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破産管財人の忠実義務とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産管財人には忠実義務が課されています。忠実義務とは、委任・委託された職務を忠実に遂行しなければならない法的義務のことです。したがって、破産管財人は、債権者の利益をないがしろにして自己または第三者の利益を図ることは許されません。

忠実義務とは

法的義務の1つに「忠実義務」があります。忠実義務とは、委任・委託された職務を忠実に遂行すべき義務のことです。

より具体的に言うと、忠実義務とは、委任者・委託者の利益をないがしろにして自己または第三者の利益を図ってはならない義務のことをいいます。

代表的なものは、株式会社の取締役の忠実義務です。株式会社の取締役は、「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」とされています(会社法355条)。

忠実義務と善管注意義務の関係

法的義務には、この忠実義務と似たような義務として善管注意義務があります。

善管注意義務とは、債務者の職業や社会的・経済的地位に応じて、取引上一般的に要求される程度の注意をしなければならない義務のことをいい、「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」や「自己のためにすると同一の注意をなす義務」等よりも重い注意義務であると解されています。

この善管注意義務と忠実義務の関係については、忠実義務は善管注意義務とは別個独立の義務であると解する異質説と、忠実義務は善管注意義務を明確にしたものにすぎず、両者は同質の義務であると解する同質説とがあります。

最高裁判所は、忠実義務の規定は「善管義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまるのであつて、所論のように、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものとは解することができない」と判示しており、同質説に立つことを明らかにしています(最大判昭和45年6月24日)。

学説上も同質説が通説的見解とされています。

ただし、近時は、忠実義務は自己または第三者の利益を図ってはならないという善管注意義務とは別個のより高度な義務を課すものであると解する異質説も有力であるとされています。

同質説によると、忠実義務は善管注意義務の一内容であることになり、異質説によれば、忠実義務は善管注意義務とは別個の義務ことになります。

いずれにしても、委任者・委託者の利益をないがしろにして自己または第三者の利益を図ることが法的義務違反であることには変わりありません。

破産管財人の忠実義務

破産手続を現実に遂行していくのは、裁判所によって選任される破産管財人です。

破産管財人は、裁判所から嘱託されて破産管財業務を行うだけでなく、破産法の目的(破産法1条)に従って、総債権者または利害関係人のために、債務者(破産者)の財産を管理・換価処分して弁済または配当をする職責を課されている立場にあります。

破産管財人は、他人から嘱託されて、他人のために、他人の財産を管理処分する職責をかされているわけですから、委任者・会社と受任者・会社の取締役の関係に類似する関係にあるといえます。

そのため、破産管財人は、会社の取締役等と同様に、善管注意義務を課されています(破産法85条1項)。

また、裁判所の監督の下で総債権者のために職務を行わなければならないのですから、債権者の利益をないがしろにして自己または特定の第三者の利益を図ってはならないのは当然です。

そこで、明文はありませんが、破産管財人には、善管注意義務だけではなく、民法や会社法に規定されている忠実義務の規定も類推適用されると解されています。

したがって、破産管財人が、管理している破産財団に所属する財産などを自己の懐に入れてしまったり、親族などを介して自ら取引の相手方になるようなことは、忠実義務に違反し許されないのです。

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