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破産者はどのような制限を受けるのか?

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破産手続が開始されると、破産者では、財産の管理処分権を失います(破産法78条1項)。この財産管理処分権には事業継続することも含まれると解されています。したがって、破産手続開始後に事業を継続することも制限されることになります。

また、破産管財人への郵便物の転送(破産法81条1項、82条1項)により、通信の秘密も制限されます。

破産者には、重要財産開示義務(破産法41条)や、債権調査期日への出頭および意見陳述義務(破産法121条1項、3項、122条2項)、説明義務が課せられます(破産法40条)。

この説明義務の実効性確保のため、破産者には、居住制限も加えらえれます(破産法39条、37条1項)。

破産者が受ける制限

破産者とは、債務者であって、裁判所により破産手続開始の決定がされている者のことをいいます(破産法2条3項)。会社などの法人の破産であれば、当該法人・会社が破産者であるということになります。

破産手続の目的は、破産者の財産を換価処分して、各債権者に対し、公平に分配することにあります。

その目的を達するため、破産債権者は個別の権利行使を制限されます。財団債権者は、破産手続外で弁済を受けることができますが、権利行使について一定の制限は受けます。

もっとも、債権者の権利行使を制限しても、破産者が自分で自由に財産の処分等を行えるのでは、公平な分配は実現できません。

そのため、破産手続が開始されると、破産者に対してもさまざまな制限が加えられることになります。

具体的に言うと、破産者には、以下のような制限が課されます。

破産者に課される制限
  • 財産管理処分の制限(事業活動の停止も含む。)
  • 通信の秘密の制限(破産管財人への郵便物の転送)
  • 居住制限
  • 破産法における各種義務による制限
  • 資格制限(個人破産の場合)

財産の管理処分権の制限

破産法 第78条

  • 第1項 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。

破産手続が開始されると、破産財団に属する財産の管理処分権は、裁判所が選任した破産管財人に専属することになり、その反面、破産者は管理処分権を失うことになります(破産法78条1項)。

ただし、個人破産の場合、自由財産は含まれません。したがって、自由財産については、破産者に管理処分権が残ります。

他方、会社などの法人破産の場合、個人破産の場合と異なり、自由財産は認められません。法人・会社の有するすべての財産が破産財団に組み入れられることになります。

したがって、破産者である法人・会社は、すべての財産の管理処分権を失うことになります。

管理処分権を失うというのは、つまり、破産者である法人・会社は、自らの意思決定によって財産を処分することはできなくなるということです。

この財産管理処分権には、単に財産を換価できる権限だけではなく、法律行為か事実行為かを問わず、財産の存続・帰属・内容の変更を及ぼす一切の行為をする権限が含まれていると解されています。

事業・営業活動の制限

法人・会社が破産手続開始決定を受けると、その法人・会社は解散することになるのが通常です。

解散すると法人・会社の法人格は消滅するのが原則ですが、破産手続においては、その法人格は、清算の目的の範囲内で、破産手続が終了するまで存続するものとみなされます(破産法35条)。

ただし、破産者の財産管理処分権は認められなくなります。この管理処分権には、法人が事業を継続することも含まれると解されています。

したがって、法人・会社自体は消滅しないとしても、破産手続が開始されれば、破産者である法人・会社は、自分たちで意思決定をして事業を継続していくということはできなくなります。

もっとも、破産者自身で事業を継続をすることはできなくなりますが、破産管財人が、裁判所の許可を得て、事業を継続することは可能とされています(破産法36条)。

他方、個人破産の場合、個人事業(自営業)を継続することは、必ずしも禁止されていません。したがって、自由財産の範囲内で事業継続が可能であれば、事業を続けることはできます。

通信の秘密の制限

破産法 第81条

  • 第1項 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第3項に規定する信書便物(次条及び第118条第5項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。

破産法 第82条

  • 第1項 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
  • 第2項 破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った前項の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができる。

破産管財人による各種調査のため、裁判所は、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者宛ての郵便物や信書郵便を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができるとされています(破産法81条1項)。

つまり、裁判所は、破産者宛ての郵便物等を、破産管財人のもとに転送するようにできるということです。

破産管財人は、転送されてきた破産者宛ての郵便物等を開披して中身を確認することができます(破産法82条1項)。

条文では「嘱託することができる」とされていますが、実務では、ほとんど必ず郵便物の転送嘱託が行われると考えておいて間違いないでしょう(他方、信書郵便は転送されないのが通常です。)。

このように、破産者の通信の秘密は、郵便物等に限られますが、制限されることになります。

なお、法人破産において郵便物の転送がされるのは、あくまで破産者である法人宛ての郵便物だけです。代表者や役員個人に対する郵便物まで転送されるわけではありません。

居住制限

破産法 第37条

  • 第1項 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。

破産法 第39条

  • 前二条の規定は、破産者の法定代理人及び支配人並びに破産者の理事、取締役、執行役及びこれらに準ずる者について準用する。

破産手続においては、後述するとおり、個人破産者および法人破産における場合の法人役員等に対して説明義務が課せられます。

そこで、この説明義務の実効性を確保するため、個人破産者、法人破産の場合における破産法人の理事・取締役・執行役・これらに準ずる者は、裁判所の許可を得なければ、居住地を離れることができないものとされています(破産法37条1項、39条)。

ただし、日本国内で、しかも、裁判所などへの出頭が可能で、破産管財人との連絡も容易にとれる場所であれば、基本的に許可されると考えておいてよいでしょう。

破産者の義務による制限

法人・会社の破産手続においては、破産者である法人・会社に対し、重要財産開示義務(破産法41条)や、債権調査期日への出頭および意見陳述義務(破産法121条3項、5項、122条2項)などの法的義務が課せられます。

また、個人破産者および法人破産の場合における破産法人の理事や取締役等に対しては、破産に関する説明義務(破産法41条)が課せられます。

なお、重要財産開示義務や説明義務に違反した場合、その義務違反者には、破産犯罪として刑罰が科せられることがあります(破産法268条、269条等)。

したがって、破産者等には、これらの義務を履行しなければならないという制限も生じます。

資格制限

個人(自然人)の破産の場合には、前記までの制限のほか、破産者は、一定の資格の利用を制限されることもあります。この資格制限は、免責許可決定を受けるなど、復権するまで継続されます。

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