不当利得返還請求とは?

不当利得の画像

「不当利得」とは,法律上の原因なく他人の財産または労務によって受けた利益のことをいいます。

「不当利得返還請求」とは,不当利得のために損失を被った者(損失者)は,不当利得を受けた者(受益者)に対し,その不当利得の返還を請求することをいいます(民法703条)。不当利得返還請求できる実体法上の権利を「不当利得返還請求権」と呼んでいます。

不当利得返還請求権とは

民法 第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

民法703条は,「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と規定しています。

つまり,正当な理由もないのに,他人の損失と引き換えに利益を得た人は,その損失を受けた人に対して,受けた利益を返還しなければならないという規定です。

この正当な理由のない,条文上の言い方でで言えば「法律上の原因」がない利得のことを「不当利得」といいます。そして,この不当利得を返すよう請求できる権利のことを「不当利得返還請求権」といいます。

不当利得制度は,公平の理念から設けられた制度です。

公平の観点から,他人が損失を被ったことによって生じた利得を正当な理由なく受け取った人がいる場合に,公平の観点から,その利得を受け取った人から損失を受けた人に利益を還元させようという制度なのです。

不当利得の要件

前記民法703条のとおり,不当利得が成立するためには,以下の4つの要件を満たす必要があります。

  • 損失者に損失が生じたこと(損失)
  • 利得者が利益を得たこと(利得)
  • 利得と損失との間に因果関係があること(因果関係)
  • 利得に法律上の原因がないこと

「法律上の原因がない」とは,損失者から利得者への財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの公平の理念からみた実質的・相対的な理由がないことを意味すると解されています。

不当利得の効果

前記4要件を満たし不当利得が成立すると,その効果として,損失者は,利得者に対して,不当利得を返還するように請求する権利を取得することになります。これを「不当利得返還請求権」といいます。

ただし,前記民法703条にも規定されているように,不当利得返還を請求できるのは,「その利益の存する限度」に限定されるのが原則です。

簡単にいうと,利得をした受益者のもとに残っている利益だけを返還請求できるに過ぎないというわけです。

したがって,受益者のもとに残っていない利益については返還を請求できないということになります。この受益者の手元にも残っている利益のことを「現存利益」といいます。

ただし,受益者が,民法704条に定める「悪意の受益者」に当たる場合には別です。

受益者が悪意の場合には,現存利益のみならず,利得者が得た利益の全部の返還を請求でき,さらにその利益全部に利息を付けて返還するように請求することができます。

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