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破産事件の土地管轄における大規模事件の特例とは?

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破産事件の土地管轄は、原則として、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所とされています。

もっとも、破産債権者の数が500人以上であるときは、通常の管轄裁判所だけでなく、その管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができるとされています(破産法5条8項)。

さらに、破産債権者が1000名以上の場合は、これらの地方裁判所だけでなく、東京地方裁判所または大阪地方裁判所にも破産手続開始の申立てをすることができるとされています(同項9条)。

破産事件の土地管轄

破産法 第5条

  • 第1項 破産事件は、債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
  • 第2項 前項の規定による管轄裁判所がないときは、破産事件は、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
    (第3項~7項省略)
  • 第8項 第1項及び第2項の規定にかかわらず、破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権を有する債権者の数が500人以上であるときは、これらの規定による管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる。
  • 第9項 第1項及び第2項の規定にかかわらず、前項に規定する債権者の数が1000人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる。
  • 第10項 前各項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、破産事件は、先に破産手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。

会社など法人について破産手続開始を申し立てる裁判所は、どこの裁判所でもよいわけではありません。どこの裁判所に申立てをしなければならないのかは、破産法で定められています(破産法5条)。

どこの裁判所に破産手続開始申立てをしなければならないのかが法律によって定められていることを「法定管轄」といいます。法定管轄には、職分管轄・事物管轄・土地管轄があります。

このうち土地管轄とは、裁判所の所在地に応じて定められる裁判管轄のことをいいます。

破産事件の土地管轄は、原則として、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所とされています(破産法5条1項)。

もっとも、法人・会社が大企業等の場合、関連する取引先等も多数に上ることがあります。債権者が多数になれば、当然、その債権者対応も膨大になってきます。

そうなると、小規模の裁判所では、十分に対応しきれないことがあり得ます。そこで、破産法では、大規模な破産事件の土地管轄についての特例を設けています。

破産債権者が500名以上の場合

破産法5条8項は、破産債権者の数が500人以上であるときは、通常の管轄裁判所だけでなく、その管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる旨を定めています。

例えば、福島県に主たる営業所があるA法人について破産手続開始の申立てをする場合、その土地管轄は福島地方裁判所にあるのが原則です。

もっとも、A法人の破産債権者が500名以上の場合は、福井地方裁判所の所在地を管轄する高等裁判所である仙台高等裁判所の所在地を管轄する仙台地方裁判所にも、土地管轄が認められます。

つまり、この場合、A法人は、福島地方裁判所と仙台地方裁判所のどちらにも破産手続開始の申立てをすることができるということです。

破産債権者が1000名以上の場合

前記破産債権者が500名以上の場合には、通常の管轄裁判所だけでなく、その管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができるとされていますが、破産債権者が1000名以上の場合には、さらに別の特例が設けられています。

すなわち、破産債権者が1000名以上の場合には、上記の地方裁判所だけでなく、東京地方裁判所または大阪地方裁判所にも破産手続開始の申立てをすることができるとされています(破産法5条9条)。

破産債権者が1000名以上いるとなると、相当の大規模庁でなければ対応することが困難になる場合があります。

そこで、国内でも最も大規模な東京地方裁判所と大阪地方裁判所にも土地管轄が認められているのです。

例えば、福島県に主たる営業所があるA法人について破産手続開始の申立てをする場合、その土地管轄は福島地方裁判所にあるのが原則です。

もっとも、破産債権者が1000名以上の場合は、破産債権者が500名以上ですので、A法人は、仙台地方裁判所にも破産手続開始の申立てをすることができます。

その上、破産債権者が1000名以上ですから、A法人は、福島地方裁判所と仙台地方裁判所のほかに、さらに、東京地方裁判所または大阪地方裁判所にも申立てをすることが可能であるということです。

なお、上記事例のように破産手続開始の申立ての管轄が複数ある場合には、先に破産手続開始の申立てがされた裁判所が当該破産事件を管轄することになります(破産法5条10項)。

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