社員たる地位・社員権は遺産分割の対象となるのか?

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会社の社員たる地位やそれに伴う社員権も,相続財産に含まれる場合には遺産分割をしなければならないことがあります。

社員たる地位・社員権の相続財産性

株式会社等の会社の社員は,その社員たる地位に基づいて,会社に対して各種請求をしたり,会社経営に関与することができる社員権を有しています。

この社員たる地位やそれに基づく社員権も,相続財産(遺産)に含まれる場合があります。その場合,その社員たる地位・社員権を遺産分割によって確定させる必要が生じることがあり得ます。

ただし,どのような会社の社員たる地位や社員権でも相続財産に含まれるというわけではなく,その会社の性質によって,相続財産に含まれるかどうか,相続財産に含まれるとしても遺産分割が必要となるのかどうかは異なってきます。

株式会社の社員たる地位(株式)・株主権

株式会社の社員とは「株主」のことです。この株主たる地位のことを「株式」といい,株式に基づく会社に対する権利のことを「株主権」といいます。

株式会社は,社員相互間の人的関係を重視しない物的会社であることから,株式に社員の個性は求められず,株式は相続財産に含まれると解されています。

また,株式は純然たる金銭債権ではないので,相続開始により当然に共同相続人に分割帰属するわけではなく,共同相続人の準共有となると解されています(最一小判昭和45年1月22日等)。

したがって,準共有状態を解消して権利の帰属を確定させるためには,遺産分割が必要となります。つまり,株式(及びそれに基づく株主権)は,遺産分割の対象となるということです。

有限会社の社員たる地位・社員権

有限会社(特例有限会社)も,株式会社と同様,物的会社であるため,その社員たる地位・社員権は相続財産に含まれ,共同相続人間での準共有となります。

したがって,権利の確定のためには,遺産分割が必要となります。つまり,有限会社の社員たる地位(及びそれに基づく社員権)は,遺産分割の対象となるということです。

合名・合資・合同会社の社員たる地位(持分)・社員権

合名会社・合資会社・合同会社の社員たる地位は「持分」と呼ばれています。そのため,合名・合資・合同会社をあわせて「持分会社」と呼ぶことがあります。

持分会社の場合には,株式会社と異なり,社員の個性が重視されます。そのため,死亡は退社事由とされています(会社法607条1項3号)。

したがって,持分会社の社員たる地位・社員権は相続財産には含まれません。そして,相続財産に含まれない以上,遺産分割の対象にもならないということになります。

持分払戻請求権

ただし,合名会社・合資会社・合同会社を死亡退社したことによって,持分払戻請求権が発生します。この持分払戻請求権は,相続財産に含まれることになります。

そして,この持分払戻請求権については,必ずしも金銭によって払い戻されるとは限らないことなどから,相続開始によって当然に共同相続人に各法定相続分に従って分配されるわけではなく,共同相続人間での共有になると解されています。

そのため,持分払戻請求権は,遺産分割の対象となります

民法上の組合員たる地位

民法上の組合は,会社ではありませんが,構成員の個性を重視する団体であるという点で,持分会社に類似した面があります。

民法上の組合においては,死亡は組合の脱退事由とされていますので(民法679条1号),組合員たる地位は相続財産に含まれず,したがって,遺産分割の対象にもなりません

ただし,死亡脱退によって出資金の払戻請求権が発生します(民法681条)。この出資金払戻請求権は相続財産に含まれます。

もっとも,この出資金払戻請求権は金銭債権である可分債権です。そのため,相続開始によって,各共同相続人にそれぞれの法定相続分に従って当然に帰属することになります。

したがって,出資金払戻請求権も,遺産分割の対象にはなりません。ただし,共同相続人の合意によって,遺産分割の対象とすることは可能でしょう。

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