この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産管財人には、その職務を遂行するにあたって、善管注意義務(破産法85条1項)、公正中立義務、忠実義務、報告義務が課されています。
これらの義務に違反した場合、破産管財人は、個人として、損害を与えた相手方に対して損害賠償責任を負うことがあります(破産法85条2項、民法709条)。
また、義務違反行為について、特別背任罪(破産法267条)や収賄罪(破産法273条)などの刑事責任に問われることもあります。
破産管財人の職務上の義務
破産手続は、破産者の財産を換価処分して金銭に換えて、それを各債権者に対して弁済または配当する倒産手続です。この破産手続を実際に遂行していくのが、破産管財人です。
この破産管財人は、破産手続開始と同時に裁判所によって選任され(破産法31条1項、74条1項)、裁判所の監督の下に破産管財業務を遂行していくことになります(破産法75条1項)。
破産管財業務は、非常に多岐にわたります。しかも、迅速な処理が求められます。逐一裁判所が指示をしていくわけにはいきません。そのため、破産管財人には大きな裁量権が与えられています。
とはいえ、破産管財人は、裁判所に代わって、公正中立に職務を遂行していかなければなりません。当然、自分や特定の人の利益を図るようなことをすることは許されません。
そこで、破産法では、適正な破産管財業務の遂行を担保するため、破産管財人に以下のような法的義務を課しています。
破産管財人がこれらの義務に違反した場合、裁判所によって解任される(破産法75条2項)ほか、民事・刑事の法的責任を課される場合もあります。
破産管財人の解任
破産法 第75条
- 第1項 破産管財人は、裁判所が監督する。
- 第2項 裁判所は、破産管財人が破産財団に属する財産の管理及び処分を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができる。この場合においては、その破産管財人を審尋しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人が法的義務に違反した場合、裁判所はまずその是正を求め、それでも是正がなされないとき、または、その法的義務違反が重大なときには、その破産管財人を解任できます(破産法75条2項前段)。
破産管財人の解任は、裁判所が自ら職権で行うほか、債権者など利害関係人からの申立てによって行われます。
裁判所が破産管財人を解任する場合には、破産管財人を審尋しなければなららないとされています(破産法75条2項後段)。
破産管財人が解任された場合、裁判所は新たな破産管財人を選任することになります。
民事責任
前記のとおり、破産管財人は、善管注意義務、公正中立義務、忠実義務、報告義務を負っています。これらの義務に違反した場合、破産管財人は民事責任を負います。
善管注意義務に違反した場合
破産法 第85条
- 第1項 破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
- 第2項 破産管財人が前項の注意を怠ったときは、その破産管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。
引用元:e-Gov法令検索
破産管財人は、破産債権者などのために、他人(破産者)の財産を管理し、換価処分する職務を行います。
そのため、破産管財人には、その職務執行において善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)を負うものとされています(破産法85条1項)。
破産管財人がこの善管注意義務に違反した場合、その破産管財人は、当該善管注意義務違反によって損害を与えた利害関係人に対して損害賠償責任を負います(破産法85条2項)。
破産管財人が複数人いる場合には、その複数人の破産管財人が損害賠償について連帯責任を負うことになります。
この損害賠償責任は、破産管財人個人が負うだけでなく、破産法148条1項4号の財団債権にもなります。この財団債権と破産管財人の個人責任とは不真正連帯債務になると解されています。
損害を被った利害関係人は、破産管財人個人に損害賠償を請求できるだけでなく、財団債権者として、破産財団に対してもその支払いを求めることができるのです。
この場合において、破産財団から利害関係人に対して損害賠償金を弁済したときは、破産財団は、損害賠償責任を負う破産管財人個人に対して求償することができます。
善管注意義務以外の法的義務に違反した場合
善管注意義務以外の法的義務に違反し、それによって利害関係人等に損害を与えた場合については、破産法に特別の規定はありません。したがって、民法の一般規程によって律されることになります。
具体的に言うと、民法の不法行為として損害賠償責任が発生することが想定されます。被害者は、破産管財人に対して、不法行為に基づいて損害賠償を請求することになります。
なお、この不法行為に基づく損害賠償請求権も破産法148条1項4号の財団債権となり、これと破産管財人個人の損害賠償責任とは不真正連帯債務となると解されています。
刑事責任
破産管財人が法的義務に違反した場合、前記の民事責任のほか、刑事責任を科されることもあり得ます。つまり、刑罰を科されるのです。
具体的に言うと、破産管財人が、自己または第三者の利益を図るため、あるいは債権者に損害を与える目的で任務違背行為をし、それによって、債権者に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはその両方を併科するとされています(破産管財人等の特別背任罪。破産法267条)。
また、破産管財人が、その職務に関して賄賂を収受・要求・約束したときは3年以下の懲役または300万円以下の罰金あるいはその両方の併科、不正の請託を受けたときは5年以下の懲役または500万円以下の罰金あるいはその両方の併科されます(破産管財人等の収賄罪。破産法273条1項、2項)。


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