社債は、相続開始によって各共同相続人に当然に分割相続されるものではなく、共同相続人全員の準共有となると解されています。そのため、遺産分割が必要です。
社債の相続財産性
社債とは,公衆に対する起債によって生じた株式会社に対する債権で,これについて有価証券(社債券)が発行されるもののことをいいます。
ここでいう債権とは,要するに貸付金です。したがって,社債を有していれば,債務者である株式会社から貸付金の返済及び利息の支払いを受けることができる権利を有することになります。
したがって,財産的価値があることはいうまでもありません。被相続人が社債権者であれば,その社債も相続財産に含まれます。
社債の遺産分割の要否
前記のとおり,社債は、株式会社に対する貸付金という金銭債権です。
この金銭債権をはじめとする可分債権は、遺産分割を経ずに,相続開始によって当然に,各共同相続人にその相続分に応じて承継されます(最一小判昭和29年4月8日,最三小判昭和30年5月31日,最三小判平成16年4月20日等)。
したがって,原則論からすれば,相続の開始によって当然に,各共同相続人に対してそれぞれの相続分に応じて分割され,遺産分割の対象とはならないはずです。
しかし,社債については,基本的には電子化されているとはいえ,有価証券たる社債券が発行される場合があり,社債券という物それ自体が相続の対象となるともいえるため,純然たる金銭債権とはいえない面があります。
また,社債については社債原簿に登録する必要があるところ,社債権者の請求による社債原簿の記載変更等請求は相続人らが共同してこれを行わなければならないとされています(会社法691条2項)。
そこで,社債は,各共同相続人に当然に分割相続されるものではなく,共同相続人全員の準共有になると解されています。
準共有になるということは,これを共同相続人間で分配するのであれば,遺産分割をしなければならないということになります。
つまり,社債も遺産分割の対象財産であるということです。
社債の遺産分割の方法
社債を遺産分割する方法に特段の決まりはありません。
もちろん準共有のままにするということあり得ますが,それでは権利行使のたびに共同相続人全員の同意が必要になるなど,不便なことが少なくありません。
そこで,それぞれの相続分又は話し合いの結果に基づいて,その各取分に応じた価額分の社債を,それぞれが単独で取得し,端数は金銭やその他の相続財産等で調整するという形をとることになるのが一般的であると思われます。