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遺産分割とは?

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遺産分割とは,遺産に属する物または権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して,相続の開始により共同相続人間での共有となった遺産の各共同相続人への帰属を確定させる手続です(民法906条)。

遺産分割が成立することによって,遺産共有が解消され,遺産を構成する個別財産がそれぞれ各共同相続人に確定的に帰属することになります。

遺産分割とは?

民法 第906条
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

相続において遺産がある場合,相続人間で,この遺産(相続財産)をめぐって紛争が生じる場合があります。いわゆる遺産争いです。

遺産争いは,ときに非常に大きな紛争に発展する場合があります。そのため,相続を揶揄して「争続」などと呼ばれることもあるほどです。

そこで,民法は,この相続人らによる遺産争いを解決するために,「遺産分割」という制度を用意しています。

すなわち,遺産分割とは,遺産に属する物または権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して,相続の開始により共同相続人間での共有となった遺産の各共同相続人への帰属を確定させる手続です(民法906条)。

遺産分割の効果

相続人が複数人いる場合,相続が開始されると,被相続人が有していた財産(相続財産)は,これら複数の相続人(共同相続人)間で,相続分の割合で共有されることになります。

もっとも,これは一時的なものです。各個別財産がそれぞれの共同相続人に確定的に分配されるのは,原則として,遺産分割を経た後になります。

つまり,遺産分割は,相続財産の帰属を確定させるという効果を持っているということです。

例えば,相続財産として土地があったという場合に,相続が開始されると,この土地は,一時的に共同相続人全員で共有されるという状態になります。

その後,遺産分割である1人の相続人にその土地を相続させるということに決まった場合には,共有状態が解消され,その1人の相続人がその土地を単独で相続することになります。

遺産分割の対象

遺産分割の対象となるのは,被相続人が相続開始時に有していた財産,つまり,相続財産です。

ただし,被相続人が相続開始時に有していた財産であっても,被相続人の一身に専属する権利義務祭祀に関する権利義務のように,そもそも相続財産に含まれないものは,遺産分割の対象になりません。

また,金銭債権などの可分債権のように,相続開始と同時に相続分に応じて各共同相続人に当然に分割承継されるため(最一小判昭和29年4月8日等),相続開始によっても共同相続人間で共有とならないものも,遺産分割の対象にはなりません(ただし,共同相続人全員が同意すれば,遺産分割の対象にすることができます。)。

相続財産そのものではなく,相続財産に代わる財産的利益(代償財産)は,その利益を受領する権利を有する相続人固有の財産であり,特別の事情がない限り,遺産分割の対象とはならないと解されています。

加えて,遺産分割の対象となる財産は,遺産分割時に存在するものでなければならないと解されています。したがって,相続財産であっても,遺産分割時にはすでに失われているものも遺産分割の対象になりません。

ただし,相続開始後から遺産分割までの間に処分された財産は,共同相続人全員の同意があれば,遺産分割時に遺産として存在するものとみなされて(民法906条の2),遺産分割の対象にすることができます。

遺産分割の方法

遺産分割の方法(分け方)としては,現物分割,換価分割,代償分割といった方法があります。

遺産分割の方法
  • 現物分割:遺産の現物そのものを分割する方法
  • 換価分割:相続財産を換価して,それによって取得した金銭を分配するという方法
  • 代償分割:遺産を共同相続人の一部に帰属させる代わりに,遺産を取得した相続人が,他の共同相続人に代償を支払う方法

もっとも,これらが基本的な方法であるというだけで,これら以外の方法が許されないわけではありません。共同相続人が合意しているのであれば,他の方法をとることも当然自由です。

なお,被相続人は,遺言で,遺産分割方法を指定することができます(民法908条1項)。この遺産分割方法の指定があれば,これが遺産分割においても優先されることになります。

遺産分割の手続

民法 第907条
第1項 共同相続人は、次条第1項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
第2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

遺産争いが生じた場合,遺産分割の手続として,まず第一に,共同相続人間で遺産分割協議を行うことになります(民法907条1項)。つまり,裁判手続をとらずに,話し合いをするということです。

民法上,裁判手続をする前に,まずこの協議をしなければならないものと定められています。協議によって遺産分割することを「協議分割」と呼ぶことがあります。

協議が調わなかった場合やそもそも協議に応じない共同相続人がいるなどの理由から協議ができなかった場合には,裁判手続を利用することができます(民法907条2項)。

遺産分割の裁判手続には,調停と審判があります。

家事事件には,調停前置主義といって,審判を行う前にまずは調停を必ず行わなければならない類型の事件がありますが,遺産分割事件の場合は調停前置主義がとられていません。

したがって,調停を申し立てずに,最初から審判を申し立てることも可能です。ただし,実際には,調停をせずに審判を申し立てたとしても,裁判所の職権で,まず調停が試みられるのが通常でしょう。

遺産分割調停は,裁判官または裁判所の選任した調停委員が,共同相続人の間に入って話し合いを調整していくという手続です。調停によって遺産分割することを「調停分割」と呼ぶことがあります。

遺産分割調停はあくまで話し合いですので,話がつかないこともあり得ます。調停で話がつかなければ審判に移行することになります。

遺産分割審判は,各共同相続人が,訴訟のように主張やそれを裏付ける資料の提出をし,それらや話し合いの内容に基づいて,裁判官が遺産分割方法を決定するという手続です。審判によって遺産分割することを「審判分割」と呼ぶことがあります。

遺産の一部分割

遺産分割を行う場合,紛争をいっぺんに解決するために,すべての遺産を対象として遺産分割を行うのが望ましいことは言うまでもありません。したがって,遺産の全部分割が原則です。

もっとも,全部を同時に解決しようとすることにより,かえって解決が遅くなってしまうこともあります。遺産の一部分割を共同相続人が望む場合には,その意思を尊重する必要もあるでしょう。

そこで,改正民法(2019年7月1日施行)では,遺産の一部を他の遺産から独立して分割することが認められています(民法907条)。

ただし,遺産分割審判においては,遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には,一部分割は認められません(民法907条2項但し書き)。

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