国債も財産的価値を有していますので,相続財産に含まれます。この国債は、相続人が複数いる場合には,共同相続人全員の準共有になると解されています。
国債とは?
国債とは,国が歳入の不足を補うために金銭を借り入れることによって負う一切の債務のことをいいます。
国債を表章する債券は,「国債ニ関スル法律」に基づき,国によって発行されます。この債券そのものを国債ということもあります。
国債には,様々な種類がありますが,近時は,ゆうちょ銀行が行う1万円単位で購入可能な個人向け国債などの金融商品もあります。
国債を購入すると,その購入者と国との間には金銭消費貸借契約類似の法律関係が発生し,国(日本政府)によって利息および元本が支払われることになります。
国債の相続財産性
国債とは,要するに,国に対する貸付金です。購入者は,国に対して,貸金返還・利息の支払いを求める請求権を有するということです。
したがって,国債は財産的価値を有していますから,被相続人が国債を有していれば,その国債も相続財産に含まれます。
国債の準共有
社債は,前記のとおり,国に対する債権です。しかも,貸付金ですから,金銭債権の性質を有しているといえます。
そうすると,金銭債権である以上,原則論からすれば,相続の開始によって,遺産分割を経ずに,各共同相続人に対して,それぞれの相続分に従って,当然に分割して相続されることになるはずです。
もっとも,国債は,法令によって購入の単位が決められ,一単位未満での権利の行使が認められていません。そうすると,純然たる可分な金銭債権とはいえません。
そこで,国債については,相続人が複数いる場合には,共同相続人にそれぞれの相続分に従って当然に分割されるものではなく,共同相続人全員の準共有になると解されています。
この点につき,最高裁判例も,個人向け国債について「個人向け国債の内容及び性質に照らせば,共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。」として,「本件国債等は,本件遺産分割審判によって上告人ら及び被上告人の各持分4分の1の割合による準共有となった」と判示しています(最三小判平成26年2月25日)。