
再生手続が開始されるためには、①再生手続開始原因があること,②再生手続開始申立棄却事由がないこと、③再生開始の申立てが適法であることが必要です。
民事再生共通の要件
民亊再生法 第33条
- 第1項 裁判所は、第21条に規定する要件を満たす再生手続開始の申立てがあったときは、第25条の規定によりこれを棄却する場合を除き、再生手続開始の決定をする。
- 第2項 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。
民事再生手続(再生手続)は、債務の減額などを定める再生計画を裁判所によって認可してもらうという倒産手続です。
この再生手続を開始してもらうためには、再生債務者が裁判所に再生手続開始の申立てをする必要があります。
この再生手続開始の申立てを受理した裁判所は、再生手続開始決定を発し、これによって再生手続が開始されます。
もっとも、再生手続開始の申立てをすれば必ず再生手続が開始されるわけではありません。一定の要件を満たしていなければ、再生手続開始決定はされません(民事再生法33条1項)。
再生手続開始の要件としては、以下のものがあります。
- 再生手続開始原因があること
- 再生手続開始申立棄却事由がないこと
- 再生手続開始の申立てが適法であること
再生手続開始原因があること
民事再生法 第21条
- 第1項 債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。
再生手続開始要件の1つは、再生手続開始原因があることです(民事再生法21条1項)。
再生手続開始原因には、以下のものがあります。
- 破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあること
- 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないこと
再生手続が開始されるためには、上記2つの開始原因のうちどちらか1つが認められなければなりません。
このうち、破産の原因たる事実の生ずるおそれとは、支払不能または債務超過となるおそれがあるということです。ただし、現実に支払不能または債務超過となっている場合も含むと解されています。
再生手続開始申立棄却事由がないこと
民事再生法 第25条
- 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
- 第1号 再生手続の費用の予納がないとき。
- 第2号 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
- 第3号 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
- 第4号 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
再生手続開始申立棄却事由がないことも、再生手続開始の要件として必要となります。
再生手続開始申立棄却事由は、以下のとおりです(民事再生法25条)。
以上の再生手続開始申立棄却事由は、1つでも該当するものあれば再生手続が開始されなくなってしまいます。
例えば、申立ての時点でそもそも収入・収益がないような場合、再生計画の認可の見込みがないことが明らかです。したがって、原則として、申立棄却事由に該当するということになるでしょう。
再生手続開始の申立てが適法であること
前記までの各要件は実質的な再生手続開始要件ですが、再生手続を開始してもらうためには、形式的な要件も満たしていなければなりません。
形式的な要件とは、すなわち、再生手続開始の申立てが民事再生法の規定に従った方式でなされていること、適法な申立てであることが必要となるということです。
再生手続開始の申立てが不適法である場合には、申立てが棄却されたり、申立書が却下されることがあります。