され、裁判所から各議決権者に対して、再生計画案と再生計画案に同意しない場合には裁判所の定める期間内に書面でその旨を回答すべき旨を記載した書面が送付されます。

これらの書面を受領した議決権者は、再生計画案に同意しない場合には裁判所が定めた期間内に同意しない旨の回答を書面でしなければなりません。

議決権者が、書面で不同意の回答をしなかった場合、その議決権者は再生計画案に同意したものとみなされます(積極的に同意しているわけではないので、「消極的同意」と呼ばれています。)。

各裁判所では、回答書面の書式として不同意回答書が用意されており、裁判所から各議決権者に対して再生計画案等と一緒に送付されます。また、裁判所の定める期間は概ね2週間前後とされています。

再生計画案の可決要件

前記のとおり、再生計画案の決議において当該再生計画案が否決された場合、小規模個人再生の手続は廃止されてしまいます。小規模個人再生においては、再生計画案が可決されるかどうかは非常に重要なのです。

どのような場合に可決されるのかというと、書面により不同意回答をした議決権者が、議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権者の議決権額が議決権者の議決権額総額の2分の1を超えない場合に、再生計画案が可決されたものとみなされることになります。

再生計画案が可決されるための要件
  • 書面により不同意回答をした議決権者の頭数が、議決権者総数の半数未満であった場合
  • 書面により不同意回答をした議決権者の議決権の額が、全議決権者の議決権額総額の過半数以下であった場合

頭数の可決要件は「半数」か否かです。したがって、議決権者4人のうち2人が不同意とすれば、否決になってしまいます。

他方、議決権の額の可決要件は「過半数」か否かです。したがって、議決権額総額1000万円のうち500万円を有する議決権者が不同意としたとしても、否決にはなりません。

小規模個人再生を選択する場合には、債権者の数だけでなく、各債権の金額も注意しておく必要があるのです。

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