利率(りりつ)とは,利息の金額を算定するための元本に対する一定の割合のことをいいます。利率には,法律で定められる法定利率と当事者間の合意によって定められる約定利率とがあります。
利息の「利率(りりつ)」
債権が金銭債権であった場合、債権者は、債務者に対し、その元本(元金)のほかに利息も付して請求できることがあります。
利息とは,一般的には,元本(元金)債権の所得として,元本債権額とその存続期間に比例して発生する金銭のことをいいます。元本利用の対価といってもよいでしょう。
この利息は,通常,元本額に対する年○○パーセントの割合という形で,一定の割合的な金額として計算されて支払われることになります。
月単位で利率を計算する場合もあります。その場合には,月○○パーセントの割合という形になります。また,日掛けといって,1日単位で利率が定めれられるということもあります。
この利息の金額を算定するための元本に対する一定の割合のことを,「利率(りりつ)」といいます。「金利」というような言葉が使われる場合もあります。
法定利率と約定利率
この利率には,法定利率と約定利率とがあります。法定利率とは,法律によって利率が決められている場合のことをいい,約定利率とは,当事者間の合意によって利率を決める場合のことをいいます。
なお,利息には,法定利息と約定利息があります。法定利息とは,法律の定めによって当然に発生する利息のことをいい,約定利息とは,当事者間の合意によって発生する利息のことをいいます。
この法定利息と約定利息の問題は,あくまで利息の発生の問題です。利率を何パーセントにするかはまた別の話です。法定利息・約定利息の問題と,上記の法定利率・約定利率の問題は別次元の問題ということです。
そのため,約定利息だからといって当然に約定利率となるわけではありません。約定利息であったとしても,当事者間で約定利率を定めていなければ,法定利率によって利息の金額が計算されることになります。
法定利率
民法 第404条
第1項 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
第2項 法定利率は、年3パーセントとする。
第3項 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
第4項 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
第5項 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
前記のとおり、法定利率とは,法律によって定められる利率のことです。この法定利率は民法に定められています。
法定利息が付される場合,その利率は法定利率となります。また,約定利息であっても,約定利率を定めておかなかった場合には,法定利率が適用されることになります。
民法改正(令和2年4月1日施行)により,法定利率は年3パーセントの割合とされ(民法404条2項),3年に一度見直されることになりました(同条3項)。民法上の法定利率を「民事法定利率」と呼んでいます。
また,民法改正に伴い,商事債権の法定利率を年6パーセントとする商法514条の規定(商事法定利率)は削除され,商事債権についても,民法上の法定利率を法定利率とすることになりました。
ただし、後述のとおり、令和2年4月1日より前に発生していた利息については、改正前の利率(民事法定利率は年5パーセント、商事法定利率は年6パーセント)が適用されます(平成29年6月2日法律第44号民法附則15条1項)。
なお、「別段の意思表示」がある場合には,法定利率は適用されません(民法404条1項)。「別段の意思表示」とは、当事者間で約定利率を定めた場合のことです。
したがって,当事者間で後述の約定利率を定めていた場合には、法定利率は適用されず、約定利率が優先して適用されることになります。
参考:商事法定利率
前記のとおり,民法改正前は,商事債権については,民事法定利率よりも利率の大きい商事法定利率が適用されていました。具体的に言うと,商事法定利率の利率は,年6分(年6パーセント)とされていました。
商取引の場合には,非商取引よりも多くの利益を生み出す可能性があること等の理由から,民事法定利率よりも利率の大きい商事法定利率が適用されていたのです。
なお、この商事法定利率は民法改正に伴い削除されましたが、後述のとおり、令和2年4月1日より前に発生していた「商行為によって生じた債務」の利息については、年6パーセントの商事法定利率が適用されます。
約定利率
前記のとおり,約定利率とは,当事者間の合意によって定められる利率のことです。法定利率が定められている場合であっても,約定利率を定めた場合には,その約定利率が優先して適用されます(民法404条1項)。
約定利率をどの程度にするのかについては,基本的に当事者の自由です。したがって,当事者間で合意すれば,どのような利率にしてもよいのが原則となります。
もっとも,あまりに過大な利率とすると,当事者間の公平を害する場合があります。
特に,借金の場合には,貸主と借主には力の差があるため,すべて当事者の自由に委ねてしまうと,借主が暴利をむさぼられるという危険性があります。
そこで,借金の利息の利率については,利息制限法によって制限が設けられています。この利息制限法の制限利率を超える利率を定めたとしても,その制限超過部分は絶対的に無効となります。
令和2年4月1日より前に発生していた利息の利率
民法附則(平成29年6月2日法律第44号) 第15条
第1項 施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第404条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第2項 新法第404条第4項の規定により法定利率に初めて変動があるまでの各期における同項の規定の適用については、同項中「この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)」とあるのは「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)の施行後最初の期」と、「直近変動期における法定利率」とあるのは「年3パーセント」とする。
前記の法定利率年3パーセントという話は,改正民法施行後,つまり,令和2年4月1日以降に発生する利息についての話です。
令和2年4月1日より前に発生していた利息については,改正前の民法における法定利率が適用されます。具体的に言うと,法定利率は年5パーセントとして計算されます(平成29年6月2日法律第44号民法附則15条1項)。
また,令和2年4月1日より前に発生していた利息については,商事法定利率も適用されるので,貸主が会社・事業者であれば,法定利率は年6パーセントとなります。
なお,令和2年4月1日より前に発生していた利息についても,約定利率が定められていれば,約定利率が優先して適用されます。