株式会社に対する債権を表章する社債も財産的価値を有していますので,相続財産に含まれます。ただし、社債は、遺産分割までの間、共同相続人全員の準共有になると解するのが通説です。
社債とは?
社債とは,公衆に対する起債によって生じた株式会社に対する債権で,これについて有価証券(社債券)が発行されるもののことをいいます。
株式会社が資本を確保する方法としては,株式を発行するという方法があります。資金調達という面では,この株式と社債は類似した面があるといえます。
もっとも,株式は,株式会社の社員(株主)たる地位であり,株式発行の際に株主が支払う金銭は出資であって貸付金ではありません。つまり,返還を要しない金銭であるということです。
これに対して,社債は,株式会社に対する貸付金です。株式のように金銭支出者が株主たる地位を取得するわけではありませんが,株式会社は支出者(社債権者)に対して,その金銭を返還する必要があります。
なお,社債という権利を表章する有価証券を社債券といいます。社債券が発行されている場合には,この社債券がなければ,社債の権利を行使することができません。
社債の相続財産性
前記のとおり,社債は,支出をした側から見れば,株式会社に対する貸付金であって,その貸付金の返還を請求できる債権です。
したがって,財産的価値があるため,被相続人が社債を有しているのであれば,その社債は,当然,相続財産に含まれるということになります。
社債の準共有
社債は,前記のとおり,株式会社に対する債権です。しかも,貸付金ですから,金銭債権の性質を有しているといえます。
そうすると,金銭債権である以上,原則論からすれば,相続の開始によって,遺産分割を経ずに,各共同相続人に対して,それぞれの相続分に従って,当然に分割して相続されることになるはずです。
しかし,社債については,基本的には電子化されているとはいえ,有価証券たる社債券が発行される場合があり,その点からすれば,社債券という物が相続の対象となるともいえるため,純然たる金銭債権とはいえない面があります。
また,社債については社債原簿に登録する必要があるところ,社債権者の請求による社債原簿の記載変更等請求は相続人らが共同してこれを行わなければならないとされています(会社法691条2項)。
そこで,社債については,相続人が複数いる場合には,共同相続人にそれぞれの相続分に従って当然に分割されるものではなく,共同相続人全員の準共有になると解するのが通説です。