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運行供用者責任の要件とは?5つの条件をわかりやすく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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運行供用者責任の要件として、①運行供用者であること、②自動車の運行、③他人の生命・身体の侵害、④運行起因性、⑤運行供用者に免責事由がないことが必要です。

運行供用者責任とは

自動車損害賠償保障法 第3条

  • 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索

交通事故によって損害を被った被害者は、加害者などに対して、その損害を填補するために損害賠償を請求することができます。

この損害賠償請求の法的な根拠は、不法行為責任です。被害者は、この不法行為責任に基づいて加害者に対して損害賠償を請求できます。

もっとも、不法行為責任に基づく損害賠償請求の場合、相手方が原則として直接の加害者に限定され、その加害者の過失を被害者側で主張・立証しなければならないなど、被害者にとって難しい面が生じることもあります。

そこで、交通事故のうちでも損害が大きくなりがちな自動車による人身事故の場合には、被害者保護のために、自動車損害賠償保障法(自賠法)3条において、不法行為責任の特別類型である「運行供用者責任」という法的責任が設けられています。

この運行供用者責任は、一般不法行為の場合と比べて、損害賠償請求の相手方が拡張されており、しかも、被害者が過失の立証責任を負わないとされているなど、被害者にかなり有利な制度となっています。

したがって、自動車による人身事故の場合には、この運行供用者責任に基づく損害賠償請求が可能かどうかを第一に検討することになります。

運行供用者責任の要件

前記のとおり、運行供用者責任は被害者に有利な制度です。とは言え、被害者であれば無条件に責任追求できるわけではなく、以下の法的要件を満たしている必要があります。

運行供用者責任の成立要件
  • 相手方が自己のために自動車を運行の用に供する者であること(運行供用者)
  • 運行供用者または運転者が自動車を運行をしたこと(運行)
  • 他人の生命または身体を害したこと(結果)
  • 上記侵害が上記運行によるものであること(運行起因性)
  • 運行供用者および運転者が自動車の運行に関し注意を怠ったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、自動車に構造上の欠陥または機能の障害があったこと(免責事由がないこと)

以下、各要件を説明します。

要件1:運行供用者であること

運行供用者責任が成立するためには、相手方が「自己のために自動車を運行の用に供する者」でなければなりません(自動車損害賠償保障法3条)。

運行供用者責任に基づく損害賠償請求の相手方となる「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことを「運行供用者」といいます。

自動車の保有者は運行供用者に該当します(自動車損害賠償保障法2条3項)。例えば、加害自動車の所有者などです。

運行供用者に該当するのは、自動車の保有者だけではありません。

運行供用者とは「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者」であると解されています(最三小判昭和43年9月24日・集民92号369頁)。

この「自動車の使用についての支配権」のことを「運行支配」といい、「その使用により享受する利益」のことを「運行利益」といいます。

自動車の保有者でない者であっても、運行支配と運行利益がある場合には、運行供用者に該当します。

要件2:自動車を運行したこと

運行供用者責任が成立するためには「自動車の運行」によって他人の生命・身体を侵害したことが必要です。

まず、運行されるのが自動車でなければなりませんから、自動車ではない自転車事故などにおいては、運行供用者責任は成立しません

次に、「運行」とは「人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。」と定義されています(自動車損害賠償保障法2条2項)。

当該装置とは、エンジンだけでなく、ハンドル・ブレーキなど走行装置も含まれ、加えて、車両に固有の装置も含まれると解されています。

また、この当該装置の「用い方に従い用いること」とは、当該装置を操作・操縦することだけに限定されないと解されています。

被害者保護の観点から、単純に自動車を運転して走行させている場合に限られず、広く「運行」が認められているのです。

要件3:他人の生命・身体を侵害したこと

運行供用者責任が成立するためには、運行によって「他人の生命又は身体を害した」ことが必要となります。

他人の「生命又は身体」への侵害であるため、対象となるのは人身事故です。自動車事故であっても、物損事故の場合には運行供用者責任は成立しません。

また、「他人の」生命・身体の侵害でなければなりません。

ここで言う「他人」とは「運行供用者および運転者以外の者」です(最三小判昭和47年5月30日・民集26巻4号898頁)。

したがって、自動車の同乗者も「他人」に該当することがあります。また、運行供用者自身や運転者自身の自損事故については、運行供用者責任は成立しません。

要件4:運行と生命・身体の間に因果関係があること(運行起因性)

運行供用者責任が成立するためには、自動車の「運行によって」他人の生命・身体への侵害が生じたことが必要です。

つまり、自動車の運行と他人の生命・身体への侵害との間に因果関係があることが要件となるということです。このことを「運行起因性」といいます。

この運行起因性については、判例・通説は、相当因果関係説を採用しています。条件関係(事実的因果関係)があることを前提としつつも、当該加害行為があれば、一般的に当該損害が生ずるであろうといえる場合にのみ法的な因果関係を認める考え方です。

要件5:免責事由がないこと

運行供用者責任が成立するためには、以下の免責事由がないことが必要となります。

運行供用者の免責事由
  • 運行供用者および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
  • 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
  • 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

これらの免責要件があると、運行供用者責任は成立しません。

ただし、被害者の側で「免責事由がないこと」を主張・立証する必要はありません。運行供用者の側で「免責事由があること」を主張・立証しなければならないからです。立証責任が転換されているのです。

そのため、被害者は、不法行為に基づく損害賠償請求において最も厄介と言われる故意または過失の立証に相当する免責事由がないことの主張・立証をせずに済みます。

しかも、この免責事由があることの主張・立証はかなり難しいのが実際です。そのため、事実上、運行供用者は無過失責任(相対的無過失責任)であると言われています。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

弁護士に依頼するメリット

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参考書籍

本サイトでも交通事故損害賠償について解説していますが、より深く知りたい方のために、交通事故損害賠償の参考書籍を紹介します。

民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準
出版:日弁連交通事故相談センター東京支部
通称「赤い本」。交通事故損害賠償請求を扱う弁護士は、ほとんどが持っている必携書。東京地裁の実務を中心に、損害賠償額の算定基準(裁判基準)を解説しています。この本の基準が実務の基準と言ってよいほどに影響力があります。毎年改定されています。

交通事故損害額算定基準 -実務運用と解説-
出版:日弁連交通事故相談センター
通称「青本」。こちらは、赤い本と違って、東京地裁だけでなく、全国の裁判所における裁判例を紹介しています。2年に1回改訂されています。

民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)別冊判例タイムズ38号
編集:東京地裁民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
こちらも実務必携と言われる書籍。交通事故では過失相殺がよく問題となりますが、その過失相殺率の認定基準を解説する実務書です。東京地裁の裁判官が中心となって執筆されている本ですが、この本の認定基準が全国的な実務の基本的な認定基準となっています。

大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第4版)
編集:大阪民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
大阪地裁交通部(第15民事部)の裁判官による大阪地裁における交通事故損害賠償額算定基準を解説する実務書。大阪地裁で交通事故訴訟をする場合には必携です。(※なお、大阪弁護士会交通事故委員会による「交通事故損害賠償算定のしおり(通称、緑の本)」とは異なります。こちらは、裁判官執筆の本です。)

新版注解交通損害賠償算定基準
著者:高野真人ほか 出版:ぎょうせい
赤い本や青本の解説書。実務書の解説書という珍しい本ですが、赤い本や青本はどちらかと言うと資料集的な実務書であるため、詳細な理由付けなどが説明されていない部分もあります。本書は、そこを解説しています。赤い本や青本とセットで持っていると便利です。

交通事故損害賠償法(第3版)
編集:北河隆之 出版:弘文堂
交通事故損害賠償に関する法律の体系書。実務マニュアル的なものではなく、理論的な面の解説も体系的にまとめられており、交通事故損害賠償の基本書といった感じの本です。

逐条解説自動車損害賠償保障法(第3版)
著者:北河隆之ほか 出版:弘文堂
弁護士・裁判官など実務家による自動車損害賠償保障法の逐条解説書。1冊持っていると便利です。

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